実況パワフル私立恵比寿中学(私立恵比寿中学8thアルバム「indigo hour」を聴いて)

※内容は実況でもパワプロでもないです

先行で配信されたリード3部作その1「BLUE DIZZINESS」から完全に賛否両論の中、とうとう発売された、私立恵比寿中学8thALBUM「indigo hour」ですが、アニメタイアップの「トーキョーズ・ウェイ!」、リード3部作その2「CRYSTAL DROP」(SPEEDみたいな曲こと)、そして真のリード曲「TWINKLE WINK」と発表されて、途中年始の大学芸会で低学年メン、高学年メンのユニット曲「STAY POP」「Hello another world」、そして既発曲の「Summer glitter」と「kyo-do?」と発売まで全10曲中8曲が何らかの形で出てしまっていたですし、その他ラジオでの音源公開などもありましたので、ほぼほぼ新曲なしのアルバムっていう事態に。
とはいえ、ラジオを追っていなかったので「Knock You Out!」と「DRAMA QUEEN」は辛うじてCDで初めて聴きました。折角アルバム買ったら新曲もっと聴きたいですけどね。

CDに関しては昼間に到着していたものの夜にしか聴けなかったのですが、アルバムを通して聴くと思いの外スルっと聴けてしまって、聴く前に思っていたような違和感を感じることもなかったような気がします。ただこのスルっと感はアルバムとしての聴き心地の問題とほとんど知ってる曲だったっていうところもあるかと思います。ただ未聴だった1曲目の「Knock You Out!」がバキバキのラップで自己紹介だったので、面白いなと思いながらも、驚きがありました。そしてもうひとつの「DRAMA QUEEN」はオートチューン曲だったのでこっちも「バキバキじゃないの……」となりました。
エビ中のアルバムとしての精神的な距離はだいぶ遠く感じていましたが、曲が良いなという第一印象でした。全然聴けるなという感覚と日本語があまり耳に残らない歌詞の透過率が高すぎるという感じ。

1枚のアルバムとしてとても良くできているというか、コンパクトでとても聴きやすい。ある意味制球の良いピッチャーのボールを受けているような感覚で、やっぱりこれまでのエビ中のアルバムという感じではないなというところ。

例えるなら、メジャー初期のシンメトリー期(1st「中人」、2nd「金八」、3rd「穴空」)はタイトルこそ綺麗にまとまっているものの、内容は完全に荒れ球、球数も多く(インタールードも含めて曲数が多かったし、曲調もバラエティに富んでいた)制球は効いていないものの豪速球もエグい変化球もある、粗削りが魅力の新人ピッチャーという感じ。
4th「エビクラシー」で本格派エースの風格が出てきて、スピードとキレでねじ伏せるパワーピッチャーになったかと思えば、5th「MUSiC」、6th「playlist」期は円熟味を増した不動のエースとして完全無欠の勝率を叩き出し、名実ともに主戦のピッチャーになった。
新しい球種や新しいトレーニング方法でフレッシュに再生された、7th「私立恵比寿中学」を経て、さてどういう味わいが出てくるのかと思ったら、ある意味フレッシュ、ある意味円熟、ポスティングでメジャーに移籍して新しいボール、新しいマウンドで再生された、新人ピッチャーになったかのようなアルバムという感じの8th「indigo hour」でした。

ある意味、これまでの本格派路線から勝利の方程式に配置換えされて、完璧な制球でフォアボールは出さず、ムーブするボールでゴロを打たせたり、ストンと落として空振りさせたりと自由自在な投球をされて、これまで見てきたのとは全く違うという戸惑いの中にいるような感覚です。

おじさんなので100%野球に例えてしまったのでこれは良くないなと思いましたが、結構的を得ているのではないかという気がします。感じているのはこういうこと、伝わるかどうかは別の話ですが。

これまでとスタイルがかなり変わったことで今後の組み立てに不安が残るなと思っているので、今度の春ツアーの演出は誰になるんですかね。ただ「BLUE DIZZINESS」にしても「トーキョーズ・ウェイ!」にしてもライブで見ると悪くないというか、ライブ映えする印象なので早く全曲をライブで見たいですね。

