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理想の住まいを叶える建築家コラム

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建築家が提案する新築、リフォームのポイント、現代の家族にふさわしい住まいづくり、間取りの知恵のを連載いたします。
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2019年9月の記事一覧

高齢者の暮らしの中心は住まい

2世帯住宅について02 高齢者は身体的な機能が低下すると、部屋に引きこもりがちになってしまう傾向があり、配慮が欠かせません。 子どもには日当たりの良い部屋を与える一方、高齢者の部屋となると、静かで落ち着ける環境を優先し、家の中心から遠ざけてしまう傾向にあります。 リビングにあまり来られない位置の部屋を与え、間接的な老人虐待とも言えるケースも見られます。 自分が家族から遠ざけられている、または、受け入れられていないと感じたお年寄りは、積極的に家族の団らんには加わらなくなる

親世代と子世帯の理想的な同居

2世帯住宅について01 一つ屋根の下で暮らすという二世帯住宅は、より自立した家族同士でなければ難しく、その意味で二世帯住宅の選択は、言い換えれば「個の自立」をどう考えるかを考えることでもあるのです。 設計に入る前にじっくり検討することが必要だと思います。この十分なシミュレーションがなされず、未消化のまま設計が行われた場合、次のような「三つの失敗」を招くことになります。 三つの失敗 一つめとして、二世帯住宅の同居のかたちは「完全分離型」「部分共用型」「完全同居型」に分けられ

二人だけで過ごす老後が長い

夫婦と住まい04 少子化で子どもが一人か二人という家庭が圧倒的に多いいま、40代後半には子どもが独立し、夫婦二人という場合も多く、おそらく夫55歳、妻50歳頃には、夫婦二人きりになってしまう例が多いのではないでしょうか。 人生90年時代に近づきつつある中で、平均で20年、場合によっては30年以上、夫婦が顔を突き合わせて生きることになるわけです。 家事や子育て、そして地域の付き合いなどを放棄して、企業に身を捧げ、企業の倫理とコミュニティしか知らない夫。妻はどんどん自己実現に

夫婦の個室について

夫婦と住まい03 住まいを設計する時、家族に書き込んでもらう住宅調書では、主婦が住まいの中で一番興味を持っている場所は、まずリビングルームとダイニングルーム、そしてキッチンです。最下位近くにかろうじて、「自分の部屋」が挙げられていますが、東京ガス都市生活研究所の調査によると、八割以上の主婦が、自分専用の部屋を持ちたいと望んでいます。 この数字を併せて分析してみますと、美しいキッチンや家事室の充実といった家事労働の場も重要だけれど、自己実現のための発進基地となる自分の部屋にも

夫婦のための間取りプラン

夫婦と住まい02 前回も夫婦と住まいについても述べてきましたが、住まいづくりでは、いま本当に考えなくてはならないのは、さまざまな問題を抱えた夫婦の寝室ではないだろうか。 近年の女性の社会進出を考えてみても、女性も、男性が書斎を持ちたがるように、知的生産性を高める「自分だけの場所」を求めることは理解できます。 また、精神医学界の研究では、同じ人と長時間顔を突き合わせていると、それだけでストレス度は高くなると言われています。 したがって、「一人になれる時間」「自分だけの場所

夫婦の部屋

夫婦と住まい01 住まいの設計をご夫婦と打ち合わせをしていると、夫と妻の世界が大きくかけ離れていることを感じます。かつてのような共通の目的もなく、求めるライフスタイルが異なる夫婦も増えていますからなおさらです。 夫も妻も、お互いの生活の様子が見えなくなってしまっているということかもしれません。 夫がストレスを抱えて家に帰って、テレビを見てくつろいでいても、妻の目には、ただテレビを見て笑い転げているつまらない夫のように映ります。 また同時に、妻が、家事や慣れない子育てや夫

高層階での子育て

子供と住まい05 友だちができない、協調性がない、すぐキレて感情的になるといったことが、子どもの世界に蔓延していますが、これは子どもに十分な社会性やコミュニケーション能力が育っていないことの現れでもあります。 保育園や幼稚園の先生は、一戸建て住宅や低層階の子どもより、高層階で暮らしている子どもの方にそうした傾向が強いと指摘しています。イギリスでは、四階以上での子育ての禁止を条例化しているほど、子どもの育つ環境には敏感になっています。 その原因として考えられているのは、親の

