すなひで

砂川秀樹。文化人類学者。1990年からオープンリゲイとしてHIV、LGBTに関する活動…

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砂川秀樹。文化人類学者。1990年からオープンリゲイとしてHIV、LGBTに関する活動を牽引。著書『カミングアウト』、 『新宿二丁目の文化人類学』、共編著『カミングアウト・レターズ』。冊子販売中 https://www.gradi.jp/shopItems/32071034

最近の記事

この歳でも、なりたいものをイメージする

なぜだが、幼い頃から、「将来なりたいもの」を具体的に、本気でイメージできたことがない。 幼稚園で誕生月にもらった見開きの記念カードには将来なりたいものを書く欄があって、先生に尋ねられたものの、結局答えられなくてモジモジしたことをはっきりと覚えている。 先生が親に「家で聞いてあげてください」と言い、その結果として「ケーキ屋」と書かれているが、本当に「ケーキ屋」になりたかったわけではない。当時、「ケーキ屋けんちゃん」というドラマが流行っていたからそう答えただけだった。当時、世

    • (再録)幸運の中で生き延びて

      2008年、琉球新報の「落ち穂」で連載していた頃に書いた文章。 ーーーーーー  年の瀬に誕生日を迎える僕は、暦の一年と自分の一年を重ねて振り返る。その振り返りの中で、一年を無事に過ごせたことの重みを痛感するようになったのは、いつの頃からだろうか。  自身の入院や手術、また肉親や友人との死別を経験する中で、生き長らえることの偶然性を意識するようになったことや、住む家があり日々食べることに困らない生活が、いかに恵まれていることかわかるようになったことが、日々の、そして一年の重

      • (再録)LGBTの市民運動

        日本平和学会 編 2023『平和学辞典』丸善出版に掲載の文章(pp.518-519)。

        • (再録)「あるリンチ殺人事件をめぐって

          ホームページに書いていた日記(2005年11月18日)。忘れたくないので、再録しておく。 ーーーーー 昨日、早朝バイトから帰ってきて、ふとテレビをつけてみると、朝のワイドショーで、1999年12月に起きた「栃木リンチ殺人事件」ついて取り上げられていた。 この事件のことは、発覚して報道されたときから、その凄惨さへの痛ましい思い、警察の対応のひどさへの怒り、そして、何より「なぜ誰も助けられなかったのか」というやりきれない思いが僕の心に強く残っている。今でも、何かをきっかけにふと

        この歳でも、なりたいものをイメージする

          (再録)甲虫の「同性愛」行動

          ホームページに書いていた日記(2008年11月5日)。今も、全く同じ考え。 ーーーーー 準備が大変だった研究会の発表もようやく終わり、一つの山は越えた感じ。でも、来月まで、講演やらフォーラムでの発表やらがあって、まだまだホッとはできなそう。まぁ、しかし、そうやって招いてもらえるということは、必要とされているということだし、自分の考えを人に伝えるいい機会なんだよね。感謝感謝。 ところで、ネットでニュースチェックをしていたら、「甲虫の同性愛行為」についてのニュース記事を発見。

          (再録)甲虫の「同性愛」行動

          (再録)虹色の音楽祭

          2008年、琉球新報の「落ち穂」で連載していた頃に書いた文章。 ーーーーーー  七月最後の日曜日、東京都新宿区の区民ホールで、「プレリュード」という名の音楽祭が開催された。参加したのは、合唱団が三団体、吹奏楽団が四団体、弦楽団が一団体で、出演者数約200人、観客は約370人だった。  一見、どこにでもよくあるアマチュアの音楽祭だが、この音楽祭には、一つ大きな特徴がある。それは、参加団体がすべて、ゲイのみ、あるいはゲイを中心とした性的少数者で構成されているという点だ(一部、

          (再録)虹色の音楽祭

          『The PrEP Project』上映会トークを終えて(挟み込みたかった話をまとめてみた)

          ▼『The PrEP Project』上映会への参加 昨日開催された「カラフル@はーと」主催の短編映画『The PrEP Project』上映会で、トークの進行役を務めた。 『The PrEP Project』(監督:Chris Tipton-King)は、2017年にサンフランシスコで制作された、HIVの予防薬PrEPに関する映像作品。性的にアクティブなゲイ/バイセクシュアル男性を主な対象として作られており、性的なシーンも多く出てくる。 20分弱のこの作品の上映後に、

          『The PrEP Project』上映会トークを終えて(挟み込みたかった話をまとめてみた)

          (再録)守れなかった親友との約束

          2008年、琉球新報の「落ち穂」で連載していた頃に書いた文章。 ーーーーーー  親友Gが肺炎で亡くなったのは、昨年*の十一月、自身の三十八歳の誕生日まであと数日という日のことだった。(*再録時注:この文章を書いた前年、2007年)  彼は、二十歳で会社を興した優れた企業家であり、才能あふれるシステム・エンジニアであった。そして、ゲイなど性的少数者の生きやすい社会の実現をと、様々な活動に力を注いだゲイ・アクティビスト(活動家)でもあった。  僕は二〇〇〇年に、「東京レズビ

