スナフキンの悪夢の歌

2019年版ムーミンアニメ、ムーミン谷のなかまたちの第2話のスナフキンの悪夢で流れた曲がだいぶ奇妙な歌なので、和訳と考察を。

You've got your suckers like an octopus
お前はタコみたいに吸盤があるな
And they can't see behind the camouflage
カモフラージュすれば奴らには見えない。
Should I compare you to an octopus?
お前をタコに例えようか?
Just stacks of handouts to the entourage
取り巻きに与えるものでいっぱいだ

We're moving forward slowly
俺たちはゆっくり前に進むけど、
But falling backwards faster
だけどあっという間に後ろへ落ちる
So watch us spiral as we tumble from grace
俺たちが光栄*からグルグル転がり落ちるのを見てるのか
We're running out of punchlines
決め手となる言葉が出てこない
A d-d-d-disaster
さ、さ、さ、さ、災難だ
So watch us crawl
俺たちが這いずりまわるのを見ているのか
We're crawling back to the cave
俺たちははいずりながら洞窟へ戻っていく

(繰り返し)
We're moving forward slowly
But falling backwards faster
So watch us spiral as we tumble from grace
We're running out of punchlines
A d-d-d-disaster
So watch us crawl
We're crawling back to the cave

There's a fire, there's a fire, it's coming
炎が、炎が、炎が迫ってくる
And it's pushing past the women and children
女たちや子供たちを押しのけながら
Such a thrum, such a thrum, a fire's humming
まるで鳴るように、まるで鳴るように、炎は歌っている。
On the beach by a sea of sevens
7つの海につながる浜辺の上で

There's a storm, there's a storm, it's rising
嵐が、嵐が、起きている
There's no time, there's no place for idles
グズグスするな、逃げ場がなくなるぞ

Such a mess, such a mess, that's throbbing
グチャグチャだ、めちゃくちゃだ、そいつは鼓動している。
All that's born is a meaningless spiral
生みだされるのは全部、何の意味もないスパイラルだ。

You've got your tentacles all over the place
そこら中お前の触手だらけだ
It's just a bad dream, since we weren't awake
これはただの悪夢だ、ずっと目が覚めていないだけだ
Counting up you'll leave just to scratch your face
顔に残った感触を拭いながら悪夢をかぞえつづける。 

Time to run, time to make an escape
走れ、逃げる時間だ

We're moving forward slowly
俺たちはゆっくり前に進むけど、
But falling backwards faster
だけどあっという間に後ろへ落ちる
So watch us spiral as we tumble from grace
俺たちが輝きからグルグル転がり落ちるのを見てるのか
We're running out of punchlines
パンチラインが底をついてしまう
A d-d-d-disaster
さ、さ、さ、さ、災難
So watch us crawl
俺たちが這いずりまわるのを見ているのか
We're crawling back to the cave
俺たちははいずりながら洞窟へ戻っていく

(以降繰り返し)
We're moving forward slowly
But falling backwards faster
So watch us spiral as we tumble from grace
We're running out of punchlines
A d-d-d-disaster
So watch us crawl
We're crawling back to the cave

We're moving forward slowly
But falling backwards faster
So watch us spiral as we tumble from grace
We're running out of punchlines
A d-d-d-disaster
So watch us crawl
We're crawling back to the cave

We're moving forward slowly
But falling backwards faster
So watch us spiral as we tumble from grace
We're running out of punchlines
A d-d-d-disaster
So watch us crawl
We're crawling back to the cave

いささかよくわからないところも多いけど、なぜかタコの歌。揶揄だとは思うけど、後半とか火災に嵐にとかなり恐ろしい状況になってる。

以下、よくわからないところとか考察とか

Just stacks of handouts to the entourage
取り巻きに与えるものでいっぱいだ
(この取り巻きと言うのはもしかしたら自分の触手に例えられているのかもしれない。タコの触手と言うのは、それぞれ独立した意思を持っているという都市伝説があるし。
ただ、そのまま取り巻きが多すぎる状況だと考えていいと思う。)

