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声優・諏訪部順一さんの朗読×能楽のコラボ。宝生流企画公演レポート

9月28日に行われた、宝生流企画公演「夜能(やのう)夜語りの会」に行ってきました。なぜ、オタク女子マーケのカテゴリでレポートするのかといいますと、本公演は声優の諏訪部順一さんの朗読と夜能を組み合わせたプログラムだから!です。

場所は、水道橋駅近くにある宝生能楽堂
開演してすぐに、宝生流二十世宗家・宝生和英さんによる挨拶と、能を見るにあたっての簡単な説明がありました。宝生流とは、室町時代から続く能楽の名門であり、能の主役である「シテ方」5つの流派のうちのひとつです。

「はじめて能を見る方は?」という宝生さんの問いかけに、3分の1くらいの方が手を挙げました。私も、その中のひとりです。能は日本史で学んだきりで、正直なところ本公演のように何かきっかけがない限り見ることはなかったと思います。

プログラムは、朗読と鼎談。そして、能「生田敦盛」に仕舞という構成です。この「仕舞」とは、「おしまい」の語源となっているといわれ、公演のアンコールのような位置づけなのだそうです。

朗読+能の組み合わせは、鑑賞に深みをプラス

続いて、朗読の時間です。橋掛り(はしがかり)から長袴を着た諏訪部さんが登場し、少し客席の空気が動きました。しかし、ゆっくりと厳かに舞台の方へ歩いてくる諏訪部さんと能舞台というシチュエーション、ここにいる全員が初めての体験であるという緊張感が勝ります。

舞台へ立った諏訪部さんは、脇正面のほうを向いて朗読版「生田敦盛」を語り始めました。

この後、能で表現される古典の物語を、現代語版で聞かせてくれるという趣向です。つまり、初めての人は前もってストーリーを知った上で、そして知っている人も朗読を味わった上で、能を鑑賞できるという仕掛けなんですね。

さらに劇作家の長田育恵さんによる本公演のための朗読脚本は、謡曲「生田敦盛」のお話に、平家物語の一部を組み合わせたもの。「生田敦盛」とは、平清盛の甥である平敦盛とその幼い息子のお話です。朗読に、敦盛が敗れた一ノ谷の合戦のエピソードを含めることで、より物語を分かりやすく、深く入り込みやすくしているのでした。

私は何度か諏訪部さんが出演する朗読劇を聞きに行っていますが、劇なのでお芝居が中心です。今回のように朗読のみは初めてでしたので、すごく贅沢な時間を過ごしました。

メガネ型ウェアラブル端末で、デジタル×アナログを体験

朗読が終わったのち、宝生さんと諏訪部さん、そして長田さんによる鼎談があり、いよいよ能「生田敦盛」が始まります。ここから役に立ったのが、会場でレンタルしていた「ARグラス解説機」です。いわゆるメガネ型のウェアラブル端末で、公演中にかけると視界はそのままに能の解説やストーリーが映し出されます。

これがとても便利でした。ストーリーだけでなく「今、こういうシーンを表現しています」という解説が入るので、分かりやすいんです。将来的には自分に合った端末(たとえば、自分のメガネと何かを繋げれば見えるなど)になるのだろうと思うと、ワクワクしますね。そして、長刀を振り回す仕舞の熊坂が、かっこよかったです。

初心者向けに練られたプログラム

初めての能鑑賞、とても良い体験でした。能とは美術館の絵のようなもので、舞台と私という1対1の関係性で、想像しながら鑑賞する芸術なのだそうです。謡曲の味わい方などはまだまだ分からないことだらけですが、能の歴史や世界観、そして歌舞伎や狂言と何が違うのかなどの背景に興味が湧き、いろいろと調べては新しいことを知る幸せでいっぱいです。声優さんの朗読という鑑賞に繋がるきっかけの提供と、初心者に寄り添った構成からは、能を伝えたいという真摯で開かれた姿勢を感じました。

(参考:http://www.the-noh.com/jp/sekai/index.html

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