          (再録)守れなかった親友との約束

          (再録)虹の彼方

          2008年、琉球新報の「落ち穂」で連載していた頃に書いた文章。 ーーーーーー 東京のある街の、ゲイのみを客とするバーへ足を運んだときのこと。そのバーへ来るために、地方から飛行機で上京してきたという、僕とほぼ同年の人と知り合った。 彼は、そのバーのマスターの大学時代の友人だという。たまたまゲイ雑誌を開いたときに、店の広告にそのマスターの写真が掲載されていたので、連絡をとり、店に来るようになったと話してくれた。 彼は、自分がゲイであることは思春期の頃から自覚していたが、本人

          (再録)虹の彼方

          中学時代の家庭教師に謝りたい話

          マストドン(Mastodon)いうSNSには、夢(寝たときに見る方ね)や思い出話を書いているので、中学時代に家庭教師をつけてもらったときの話を書こうと思ったのだが、やたら長くなって収まらなくなったので、noteへ。昔から我慢できない、わがままな性格であることが明らかになるエピソードだけど… ーーーー 【ふと思い出すこと】中学3年のとき、塾に行ってなかった私は「家庭教師をつけたい!」と言い出した。そんなに余裕のある家ではなかったけれど、親は家庭教師を派遣しているところに依頼し

          中学時代の家庭教師に謝りたい話

          『躍動するゲイ・ムーブメント』への抗議とその回答

          『躍動するゲイ・ムーブメント』(明石書店)への抗議文の回答が届いたのは10日ほど前。公開の可否を尋ねたところ、検討したいということで、ようやく承諾がとれた。 下に、抗議文と回答を掲載しておく。 唯一の歴史があるわけではないことを理由にすれば、嘘や曲解で人の名誉を傷つけることが認められるということだ。 そして、それを金科玉条にするなら、なぜ第三者の確認をとったのか、誤りの指摘を受け容れる可能性があるのか、大きな矛盾。また、インタビュー内容は、挙証の必要がないのに、嘘や曲解

          『躍動するゲイ・ムーブメント』への抗議とその回答

          ドキュメンタリーで観た野宿生活夫婦のこと(再録)

          昔、HPに書いていた日記の再録 2003年6月17日(火) 日曜日にたまたまTVで観たドキュメンタリーが、なんだか頭から離れない。それはフジテレビのザ・ノンフィクションという枠で放送された「アルミ缶ホームレス」。横浜市でアルミ缶を集めながら生活している人たちを追ったものだった。番組欄には「夫婦愛暗転」というサブタイトルらしきものもついている。 描かれていたのは主に三組。一組は、もともと会社を経営していた人と彼がつくったグループの人たち。 彼は、自分の会社が倒産した後、

          ドキュメンタリーで観た野宿生活夫婦のこと(再録)

          石田仁(編著)/斉藤巧弥・鹿野由行・三橋順子(著)『躍動するゲイ・ムーブメント』の嘘

          今後、正式に抗議文を送ることも検討しているが、とりあえずここで記しておく。 『躍動するゲイ・ムーブメント』石田仁(編著)/斉藤巧弥・鹿野由行・三橋順子(著)の小倉東氏のインタビューで、嘘や曲解、勝手な憶測に基づき、私も中心となって関わった、2000年代の東京レズビアン&ゲイパレード(のちの東京プライドパレード)が中傷されている件についてだ。 石田氏から、小倉東氏を含んだ三人をインタビューした本がでること、それを献本したい旨のメールが届いたときに、悪い予感はした。なぜなら、

          石田仁(編著)/斉藤巧弥・鹿野由行・三橋順子(著)『躍動するゲイ・ムーブメント』の嘘

          マイノリティ「当事者」のさまざまな経験

          ある人たちは川岸を歩いていて、別の人たちは川の中を歩いている。属性によって、それぞれ歩くルートが違っている。川岸を歩いてる人たちのほうが圧倒的に多い。 川の中を歩く人たちの中から、川岸を歩きたいという声があがると、川岸を歩いてる人から「そうしよう」と呼応する人も出てきた。しかし、もともと決められたルートだからダメだと言う人たちがいる。どうやらその人たちが、そのルートを歩く人たちの中で強い力があるらしい。 「川の中を歩く人には悪い人もいる、悪い人が川岸に増えると困る」と主張

          マイノリティ「当事者」のさまざまな経験

          一回きりのケアでも

          ある学生とのやりとりで書いた文章に大幅に加筆したものです。 ---- 人間は、もともと持っている肉体的、器質的な特徴があり、それを土台にしながら発達していきますが、自分の中に内在しているものが自ずと展開していくのではなく、周囲からいろんなものを吸収し、土台をも改変しながら、自己ができていく存在です。そして、それが表出され、それに対する周囲の反応があり、また自己が方向付けられていく面があり。 中島岳志さんの書かれた『秋葉原事件 加藤智大の軌跡』という本をご存知ですか? 20

          一回きりのケアでも

          ミュージッキングと「青春のやり直し」「語りなおし」

          先日書いた、「青春のやり直しをさせてもらった気がした『シンバシコイ物語』」で触れた中村美亜2013『音楽をひらく』(水声社)について、出版当時ブログに書いた文章の再掲。 ---- 2013年09月30日 『音楽をひらく』(中村美亜) 最近、本を読むことがめっきり減ってしまい、学術書はなかなか読み通しづらくなっている。しかし、中村美亜さんの『音楽をひらく』は、読み始めてからは一気に読み通せた(病院の待ち合い時間に読み始めたのだが、おかげで長い長い待ち時間が苦じゃなかった)。

          ミュージッキングと「青春のやり直し」「語りなおし」