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「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー2:リミックス」について書きたい

ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー2:リミックスを見てきました。

面白かった。いやあ、いい映画だった。なんというか映画にもいろいろあって、例えば全く頭に残らないけどとにかく上映中楽しかったものもいい映画だし、見る前と見た後で違った世界を見せてくれるような映画もいい映画だし。

この映画はとにかく人間賛歌というか、娯楽の中にも心をちゃんと描いて、安売りでない感動、かといって高尚さも求めてない、たぶん賞とか取らないけどちゃんと観客のために、作り手も出演者もみんな一緒に楽しもう、そういう気持ちが伝わってくる映画だった。それは見ている我々も、そしてこの世界を取りまとめたジェームズ・ガン監督も含めた「完璧じゃない我々」全員に向けて。その姿がこの銀河のはみ出し者達の姿に込められていた。

銀河というスケールの大きい物語と多くの登場人物をそれぞれ小さな「家族」という単位に分けて書き込んでいくことで、ものすごく観客に近い物語に変えていくというのも、言うのは簡単ですが複数の物語を絡み合わせるとても技術の高い作業だったと思います。

作り手としてとても勉強になる部分も多かったのでここで書き記しながらまとめたい、そして反芻したい、そういう気分です。ここから先はネタバレになりますので見た人だけ。一言だけ言うと、

「最高の映像体験はCGでもIMAXでもない」

ことを教えてくれた映画でした。

以下ネタバレあり








見た人は全員、この映画の主役はピーター・クイルでもガーディアンズの面々でもなくヨンドゥだと答えるはず、満場一致で。

そこで思い出して欲しいんですが、あのヨンドゥの最後のシーン、めっちゃ短くなかったですか?爆発した星、飛び出た二人、必死に叫ぶピーター、そして眼の光をなくしていくヨンドゥ。劇場で測ったわけではないのであれですが、1分ちょっとくらいだったんじゃないかというくらいだったと思うんです。

これがよくある邦画だったらスローモーションになったり感動の音楽が流れ、最後の言葉を必死に伝えたりうるうると目を見て間を取ったりしてたと思うんです。はいここ泣くとこですよー、と。そんなのいらない。音楽も声も聞こえない。なぜなら宇宙だから。そこは作中の時間通り、ピーターのえっ?あっ!おい!という事態の把握と同じスピードで進んでいきました。いちいち過去に浸ったりする余裕などなく、すでに決まりきった結末へ向かっていきます。

でも観客には分かったはず、見えたはずです。泣けと言われなくても。

それはあらかじめ観客の脳内で見えるはずの映像がすでに予測変換されてたから、だと思います。

そう、予測変換。一度打ち出した文章は二度目から自動的に出てきます。

最高の映像体験はCGでもIMAXでもなく、観客の脳内にある。

だからこそ我々は小説や動いてない漫画の絵でも動きを見ることができる。

この映画はそれまでのシーンで次にすぐその予測変換された映像が出てくるように、あらかじめ一度観客に打ち込ませてたのです。CGはそのための材料だったのです。

まず簡単なところから宇宙に出た人間がどうなるか、これはヨンドゥを裏切らなかった部下たちの姿ですでに丁寧に打ち込まれています。だからヨンドゥが宇宙に生身で出た瞬間にもう変換されます。リアルタイムでヨンドゥが凍っていく映像はもうダメ押し、二度目の映像だから短くても効果が強いのです。

もっと言えばロケットは宇宙服を一つしか渡さなかった時点でもう気づいてた、「死ぬ仲間は一人で充分だ」と言った彼はその時点ですでに予測変換できてたのです。その一人は仲間と認めたヨンドゥだった。

ロケットがヨンドゥを認めたのは一緒に捕まったとき、というのは普通に分かると思います。特にロケットは唯一のベビーグルートの理解者であり、そのベビーグルートに接するときのヨンドゥもロケットの信頼の一要因だったと思うのですが、このときヨンドゥは何度も失敗するベビーグルートに対しても決して感情的にならず、繰り返し言葉で問いかけて次のトライへ送り出します。

これ、子育てだよね。

この予測変換で、ヨンドゥが幼いピーターをどうやって育ててきたか、父親の姿が観客の脳内に予測変換できる、だからあそこで無駄な回想がいらないわけです。狭いところに盗みにはいるとき怒鳴ってやらせたか?違う、ああやって丁寧に説明して送り出した、そんな姿が見えてくるわけです。実際にロケットが狭いところにベビーグルートに行かせるシーンでは、あれほどグルートに愛情を持ってるロケットですらイライラして感情的になって説明します。これもヨンドゥのときの対比として二度目の予測変換になってると思います。

そしてヨンドゥの火葬の際にそろうスタローンたち、これも物語の最初でばっちり刷り込まれて、なおかついい具合に奥の方に入れ込んであるものを出してくるあたり、にくい。完璧にコントロールしてるわけです。画面上の映像ではなく、観客の脳内に先に出てくる予測変換映像を。

あとはもう長々と説明しなくてもいいかな。スッキリした。序盤特に説明のないまま登場人物が多く出てきますが、それも会話の上で関係性が想像できる範囲内ですし、前作で忘れてたキャラも物語の進行に合わせてだんだん思い出せる程度の情報量はありました。強いて言えばこれはしょうがないことですが、80年代くらいを生きた世代でなければ深いところまで刺さらないネタが多いので分からない人はくやしいところかもと思います。ただ音楽もそうですが当時を知らなくともいいものは今聞いてもいいので、むしろ新しい体験としての楽しみ方もあるのではと思います。

そんなわけでまたコミックもの?ヒーローものでしょ?という人にも是非見てほしい、というかネタバレだから見た人だけか、おもしろかったよね!

スタッフロールで踊ってるヨンドゥがまた。ハッセルホフネタしつこい!泣いて出るつもりが笑って涙も乾いてから劇場が明るくなるとこもにくい!

最高だよ、ジェームズ・ガン!






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