住まいは夫婦のもの

子供と住まい04子供を中心にした住まいづくりの前に  ー子供の「子の自立」を考えるー 子供を中心にした住まいづくりの前に、次のことを考えたことがあるでしょうか。 一つめは、子ども部屋に、ベッド、机、本棚、クローゼットを置くスペース以上の広さが必要かどうか。 二つめは、親の寝室より環境が良く、広い部屋を与えることが、子どもの精神にどう影響を与えるか。 三つめは、「子どものため」という愛情や期待を優先し、夫婦はこうありたいという意識や感情を抑えて、粗末にしていないか。

家族とともに成長していく家

子供と住まい03  ー小さなリフォームでも家は変わるー 住まいを考えるとき、私たちは「家は家族とともに成長していく」というごく当たり前のことを、忘れているような気がします。 しかし今の時代は、家に対する考え方がずいぶん変わってきており、大切に使うというよりは、手入れが少なく便利で快適であればよいという、いわば消耗品的な思考が強いようです。 手のかからない材料、一度使ったら維持管理不要な材料といったら、新建材以外には殆どありません。 もともと、日本の住まいは、木、土、紙

問題を生んだ「子ども部屋」に共通しているもの

子供と住まい02 少年犯罪が増える理由 ー壊れた子どもを作る部屋ー 私たちの生活は、日常の何気ない仕種さえ、無意識のうちに住まいの構造によって習慣化されていることが案外多いものです。幼児期から思春期へと成長していく子どもにとって、住まいは人間形成の場そのもの。その住まいを子どもの躾や人間形成の場として強く意識している親は、極めて少ないのではないでしょうか。 親は、子ども自身の希望、受験勉強のための個室、という大義名分によって、快適すぎる子ども部屋を安易に与えてしまいがちで

子供のための子供部屋

子供と住まい01 家は何のために作るのか」という質問に、「子どものため」と答える人が多いなか、実際、社宅や賃貸住宅に住んでいる家族が、新しい家を持つ大きな動機の一つに、子ども部屋を与えるため、というケースが目立ちます。 住まいの部屋割りは、お年寄り、親、そして子どもと序列が明確でしたが、子ども優先社会になってこの構図は逆転し、住まいの中で最もよい場所に子ども部屋を作り、できるかぎり広さと快適さを求め、それが子どもへの愛情のバロメーターのような風潮さえ生まれました。 子ども

家族の団欒とリビングルーム

家族の生活スタイルの変化に対応できる家03 リビングルームは、家族が集まってくつろぐ場所であり、団らんを楽しむスペースですから、家族構成の違いはもちろんのこと、夫婦の趣味が最も反映されるべき空間のはずです。私の事務所では、建主に「住宅調書」への記入をお願いしているのですが、リビングに関する質問事項にだけはなぜか家族の個性が反映されないという傾向にあります。 例えば、「どんなリビングがいいですか?」という抽象的な質問では、幅のある自由な回答を求めているにもかかわらず、ほぼ10

リビングは、理想ではなく暮らしの延長で考える

家族の生活スタイルの変化に対応できる家03 家族が家族として、気持ちよく過ごすための家づくりを行うのなら、これまでのような使われないリビングをつくるのではなく、みんなが集まるように、リビングの形を決めることが第一歩だといえるでしょう。 リビングの形を考え直すことは、家族とのつながりをもう一度見つめ直すことにもなります。華やかさとスケールの大きさに惑わされることなく、家族がそこで何をするのか、そのためには、どんな部屋であればよいのかということを暮らしの延長から考えてみるといい

五つのポイントを考慮して家族に最適な家を実現する

家族の生活スタイルの変化に対応できる家02 リビング、キッチン、ダイニング、子供部屋と、それぞれについて 「これからどのように暮らしていきたいのか」ということを中心に考え、以下の五つのポイントに注意して、建築家とともに家づくりを考えていけば、 家族の触れ合いの場のある家、自分たちの家族に最適な家を実現することができるでしょう。 ①家づくりにおいて大切なのは、それぞれの部屋が分断されるような間取りを避けること。 ②必要のないリビングをつくらず、生活スタイルに合った空間をつく