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「歯周病治療の正解と最適解」脱マニュアル主義 #12

歯科医療現場に限らず、現代社会には様々な
ガイドラインやマニュアルというものが有る。
そして、これに則って行動することが求められている。

そして、ガイドラインやマニュアルに記されていることが正解
と考えられているようだ。
 
歯科の世界も御多分に洩れずガイドラインに沿って臨床を行う
ことが正解であり常識とされている。

そもそも常識ってやつは、単なる多数意見のことだ。
みんなが考えている、みんなが言っている、やっているというだけ。
科学的データの裏付けなど関係無い。


・歯科臨床における正解とは

これは、一般社会の正解とは少々意味合いが違うようだ。
歯医者村における正解というのは
治療行為が
○Xガイドラインとか
△⬜︎マニュアル
という歯医者村のローカルルールに則っているという事を意味する。
たとえ、その治療行為が傷害行為になっていても、
歯を失う結果になってもだ。

試験問題の正しい答えと言い換えても良い。
エビデンスという都合の良い言葉でガードされた、
未熟な科学の実態でもある。

ガイドラインというのは、
決められた事を決められた順序、
ルールに則って実行するためのロードマップだ。
この通りに治療すれば、
「適正な医療費配分」の中で
概ね上手く行くであろう・・・という事。

常識や正解というのは、歯医者村ローカルルールにおける中央値という事。
そこに結果の良否は無関係なのである。


・歯科臨床における最適解とは

患者さんから見れば、歯医者村の常識や正解、
ガイドラインなんて知ったこっちゃない!
「ちゃんと健康体にしてくれよ」というだけだ。

片山式歯科臨床の現場では、
時に治療行為より話を聞くだけ、
会話だけといった場合もままある。

心が折れてしまった患者さんに、
ブラシシングのここがダメ、
あれやっちゃダメ、
どうしてこんなことしたの?
・・・・・・
更に打ちのめされるだけ。

普通は何でもない入れ歯の調整だけでも
傷害行為になりうるのだ。

極端な例え話だが、
「手術は成功しました。
が、
患者さんはお亡くなりになりました。」

これ、どう感じますか?

普通は、
「これは失敗だよ。成功なんてとんでもない。」
でしょうね、一般社会では・・・。
でも、ガイドライン、保険診療ルールに則っていれば、結果は問われない。
正しい治療の結果が「死亡」でも、
これは正解とみなされている。
結果が予測できていても、延命処置に膨大な費用がかかる理由の一つだ。

では、これはどうでしょう?

「ガイドラインに則って歯周病治療を進めました。
でも、歯は抜け、総入れ歯になってしまいました。」

歯の話は、命に直接関係無いので、余り重く受け止められないようです。

「入れ歯かインプラントがあるから良いんじゃない!」
で済まされているようでですね。

「歯科治療は日進月歩、発展が著しい」
とよく聞く言葉だが、
歯周病は減っていない。

歯を失った後の入れ歯やブリッジ等のバリエーションが増え
技工士さんの手作業が機械化されたが、
歯周病は減っていない。


・正解≠最適解@歯周病治療

患者さんは十人十色、百人百様。
治療は、マニュアル通りに進まない。
試験問題の正解を並べて治療しても
病気や人の心身はレールの上を走らない。

ここで、あるケースを見てみよう。

40代女性・初診相談時

数ヶ月間、下前歯の歯肉の腫れと痛み、
歯の動揺、噛み合わせの狂いに悩まされて来たという。
その間、放置していたわけでは無く、
幾つかの歯科医院に通院していた。

そして、行われて来た治療というのは

化膿した歯肉から膿を出し、
飲み薬を処方、
噛み合わせ調整の為に患歯を削り、
揺れ動く歯を仮止め(暫間固定という)し、
急性症状が軽くなったら、
歯周ポケットの深さ測定等の諸検査を行い、
病状を把握して、
適した歯ブラシを選んでブラッシング指導、
歯石除去や歯周ポケットの洗浄、
マウスウォッシュや歯周病用の歯磨き粉の使用を勧め、
家庭療法を指導する。

大まかに数ヶ月の間の治療の流れを示した。
これらの一連の治療はガイドラインやマニュアルに則った
正解であり、
歯科臨床の常識で
保険診療上も何ら問題はない
・・・と思う。

