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理想の住まいを叶える建築家コラム

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建築家が提案する新築、リフォームのポイント、現代の家族にふさわしい住まいづくり、間取りの知恵のを連載いたします。
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#毎日更新

高齢者の暮らしの中心は住まい

2世帯住宅について02 高齢者は身体的な機能が低下すると、部屋に引きこもりがちになってしまう傾向があり、配慮が欠かせません。 子どもには日当たりの良い部屋を与える一方、高齢者の部屋となると、静かで落ち着ける環境を優先し、家の中心から遠ざけてしまう傾向にあります。 リビングにあまり来られない位置の部屋を与え、間接的な老人虐待とも言えるケースも見られます。 自分が家族から遠ざけられている、または、受け入れられていないと感じたお年寄りは、積極的に家族の団らんには加わらなくなる

親世代と子世帯の理想的な同居

2世帯住宅について01 一つ屋根の下で暮らすという二世帯住宅は、より自立した家族同士でなければ難しく、その意味で二世帯住宅の選択は、言い換えれば「個の自立」をどう考えるかを考えることでもあるのです。 設計に入る前にじっくり検討することが必要だと思います。この十分なシミュレーションがなされず、未消化のまま設計が行われた場合、次のような「三つの失敗」を招くことになります。 三つの失敗 一つめとして、二世帯住宅の同居のかたちは「完全分離型」「部分共用型」「完全同居型」に分けられ

二人だけで過ごす老後が長い

夫婦と住まい04 少子化で子どもが一人か二人という家庭が圧倒的に多いいま、40代後半には子どもが独立し、夫婦二人という場合も多く、おそらく夫55歳、妻50歳頃には、夫婦二人きりになってしまう例が多いのではないでしょうか。 人生90年時代に近づきつつある中で、平均で20年、場合によっては30年以上、夫婦が顔を突き合わせて生きることになるわけです。 家事や子育て、そして地域の付き合いなどを放棄して、企業に身を捧げ、企業の倫理とコミュニティしか知らない夫。妻はどんどん自己実現に

夫婦の個室について

夫婦と住まい03 住まいを設計する時、家族に書き込んでもらう住宅調書では、主婦が住まいの中で一番興味を持っている場所は、まずリビングルームとダイニングルーム、そしてキッチンです。最下位近くにかろうじて、「自分の部屋」が挙げられていますが、東京ガス都市生活研究所の調査によると、八割以上の主婦が、自分専用の部屋を持ちたいと望んでいます。 この数字を併せて分析してみますと、美しいキッチンや家事室の充実といった家事労働の場も重要だけれど、自己実現のための発進基地となる自分の部屋にも

夫婦のための間取りプラン

夫婦と住まい02 前回も夫婦と住まいについても述べてきましたが、住まいづくりでは、いま本当に考えなくてはならないのは、さまざまな問題を抱えた夫婦の寝室ではないだろうか。 近年の女性の社会進出を考えてみても、女性も、男性が書斎を持ちたがるように、知的生産性を高める「自分だけの場所」を求めることは理解できます。 また、精神医学界の研究では、同じ人と長時間顔を突き合わせていると、それだけでストレス度は高くなると言われています。 したがって、「一人になれる時間」「自分だけの場所

夫婦の部屋

夫婦と住まい01 住まいの設計をご夫婦と打ち合わせをしていると、夫と妻の世界が大きくかけ離れていることを感じます。かつてのような共通の目的もなく、求めるライフスタイルが異なる夫婦も増えていますからなおさらです。 夫も妻も、お互いの生活の様子が見えなくなってしまっているということかもしれません。 夫がストレスを抱えて家に帰って、テレビを見てくつろいでいても、妻の目には、ただテレビを見て笑い転げているつまらない夫のように映ります。 また同時に、妻が、家事や慣れない子育てや夫

家族の団欒とリビングルーム

家族の生活スタイルの変化に対応できる家03 リビングルームは、家族が集まってくつろぐ場所であり、団らんを楽しむスペースですから、家族構成の違いはもちろんのこと、夫婦の趣味が最も反映されるべき空間のはずです。私の事務所では、建主に「住宅調書」への記入をお願いしているのですが、リビングに関する質問事項にだけはなぜか家族の個性が反映されないという傾向にあります。 例えば、「どんなリビングがいいですか?」という抽象的な質問では、幅のある自由な回答を求めているにもかかわらず、ほぼ10

