見出し画像

Web会議SaaS「Zoom」のマーケティング分析

こんにちは。金森です。

今回より、不定期で日本に進出する海外SaaS企業の分析をしていきたいと思います。

第一弾は、Web会議のSaaS「Zoom」を提供する「Zoom Video Communications」です。Forbesが主催する、「The Cloud 100」というクラウド業界の優良企業ランキングにて3位の座を獲得している注目の企業になります。

画像1

■ Zoom Video Communicationsの基本事項

・産業:Video communication
・創業年:2011年
・国:United States
・創業者/CEOEric Yuan
・従業員数:1,300
・本社:San Jose, California

一部では、IPOも噂されているようです。

Forbes2018 Cloud100にて3位に選出された「Zoom Video Communications」CEOのEric Yuan氏は下記のように語っています。

Eric Yuan is ready to predict the death of the conference call.
“I don’t think anywhere will have just an audio call in five years,” he says. As founder and CEO of Zoom Video Communications, a startup that offers video conferencing software and hardware tools to 40 of the 50 biggest businesses in the U.S., and 192 of its 200 top colleges, Yuan is doing his best to make that prediction true. In fall 2018, Zoom planned to debut its own hardware product that combines camera, microphone and software all into one, so businesses can get going without any help from IT. “We truly believe video is the new world,” says Yuan. “We think everything should be on video.”(出典:Forbes

ビデオ会議がさらに広がっていくだろうと予測したり、これまでの実績を述べたり、今後の計画について語ったりしています。

■ そもそも、Zoomってなに?

画像2

「そもそも、Zoomって何?」という方もいるかもしれません。

Zoomは主に、「企業向けのビデオ会議とウェブ会議サービス」を提供している企業です。

イメージで言えば、「Skype」が分かりやすい競合サービスです。

【余談】かつて酷いIT/WEB音痴だった僕は、何だかよく分からなくなってSkypeでWeb会議することを諦めた経験が何度かあります。シンプルに言えば、使いにくかった。

もちろん、ビデオ会議をするだけのツールではありません。ウェビナー(Web上でセミナーを行うこと)やハードウェアとの組み合わせもあります。

画像3

2018年には日本にも本格参入する予定。日本語バージョンのWebサイトもあるので、きっと既に参入済でしょう。

主な機能はこんな感じ。無料版でも普通に十分に使えます。ホストと呼ばれるWeb会議の主催者がURLを発行して、繋がりたい人に共有するだけで、すぐにWeb会議を実施することが可能です。

▼主な機能
・1対1の無制限通話
・グループミーティング通話(40分制限あり)
・通話回数無制限
・ビデオ会議機能
・Web会議機能
・グループコラボレーション機能
・セキュリティ機能(SSL,AES)
・オンラインサポート、

URLをクリックすれば、Web会議を実施することができるツールは他にもあります。たとえば、Googleの「Hangouts」や、Appear.inの
アピアイン」(あえてカタカナ表記)など。

表面的に見える機能面の違いではあまり差が無いように見えるかもしれません。ただ、通話の安定性などの差はもちろんあります。(実際、アピアインはよく通信が途絶える...。)

■ 競合製品との違い

この記事で、SkypeとZoomの違いについて分かりやすくまとめられています。過去の記事なので、具体的な数字は現在とは異なる場合もございます。

画像4

出典:Zoom Academy Japan

■ Zoomはどのくらい成長しているのか?実績は?

画像5

出典:Drift

・顧客(2017年時点)

(1)700,000の企業

(2)6,900の教育機関(アメリカの大学トップ200のうち90%が顧客)

・ユニコーン企業創業者のEric Yuan氏は"unicorn"という呼び方を嫌がっているらしい。

・総調達額:$145.5million(約160億円)

画像6

シンプルにすごい...。めちゃくちゃ伸びていますね。では、その急成長の裏には何があるのでしょう。

■ Zoomの急成長の裏には何がある?

画像7

①組織文化にあり?:米オンライン求人大手のGlassdoorが選ぶ、TOP CEOs 2018にて、1位に選出される(米国企業)

99%の従業員支持率を誇るそう。経営者が従業員に強く支持されていると言うのは、きっと強い組織体なんだろうなぁと。

画像8

比較しやすいように、他のCEOとその企業の順位も併せて紹介しておきます。

・ Marc Benioff(Salesforce):10位(97%)
・Mark Zuckerberg(Facebook):16位(96%)

企業にとって、組織文化って具体的にどんなメリットがあるのだろうと思っていたところ...。ベイジの扮谷さんのツイートを読んで納得しました。なるほど!!!

