日常のスキマバナー

物語には人を癒す力がある

朝ドラ「半分、青い」を毎朝見ています。

朝ドラ大好き人間なので、見られるときはいつも見ているのですが、
最近の「半分、青い」はなんだか身につまされる。特に昨日、今日はなかなかにすごい回が続きますね。

ネタバレになってしまいますが簡単に説明すると、

主人公すずめちゃん(永野芽郁)と、幼馴染である律くん(佐藤健)。
同じ誕生日に生まれ、以来ずーっとともに歩んできた二人で、地元岐阜から上京しても近所に暮らしてきた二人だったが、律くんにできた彼女がすずめちゃんとの関係に嫉妬し、彼女とすずめちゃんは大げんかに。
その結果、律くんはすずめちゃんと距離をおく決心をする。お互いにとって悲しい決断なのに、最後は明るく別れたいと、お互いに笑顔でさよならを言った二人。

漫画家を目指しているすずめちゃんは、その辛さと切なさを抱きながらアシスタントの仕事に取り組むが、律くんへの想いが、物語を生み出し始めていた。そこで師匠である秋風羽織先生(豊川悦司)が、「今すぐ描け。漫画にしろ」と強く促す。

今日の話の中で、秋風先生が「物語には人を癒す力がある」と言ったことがとても印象に残った。

これには私も思い当たる節がある。

何か辛い出来事にあった時というのは、本当に感受性が豊かだ。だからこそ些細な言動にも傷つくし、汚いものも綺麗なものも含めて、いろいろな言葉が生まれる。辛い出来事というものは、得てして幸せな出来事よりも衝撃が大きい。感情の揺さぶりが大きいから、言葉が豊かになるのだと思う。

言葉や感情が溢れるときに、「誰かにこれを聞いてもらいたい!」という形で処理する人もいれば、いっぱい泣く、遊ぶ、仕事に打ち込む、新しいことを始める人もいる。あるいは何かを書いたり、描いたり、歌ったり、踊ったり、作ったり、動いたり、それは様々な形で表されるのだろう。それはその人なりの物語の作り方であって、漫画家なら漫画をつくる。そういうことなのだろう。

何かの出来事に対する想いに完全に蓋をするのではなく、一度は開けて広げておく。それは私にとってはたとえば文章を書くこと。それを絵にしたり、はんこにしたり、時に歌を作って歌ったりもする。自分の物語を何かの形にする。そういう行為に、結局自分自身が癒されているのだと思う。

ただ、真っ最中のときに「描け」「作れ」と誰かに命令形で言われることは、振り返ってみればきっとありがたいこと。だけどかなり辛いこと。だからすずめちゃんは先生に、「鬼」といい、秋風先生は、「鬼上等」と返したのだ。

人の数だけ、生活があって、それぞれから生み出される物語がある。もちろん嬉しいことも悲しいことも、その物語は、とてもとても貴重で、宝物のようなものだと思うのだ。大事に鍵をかけてとっておく物語もあれば、とにかく放出してしまったほうがいい物語もある。きっと今のすずめちゃんは後者なのだろう。

みなさんは、つらいとき、感情が溢れるとき、どういう形で自分を癒していますか。方法論なんてあまりないでしょうけど、たとえ一見醜いと思えるようなものでも、自分の物語としてきちんと残しておく、最低限記録しておくということは、案外そのときの自分を救ったり、その後の自分を大いに励ますことがあるかもしれないな、と思います。と、自戒を込めて。

2016 あまのさくや 個展「生きている」より
(吉本ばなな 『キッチン』をイメージした版画)

『スキ』をしていただくとあなたにおすすめのチェコをランダムにお知らせします。 サポートいただいたお金は、チェコ共和国ではんこの旅をするための貯金にあてさせていただきます。