【小説】~来世 2話

 


 足元に丸まった布団を見る。昨日は少し肌寒かったので、掛け布団をしっかりかぶって寝たつもりだったが途中で暑くなったんだろうか。それとも実は僕って寝相が悪かったのかな。などと自分の無意識の行動の理由を想像しながらもう一度布団をかぶりなおす。もう少しは寝ていていいはずだ。そのためにいつも少し早めにアラームをかけている。

 今日は体育があるじゃないか。あんなこと何のためにするんだ、ボールが遠くまで飛ばせたからって実生活になんの意味があるんだ。だいたい実生活でものを投げる場面なんてそうそうないし、どちらかといえば怒られることのはずなのになんで練習するんだ、と今日のスケジュールを思い返して不満点を挙げているうちに眠ってしまっていた。

 結局アラームが鳴る前に目が覚めてしまい、アラームを切って体を起こす。嫌なことがあるとわかっていてそれに挑むことがどれだけ心理的に苦痛かみんなわかっているんだろうか。今日は登校するだけでほめてほしいぐらいだ。

 ベットから降りると布団の中よりひんやりとした空気が足元にまとわりついた。スリッパをはくほどでもないが朝一はやはり少しだけ冷える。先週から一人暮らしを始めたところなので部屋の中はきれいだった。きれいといえば聞こえはいいが正しくはものがそろっていないために汚くなりようがないだけだった。制服などの必要最低限の衣服と、ベット、あとは電子レンジがあればどうにかなるだろうと思ってそれだけはそろえて越してきたが、ほかはまだない。そろそろ洗濯機と冷蔵庫が欲しい。

 洗面所で顏を洗い口をすすいで戻ってくる。朝からたくさん食べるほうじゃないので、昨日買ってきた水を一口飲んでから朝ごはん用に買った鮭おにぎりをほおばった。結局朝からご飯を食べておいた方が腹持ちがいいので昼休みまで体力が持つ。本当はここに味噌汁がついていればベストだが今はそれほど余裕がない。もう少しこの生活に慣れたら、朝から味噌汁を飲みたい。

 おにぎりを食べきってゴミ箱にゴミを捨てた後、制服に着替えた。まだ真新しい制服は着られている感じがして少し恥ずかしい。今は少しだけ大きい制服が卒業するまでにはピッタリになるか、なんなら小さくなりますようにと思いながら軽く髪型を整える。

 人より歩くのが遅いので、まだ時間に余裕があったが家を出た。焦らずにゆっくり家を出るほうが、精神的にもいいからだ。朝からハラハラするのはよくない。疲れる。だんだんと家から学校までの道を覚えてきたので、休みの日にでも近道がないか探しがてら散歩に出ようか。学校まで徒歩圏内の家が見つかってよかった。

 クラスメイトの顏はなんとなく覚えてきたが名前は全然入ってこない。何なら担任の名前もまだ怪しい。昔っから人の名前を覚えるのが苦手だ。だからあの曲がり角から出てきてこちらに向かって手をぶんぶん降っているやつも、クラスメイトだとはわかっているが、名前が思い出せなかった。


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