自分で選んだ卒業

マガジンはとりあえずバラで買うよりお得な内容にはしてると思うのですが。うまいこと漫画家になるまでの自分なりの要素をピックアップできればと思います。

仕事が忙しかったというのも本当なんですけど、こっから先の話というのはともすればただの愚痴とか悪口になってしまいそうで、しかも会社の内部の話だしどこまで書いていいのかというのもありまして、でももう20年前だし時効だとは思うんですが、ネタとしてはかなりヤバイことをやってたのも知ってるしね…それが自分の自伝部分とは関係ないので割愛します。

あくまで僕のあいまいな記憶と視点のフィクションとしてお読みください。

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会社で同期のプログラマーと作ったテストプレイのプレゼンが通り、新チームはいざプロジェクトへ、という体制になった。僕はメインのデザイナーの下でアシスタント的な役割という名のなんでも屋として、メインのメカやキャラ以外の世界観や背景となるイメージボードの作成に回った。チームのデザイナーにはプロのアニメーター出身の背景担当や3Dモデル作成の担当がいて、僕は同期のプログラマーにデータを渡す上でその隙間を埋めつつ完成形までの試行錯誤を担当する、ようなイメージだった。イメージだけは。

最初はプロデューサーやシナリオ担当のイメージが未完成なため、メインデザイナーさんに勧められた世界観の近い本やアニメ、画集などを見てスケッチしたりしていた。そのままパクリにならないように、例えば宇宙船などもベースをスケッチした上で次は魚や海生生物、全然違う写真集を見てそれをメカ風に描いたり。宇宙での生活風景でも逆に現代の団地の風景に一箇所非現実な部分を加えたり、極端にSFではなく人間が生活するバックボーンの部分をイメージした絵を描いたりしていた。

逆に言えば、それしかすることがなかった。シナリオがないのだ。舞台となるイメージも宇宙という漠然としたもので、どういう文明でどういう背景があるのか、どういう話なのか全然分からない。

毎週ミーティングがあったが、進捗状況を確認しようにも最初のリーダーがまだ前回から何もできてません、しか言わないのにそれ以下の会議も仕事も進むはずがなかった。何もすることがないのでプレゼンの時のように同期と仮のせめて設定を作ってそれにあったものを作ろうとどうにかモチベーションを保とうとしたら、リーダーから「それはお前の仕事じゃない、勝手なことをするな」と怒られた。何も決まってないのに何も決めてはいけない。何も作れない。チームのモチベーションは目に見えて下がっていった。

毎日が苦痛だったので気分を変えて髪を金色にした。眉毛まで色を落とした。朝のエレベーターで一緒になった別の会社の外人にナイスヘアと言われ、会社では今度ドイツ人の社員が来るという話が合ってそれかと思ったと言われた。いや、俺です。

あまりにもやることがないので定時に帰ったらミーティングでシナリオ担当にチームの意識が低いのは定時に帰るような人がいるからだと嫌味を言われた。会社に長くいても仕事してないよりましだろと怒鳴り気味に反論したときの僕はまだ入社半年程度だった。

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