リビングは、理想ではなく暮らしの延長で考える

家族の生活スタイルの変化に対応できる家03 家族が家族として、気持ちよく過ごすための家づくりを行うのなら、これまでのような使われないリビングをつくるのではなく、みんなが集まるように、リビングの形を決めることが第一歩だといえるでしょう。 リビングの形を考え直すことは、家族とのつながりをもう一度見つめ直すことにもなります。華やかさとスケールの大きさに惑わされることなく、家族がそこで何をするのか、そのためには、どんな部屋であればよいのかということを暮らしの延長から考えてみるといい

五つのポイントを考慮して家族に最適な家を実現する

家族の生活スタイルの変化に対応できる家02 リビング、キッチン、ダイニング、子供部屋と、それぞれについて 「これからどのように暮らしていきたいのか」ということを中心に考え、以下の五つのポイントに注意して、建築家とともに家づくりを考えていけば、 家族の触れ合いの場のある家、自分たちの家族に最適な家を実現することができるでしょう。 ①家づくりにおいて大切なのは、それぞれの部屋が分断されるような間取りを避けること。 ②必要のないリビングをつくらず、生活スタイルに合った空間をつく

住まいが家族をつくる

家族の生活スタイルの変化に対応できる家01 家族のコミュニケーション不足には、さまざまな要因が考えられますが、その要因の一つとして、「家の構造」、つまり家族同士の接点(コミュニケーション)を家の構造が阻害していることがあるならば、建築家や住宅供給業者は、その責任の重さを痛感しなければならないはずです。 現代は、両親は仕事、子供は学業や習い事というように、家族の誰しもが忙しく、ただでさえ円滑なコミュニケーションを維持するのは難しくなっています。それに加えて、住居の構造が、家族

「理想の住まいを叶える建築家コラム」連載のお知らせ

建築家 横山彰人 30年間取り組んできたのは「家族の絆が強くなる家」の家づくりでした。 住宅の設計は、楽しい仕事だと思っております。今から15年前に、ある住宅の上棟式に、建主と幼稚園に通う娘さんが出席していました。それから15年経った今年、お父さんから娘さんが大学の建築科に入ったという知らせがあったのです。お父さんが、「どうして建築科へ行きたかったのか」と理由を尋ねたところ、「横山さんの設計した家がとても好きで楽しかったから、自分も建築家になりたかった」と答えてくれたそうで

ハウスメーカーと建築家の違い

私の事務所に設計依頼の相談に見える方々はもちろんのこと、講演などに呼ばれた時にもよく耳にするのが、「建築家に頼んだ場合とハウスメーカーが提供する家を買う場合とではどう違うのか」という質問です。この質問に対する答えを単純化すれば、「フルオーダーで家を建てるか、既製品を購入するかの違い」 という回答になりそうですが、実はそれほど簡単な話ではありません。 「自由設計」というキャッチフレーズの落とし穴最近はパンフレットに、「自由設計」をキャッチフレーズに掲げているハウスメーカーもあ

建築家と家を建てよう!

建築家というと、費用が高くなってしまうとか、デザインを重視した奇抜な家を建ててしまうといったイメージがあるようです。そのようなイメージは、芸術性を求める一部の建築家の作品を見たことによって植えつけられたものだと思われます。 たしかに、建築家のなかでも、どの建築家に頼むかによって費用も異なり、できあがる家のタイプもさまざまですから、その選択は、自分自身で情報を集め、行わなくてはなりません。それでも、納得する家を手に入れるためには、建築家に頼むのがいちばん現実的で、確実な方法と

理想の間取り

家族の理想の住まいと間取り03講演に行くと、「理想の間取りとは、どういう間取りですか?」とよく質問されます。 しかし残念ながら、どんな家族にもあてはまる理想のモデルなど、あるはずもありません。 本来、家族構成に始まって、夫婦それぞれがどんな環境で育ったか、どんな家族観や価値観を持っているのか、そして求めている暮らしのイメージによって、生活の仕方は変わります。従って、同じ家族構成であっても、ある家族にとっては理想の間取りが、別の家族にとってはそうでないケースも当然出てきます。