もっと、調べてみると、Zoom急成長に関する良記事が出てきました。

--------------

②Zoomの急成長を解き明かす3つのポイント

【ポイント1】圧倒的な顧客志向

・顧客を最重要視したビデオ会議サービスを作るべく創業された。
元々、Eric氏はビデオ会議サービスを提供する企業(WebEx)でVP of Engineeringだった。
・顧客からのフィードバックをZoomを用いて収集(ドックフィーディング
・NPS(Net Promoter Score)を定期的にモニタリング
・新規顧客獲得に躍起になるのではなく、既存顧客を幸せにすることを重要視

【ポイント2】フリーミアムモデルでブランド接点を最大化

・40分間は無料で使用可能→口コミと結びつき、顧客獲得に繋がる
フリーミアムモデルで顧客にZoomを試してもらう
→この市場には競合がたくさんいるので、まずは実際にZoomを無料で体験してもらう。
→無料ユーザーが増加(多くのユーザーがZoomブランドと触れる)
→製品を気に入ってくれた方がサブスクリプション契約してくれる

【ポイント3】大胆で秀逸なマーケティング投資(アーリーアダプターを狙う!)

画像9

・屋外広告の看板を設置:カンファレンスの際に出すブースなどにかけるコストは抑え、その代わりに、人の目につくシリコンバレーの中心部に屋外広告の看板を設置。がっつり投資する($50,000/月)。
・バスケットボールチームと3年間の契約:Zoomのサービスを実際にチームが使用。さらに、バスケットコートにあるスコアボード、デジタルサインなどを通してZoomブランドが人の目に入る。

画像10

Zoomが行った、この大胆なマーケティング投資は、MAベンダーのMarketo(マルケト)が日本法人を設立した際に実施したマーケティング施策とどこか似ていると感じました。

【大手ベンダーと"同等の存在と思われる"ため、マーケティング予算の大半をイベントのスポンサーとして使用

詳しくはこちらの「B2B SaaSの新・経営論」というnoteをご覧ください。

■ 日本の市場で競合になりえそうなところ

・株式会社ブイキューブ(東証1部)

Web会議、Webセミナー、テレビ会議、ビジネスチャットなどのソリューションを提供。ベルフェイスや、Synamonが提供するサービスと比べて、Zoomと一番近い立ち位置。

・ベルフェイス株式会社

BtoBの営業に特化したオンライン提案システム。

・株式会社Synamon

 VR空間上でコミュニケーションが可能。

あくまで、競合になりえそうなところを例として挙げてみました。

【ポイント2】で挙げた、「フリーミアムモデルでブランド接点を最大化」させる施策は、米国本国だけに問わず、日本でも展開できる施策だと思います。実際、僕の周りの方も他のWeb会議ツールより、Zoomを使用されている印象もあります。それは兎も角、Zoomが日本市場で頭角を現す可能性は十分にあるでしょう。

==========

ということで初回は、Zoom Video Communicationsについてリサーチしてみました。海外SaaS企業ですが、日本のSaaS企業がマーケティングをする際にも参考になりそうなものがありますね。

今後も、日本におけるZoomの展開を引き続き注目してみようと思います。

それでは、最後までお読みいただきまして誠にありがとうございました!

「この企業のリサーチを読みたい」などご要望ございましたら、Twitterにまでご連絡いただければ!(もしくは、この記事をシェアすると同時にコメントをしてくれれば...👼)

参考文献

①ZoomがForbes 2018 Cloud 100にて3位に選出された報道 

②Zoomが3位にランクイン!

③TechCrunch Japanの報道

④ユーザーカンファレンス「Zoomtopia」

MAベンダーの「HubSpotが実施しているカンファレンス、「INBOUND」に似ています。SalesforceもDreamforceというカンファレンスを大規模に開催していますし、カンファレンスはやっぱり効果ありそうですね。ちなみに、黒澤さんが「HubSpot」のマーケティング分析をした記事はかなりオススメです。

⑤Zoom-Lab | Web会議ソフトZoomの研究所


この記事が参加している募集

熟成下書き

最後までお読み頂きまして誠にありがとうございます。 TwitterなどSNSでシェアをして頂けるのが最も嬉しいです!