うちの母はヨーグルトが嫌い

「大容量のヨーグルトにクルミと蜂蜜をたっぷりかけて食べる。」

これが俺の最近の食べ方。


しかし、うちの母はヨーグルトが嫌いだ。

朝食どころか食卓にあがることすらなかった。

「お母さんはヨーグルトは絶対に食べへん。」と言っていた。


うちの母は菓子パンが好きだ。

昔は新商品が出るたびに買ってきてくれた。

「これおいしそうやろ。夕方におなか減ったら食べ。」とよく言っていた。


そんな母も来年で還暦を迎えるが、今もパートで1日中働いている。

俺と兄貴は結婚しており家も出ているので、そこまで働かんでも…とよく言っている。

「なんだかんだでお金がいるから働けるうちは頑張るねん。」

今でも菓子パンを買っているからかもしれない。


そんな母に、ふとナスが好きになったという話をした。

「あんたがナス食べるようになるなんてなぁ」

もう俺32やで。

母からすると子供はいつまでも子供らしい。

まあそれは分かるけど、もうそろそろ自分の人生を好きなように生きればいいのにと思った。


…でもふと気づいた。

何も変わってないのかも。

母は俺が小さいころからずっと同じ。

ヨーグルトは嫌い。

菓子パンは好き。

毎日働く。

ナスが嫌いな息子がいる。


母は何も変わってなかった。

変わったのは俺たちで、母は今でもあの日々の延長上にいるんやなあ、と。

そしてそれは多分、俺たちを育てると決めたその時からずっと。

大人になった今でもまだ続いている。


今では朝食にヨーグルトがあるのが普通になった。

なんなら常に冷蔵庫に入っている。

けどその光景は、母からすると少し寂しく感じるのかもしれない。

とか心の中で思いながら、今日もスーパーの菓子パンコーナーで足が止まるのだった。

おしまい。

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