保険診療から離れて5年以上経つことと、
片山方式とは進め方が少々違うので
私たちには分からない。

この状況を数ヶ月間繰り返して来たという。
歯石除去したその日、帰宅すると歯肉が腫れて、
痛みがぶり返すという事を繰り返した。
勧められた歯ブラシと歯磨き粉でブラッシングすると、
出血し腫れと痛みが再発したという。
噛み合わせ調整の後は噛み方が変になった。

そこで、片山方式の基本から、
・歯科医による歯垢の除去
・歯磨き粉とマウスウォッシュを中止
・ウガイの仕方を指導
・歯ブラシの選択(方法、部位によって複数セレクト)
・今の状態に合ったフォーンズ法の指導(順序、ブラシの使い分け、時間と力加減等々)
・今の状態に合った突っ込み振るわせ磨きの指導(順序、ブラシの使い分け、時間と力加減等々)
・食事の際の噛み方の注意
・今までの仮止め(残間固定)と噛み合わせ調整の不備とそのリカバリー法の説明
・2回目に行う仮止め(残間固定)のやり直しの仕方を説明
・症状に合わせたブラッシングの変更の必要性を説明
・・・・・等々
をできるだけコンパクトに説明、実習指導して2時間ほどで終了する。

どんなケースでも、必ずフォーンズ法が必要だし、
現状では抜け落ちている。
歯科医ならばその名前くらいは聞いたことがあるだろうが、
フォーンス法の実際と、その効果は知られていない。

数ヶ月間の歯周病治療の常識&正解に則った処置を受けた結果を見て、
その最適解から外れた部分を読み解き
理解力、能力に合わせた処置、家庭療法を
数日間行ってもらった結果を比較してみよう。

比較

数ヶ月間、腫れと痛みを繰り返し、悪化を続けた歯周病の症状は
正解治療の不備を見つけ出し、方向修正する事で
数日で快方へと舵を切ることができた。

歯周病治療のガイドラインを否定しているわけでは無い。
むしろ、しっかり読み解いて、個々のケースに合わせた
最適解を導き出すための地図として活用すべきだと思う。

そう、
読み解く能力を養うべきなのだ。
正解も、順番や適用法を間違えると
最適解にはならないといどころか
悪化を来す。

・40代女性健康歯肉の例

同世代女性、病気から立ち直って、良い状態を維持しているケースを見てみよう。
歯磨き粉を使っていたら、この歯肉と歯の艶は維持できない。
適切なフォーンズ法は必須だ。

40代女性・健康歯肉

ブラッシングだけで、歯周病が治るわけではない。
しかし、適切なブラッシング無しに、
歯周病治療も再発予防も不可能である。
素振りもキャッチボールも嫌い、やりたくない人が
「プロ野球選手になりたい。」と言ったって無理。
大谷くんの足元にも及ばない。


・システム更新が必要な時

現代日本は、戦後復興から高度経済成長&人口増加の流れに乗って
様々なシステムを作り上げてきた。
重厚長大産業と護送船団システムの中で
駒として従順に働いてくれる人々を量産する為の教育制度を
現在まで維持している。

私も、子供の頃から寺子屋式and軍隊式教育というスタイルに慣らされてきた。
校則を始めとする様々な規則に沿って
皆が一様に学習し生活する事が正義だと。
そして、正解に辿り着くことが善であると教育されて来た。

学校で教えられる事には、必ず正解が存在する。
その正解を見つけ出す術を教えることが教育の一つの目的になっている。

歯科医療の世界も概ね同じである。

ところがだ、
今の世界は、正解が無い。
「昨日の正解は今日の不正解」が当たり前。
コロナ禍を経て、益々顕著になった。

変えてはいけない本質と、
朝令暮改が必要な部分とが混在している。

そして、
今の日本では、相も変わらず
誰かが変えてくれるのを待っている。
レールを引き直してくれるのを待っている。
レールをまたぐと怒られる。
例え、そのレールの先で、橋が壊れていても。

ルールは守るべきである。
しかし、そのルールが不完全なものであったならどうだろう?
迷わず改訂、変更するべきだ。

世の中をマニュアル通りに動かしたい人が沢山居る。
全てを管理、監督しなければ気が済まない人たちが居る。
平等と公平を混同している人たちがいる。

平等と公平

もういい加減で、
全員平等・横並び思想、一元管理から方向修正した方が良い。
最適解は自分で見つけることだ。

人は自分で見て、聞いて、実感した時にしか変われないのだから。


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