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「味噌汁は美味い」について

味噌汁は美味い。そうはっきりと評価するような代物ではない食べ物の中で、不動の第3位ではあるけど美味いものは仕方がない。鍋に入れた水を火にかけ、味噌と出汁と具材をブッ込めばとりあえず完成するこの料理を考えた人にはノーベル平和賞を捧げよう。
シンプルであるが故、その時味わった味噌汁が正解なのかどうかと毎度自問自答し、日々改善を繰り返し、人類はその叡智によって進化をしてきたのだ。知らんけどさ。

新潟県に『旬魚酒菜 五郎』という居酒屋がある。新潟市中央区古町通にあるビルの奥まったちょっと分かりにくい場所にあるこじんまりとしたお店だ。
古町というのはかつて新潟県内一の繁華街で、戦前には花街で栄えた港町でもあり今でも料亭や置屋が居を構えており、人通りは減ったとはいえ個性豊かな飲食店が軒を連ねている。

僕がいい歳になってから『味噌汁が美味い!』と本気で感じたのはこの店で飲んだ味噌汁がきっかけだ。新潟には何度も訪れているが、その度に良さげな飯屋を探して新潟の美味い米と魚と酒で酔っ払うのが夜の恒例である。
後から調べてみて、ここは結構評判の良い店だと知ったので僕の嗅覚もあながち間違っていないのだと思った。とにかく頼むもの全てにハズレがない。日本海の魚料理は美味いし栃尾の油揚げも最高だ。調子に乗ってえらい高い日本酒も店員さんに勧められるがままに頼む。

中でもおすすめは、ご飯に納豆、明太子、鮭、筋子、塩辛などをのせた名物メニュー『五郎めし』だ。こいつを上品とは言えないが箸で遠慮なくかき混ぜて頬張るのだ。新潟に来てよかったと思う瞬間が反芻される度に続く  、そこから同時に頼んであった味噌汁を一口啜る。「あれ、これ美味い。。」僕はその感覚に疑いを抱き再び味噌汁を啜る。あぁこれは新しい夜明けだ。この感情はその場にいる誰にも悟られてははいけないと思った。もしそこで「これ美味いよ!」と声高に宣言したところで、それをなにかと否定されるのが人間の恐ろしさだ。舌の上を華麗に流れるこの正義を誰にも邪魔させない。五郎めしもノドグロも2割1分の大吟醸も過去の味にしてしまう味噌スープ。
(何を言っているんだ)

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たぶんその時すでに酔っ払っていたので味覚に信用はならない。でも後日初めて家で味噌汁を鰹出汁からとって作ってみた。白みそしか信用してはならぬと誰かが言っていたな。
結論は料理下手な僕が作っても「味噌汁は美味い」

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色々試した結果、味噌はタニタ食堂の減塩味噌が一番好みです。

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