また野球の話になりますが、ピッチャーだったら過去に使っていた球種を絞っていったりして、勝てるまとまりが出るみたいなものがあるかと思うんですが、エビ中はこれまでの大暴投もある剛速球や、キャッチャーのミットを弾くような変化球を組み立てから完全に外すことは難しいと思いますし、それが求められているとも思えませんので、ここからの春ツアーが本当のお手並み拝見という気がしています。音源はあくまで音源、MVはあくまでMVですので、ライブでどうなるか、ライブがどうなるかが個人的には一番重要かもしれないですね。

「indigo hour」発売に向けてのインタビューや記事をいくつか読みましたが、実際アルバムと照らし合わせて感じたことは、全力エンターティンメントを良しとして育ってきたのはメンバーだけじゃないんだよな、と思うとまあハレーションを起こすのは仕方ないことだなと思います。しかし、ここまでハンドルを切ったなら、初週の2位(オリコン調べ)を超えて行くとか何週も連続でランクインとかしてくれないと困ります。初週の売上に曲は関係ないんだから。(2週目もランキングに入っていたのでちょっと安心しました)

そして、もしかしたら今のエビ中は「エビ中がやるべきだからやる(akaエビ中らしさ)」ではなく、「エビ中にしかできないからやる」にシフトしてるのかなと思いました。ここまで散々野球例えを交えてきましたが、まさかですがピッチャーとしての変化ではなく、二刀流的な打者転向を目指しているくらいの変化なのかもしれません。

個人的な今回のアルバムに向かう姿勢としては「CRYSTAL DROP」と「トーキョーズ・ウェイ!」の感じで腹括ったところがあるので、結果アルバム「indigo hour」を聴いて思ったのは「なるほどですね」っていう感じでした。「BLUE DIZZINESS」が出てきた時はどう振るのか分からなかったので。そして、改めて良いアルバムだなと感じつつも、これってエビ中のアルバムなのよね?と思い返すところもあり、ちょっと複雑、いい意味で複雑な気持ちに。

これまでのエビ中の歩みは、朧気に見えていた目的地に想定以上の爆速でたどり着いてみたり、目的地を通り過ぎて次の町まで行ってみたりすることで驚かされてきた((あくまでも目的地が見えていたり、想像できる範囲内での驚きだった))けど、今回は地図にない場所が目的地だったから、「ここどこ?何?泊まり?着替え持ってきてないよ?」みたいになっています。「着替えがないなら、現地で買いなよ!」みたいなバキバキ感を感じました。

曲はまあこういうこともあるじゃん?という感じ(だいぶ偏りはあるかと思いますが)ですが、これまでならこう来たらコメディが乗ってくるところなんですが、今回はノーコメディなので面食らったってところはあるかもしれないです。あとはカッコよさが新しすぎて20年まともに音楽を聴いてないからついて行けてないなと思いました。もっとコメディがあっても良かったかなと思います、コメディは逃げだと思ってないから。
作品に含まれるノスタルジーが90年代後半から2000年代くらいに絞られている感じがするなと思ったから、やっぱりちょっとついていけないみたいなところはあるのかもしれないです。そういう意味では幅が狭まったから残念な感じはあります。これまでは70年代までがっさり含めてやってた気がしますので。

リード3部作では「TWINKLE WINK」が一番良かったというか、好みかもしれないなと思いました。去年から今年にかけての楽曲ではののかちゃんが歌唱的にワリを食っているなという感じがしていたんですが、この曲のののかちゃんはとても良い。そして意外だなと思ったんですが、1曲目の「Knock You Out!」でもののかちゃんがとても良いなと思いました。

過去の色(と言っても、直近ではなく何年か前)を強く感じたいなら「Hello another world」でしょうか、MUSiC/playlistと地続きな感じで懐かしみがあった。一度リセットがかかった世界からまた違う世界に連れていってくれるのでしょう。ちなみに大学芸会で「STAY POP」を聴いた時は、あの頃「ミライボウル」を聴いたときとほぼ同じ反応をしていたので、人間はそうそう成長しないと思いました。私は「ミライボウル」好きです。

それとこれとは別の話ですが、今回の限定版B付属のEP「EVERYTHING POINT ”Perfect ebism”」に収録されていた、低学年メンバーの武者修行フリーライブ大阪の「ジャンプ」で感じる拙さも、2023年春のエビ中だから表現できたものだと思いました。ただ2024年現在のエビ中ではもうあの拙さは出ないであろうことが少し残念です。成長早すぎるよ……。

そんな感じです。

元はてな(こちらのnoteははてなの記事を元に作成されています)


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