So watch us spiral as we tumble from grace
俺たちが光栄からグルグル転がり落ちるのを見てるのか
(「spiral」タコなので、グルグル渦巻きながら転がり落ちている状態だと思うのだが、アニメ本編ではスナフキンが渦の中に落ちている)
(「grace」本人の優れた素質、または目上からの好意、親切的なもの、または神の恵み。逆にfall from graceで堕落したり、嫌われたり見放されたりするという意味になる。アニメ本編ではスナフキンが友人に見放されてしまう悪夢を見る。ただ、一旦アニメからは切り離して、自分の素質でも他人からの承りもの全般にも使えそうな「光栄」としておいた。)

We're running out of punchlines
パンチラインが底をついてしまう
(「punchlines」ここで言うpunchlinesの意味がよくわからない。ジョークのオチ、物語のキモ、またはチラシ的な意味らしいけど・・・。ネタが底ついたってこと?)

*聞いたところ、このような答えが返ってきました
>『We’re running out Punchlinesは「決め手となるような言葉がない」というような意味で、”punchline “自体の意味は「オチ」とか「決め言葉」「適切な表現」』

…、つまりどう言うことだってばよ!

Counting up you'll leave just to scratch your face
数を数えろ 残したら顔をひっかかれるぞ
(そこら中にある自分の触手の数を数えているってこと?うっかりすると無意識に自分で自分の顔をひっかいてしまうってこと?)

*誤訳でした。知り合いに聞くと、
『(悪夢にさいなまれて)感触を顔から拭おうとしながら次から次へと続く悪夢を数えあげる。』
だそうです。

…つまりどう言うことだってばよ!

 英語圏の知り合いに聞いて分かったことは、さらに訳がわからなくなってしまったと言うことでした。知り合いによると、「この曲 何が何だかわからない! 感覚的に訴えるもんであって、論理に訴えるものではない。あまり深く考える物ではないし、英語という外国語で理解しようとするとこんがらかるよね。」とのことです。
とは言えやはり考察はしたいもの…。

 内容と作中のシチュエーションを考えると、身軽で自由を体現したようなみんなのあこがれのスナフキンも、実はしがらみが多くなっていて四転八倒している状態ってことかなぁ。

 アニメ本編の流れから、スナフキンにとってのgraceであるムーミンから見放されてしまうという恐怖を表しているのだろうと思う。
 実際にスナフキンはムーミンから見放されてしまい、ムーミンを目の前に背後の渦(spiral)へ落ちてしまうという悪夢を見ていた。その辺は完全に歌の描写と同じ状態。

 さらに考察を進めると、好き勝手に動く触手は自分の意志ではどうしようもないこと。でもそれを必死に理性で抑えようとしている。
 みんなから理知的で彼に任せれば全てうまくいくと思われているスナフキン。孤高なスナフキンに憧れるものたちは多い。でも実は自分ではどうにもできないことだらけで、そしてそれを目の当たりにすると戸惑う描写が、原作後半や2019年版のアニメに特に多い。(コミック版も完璧人間からは遠いけど、あれはあれでなんかちょっとベクトルが違うというか、ネタキャラの枠だと思ってる)。またスナフキンはできるだけものを増やさず、執着しないようにしている。実際本人もそう言ってテントなどを捨てている。ところがそう言うスナフキンも、実は帽子やハーモニカなど、執着するものにはとことん執着心が強い描写がある。
 特に2019年版のアニメでのスナフキンは思春期の少年という感じが強くて、けっこう熱しやすい性格。孤独が好きだけど見捨てられるのが怖い、そんな矛盾を抱えた男。それを友人の前ではかなり抑えようとしている印象が強い。ちなみにそれがシーズン3ではムーミンの前で決壊するので吹き替えーー!!

 あと、後半の災害描写はムーミン谷の彗星を連想する。どうしようもなく巨大な天災に、なす術もなく逃げ惑ういきものたちの姿が、必死に逃げ惑うタコの姿と重なる。
 特に作中でのカタストロフィのイメージが強いのは海のシーン。
 火災は起きなかったものの、それ以上に気温が上がり海が干上がるという悲惨な状況になってしまい、流石のスナフキンも絶望してしまっていた。
 また、一行はムーミン谷に着く直前に嵐に遭遇している。
 また洞窟はムーミンたちの避難場所にもなっている。一刻一刻を争う状況で、ムーミンとスニフが洞窟へ急ぐシーンは、歌詞のThere's no time, there's no place for idlesや、Time to run, time to make an escapeからも連想したりもした。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?