見出し画像

"選べるもの"ではなくて"欲しいもの"を

先日、用事がてらちょっと離れたところにあるお気に入りのカフェに行った時のこと。

私はこのカフェのチャイが大好きで、今のところ世界一美味しいと思ってる。
私の世界は地方の片田舎の中だけでほぼ完結しているので相当狭いけど、とにかく美味しいチャイが飲みたい!となったらここに来れば間違いない。
ポットになみなみ入っていてすごく満足できるし、かわいいボウルで飲めるのがうれしい。
一番うれしいのは、多分お砂糖が入っていないこと。
自分で甘さを調節できるのが本当にありがたい。
何も足さないままのほんのりとした甘みがとても好きだ。

この日はランチと一緒にランチドリンクでチャイを注文する心づもりだった。
確か少しだけプラス料金になるけど、ランチドリンクで注文できたはず。
テーブル席も空いていたけど、お店の中央の広々とした相席のテーブルについた。
狭いテーブルだと嫌だけど、自分のスペースが十分にゆったりと取れる大きなテーブルだと、私は個別のテーブルよりも相席のほうが好きなようだ。
誰かとスペースを共有している感じが好きなのかもしれない。

席についてランチメニューを眺めて、あれっと思う。
ランチドリンクの中にチャイが見当たらない。
前に来た時何度か頼んだはず、と思い返してみたら、このお店に来るときは決まっていつも土日祝日だった。
平日に来るの初めてだったかもしれない。
どちらかというとランチよりもチャイが目当てだったので途方に暮れる。
一応スタッフの方にランチドリンクでチャイは頼めないか確認してみると、注文するには単品でしなければならないとのこと。
ランチもドリンク込みの価格設定なので決して安くはない。
そして、単品のチャイも決して安くはない。
でも、払えない金額かと言われればそうではない。

諦めてランチドリンクの中から選ぶか。
せっかく目指してきたんだから単品でチャイを注文するか。
さぁ!!どうする私!!?

どちらにしようかすぐには決めきれず、先に食事だけ注文してドリンクはまた後でオーダーさせてもらうことに。
この選択をしようとして、自分の中ですごく何かに抵抗している感じがあったので、せっかくだから何にひっかかっているのかじっくり見てみることにする。
今私のしたいことは、間違いなく

”ランチドリンクを辞退してチャイを別途注文したい”

のほうだ。
でも、何かがすんなりそれを選ばせてくれない感じがする。
私はそれを選ぼうとする自分に対してどんな感想を持っているんだろう、と思ってみると

”選べるものを選ばずに、かけなくていいはずのお金をかけて自分の欲しいものを選ぶなんて贅沢だ。そんなことばかりしていたら罰が当たる。いつかお金で苦労してこんな贅沢をしていた自分を後悔するはずだ”

と、自分のしようとしていることを非難している感じがした。
自分を非難する自分の声を見つけて、だからすんなり選べないのね、と納得。
最近よくこの「選べるものから選ぶ」みたいなことをよく目の当たりにするような気がする。
ずっと自分が読書好きだと思っていたのに、実は読書が私にとって「ほんとはもっと別のことがしたかったけど、それができなかったから自分のできる範囲で一番良い感じだった時間を潰せるもの」という位置づけだったことがつい最近わかった。
自分のことすらこんなに誤解しているんだなと思った。
子どものころの私が読書よりもしたかったことって何だったんだろう。
それが何だったのかも思い出せないくらいに諦めて忘れ去られていくのってなんか切ない。

”この中から選んでね、と言われているのにその中にはほしいものがないから結構です、なんてわがままだ”
”贅沢な判断。お金の無駄遣いだ”
という自分を非難する声はなんとなく聞こえたままだけど、何が自分を後ろめたくさせているのかがわかってようやく腹が決まった。
どうせ選ぶならやっぱり一番欲しいものを選んでいきたいと思う。
「一番欲しいものは選べなくて、しょうがないから選べるものの中から一番好みに合うものを」という決め方は自分が何かを選ぶ時の癖になってしまう気がする。
自分が今までそういう基準でいろんなものを選び取ってきたということに全然気づいていなかった。
せっかく気づけたのだから、今からでも変えていきたい。
そうできない時もあるかもしれないけど、可能な限り、自分が一番欲しいものだけを選び取っていきたい。

だから、少し勇気が必要だったけど私はチャイを別途注文することに。
ほんの些細な選択だけど、私にとっては大きな進歩だ。
おいしいグラタンを食べた後に、満を持して登場したチャイをゆったりと時間をかけて楽しんだ。
やっぱり世界一美味しい。
今日は無理だと思っていたところに手を伸ばして自分で選び取ったものだから、なおさら。
こうやって私はどんどん幸せになっていく。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?