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残り1週間!石岡瑛子「血が、汗が、涙がデザインできるか」の感想

石岡瑛子の展示「血が汗が涙がデザインできるか」を見てきた。
凄くよかった^^
気合い入った展示で魂が浄化された感じに。
ザクっと感想を記す。

グラフィックデザインの作品について

自分的にはグラフィックデザイン作品の方がビビットだった。
理由をこれから話す。

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「語り口の人」という印象。

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「ヤサグレテ アデスガタ」これは現物見て「凄い!」と思った。

コピーライティングが総じて石岡さんぽい。
ビジュアルに言葉が負けてない。絵と言葉が拮抗したり、
「なんだこのビジュアルは!」と驚かせていきな言葉で締めたり。
言葉の力を信じている人という印象。
コピーライター入ってると思うけど
結果、どれを見ても石岡瑛子さんの切れ味抜群の語り口を感じる。
「あなた達まだそんなところにいるの?」という、どの作品にも根底に共通の思想があって、それを要所要所で切り出して訴えている。クライアントワークなのにすげえなと思う。
石岡瑛子としての語り口で時代をリードしている印象を受けた。
ビジュアライズも凄いけど、言葉の人なんだなと思った。

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エネルギッシュで艶のあるビジュアル

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モデルの表情がすごいですね。
顔だけじゃなく、肉体全体の表情。これはモデル、カメラマンなどのチーム内の信頼関係の賜物と思う。

石岡さんのビジュアル
・フェティッシュ、艶っぽい、ロマンチックなビジュアル
・映画的なスケール感
・かっこいいルック、エネルギッシュ
・ディティールマスター、細部に神が宿ってる
・モデルの表情の引き出し方がすげえ、顔だけでなく全身
・カメラマンやモデル、美術とのコラボレーション、信頼関係の醸成

昭和の巨匠デザイナーに通底する、あるスケール感をもったデザイナーだと思った。

ドミニク組

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不意打ちのアート

デザインの教科書で見たポスターてんこ盛りだったけど、
現物の大きいサイズを直に見るとインパクトがすごい。
ポスターというのは不意打ちのアートと言われるけど
70年代〜80年代に、街で石岡さんのポスターと出会った人は羨ましい。

大学時代の恩師の佐藤晃一先生が『グラフィックデザイナーは社会にパワーを与える存在だ』と言っていたけど、石岡さんのポスター見て意味がわかった。

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カッコ良すぎる「地獄の黙示録」ポスター。
絵と言葉の力で映画見たくなった。

展示のインスタレーション

1枚絵で完結するポスターが密度を持って空間を構成しているのはかなり壮観。
色指定の現物が見れたり、贅沢で鮮やかな展示だった。
このインスタレーションの設計の関係で、グラフィックの方が衣装作品より展示としての見栄えが良かった。

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大義的な作品

石岡さんは、万博ポスター、オリンピックのコスチュームデザインなど国際的な国家プロジェクトも多く手掛けている。
その中でも異彩を放つのが「ヒロシマ・アピールズ 」。
戦後の日本の繁栄はアメリカの助力なしではなし得ない。
一方で「アメリカにおんぶに抱っこで肝心なことを見ないふりをしているのでは?」という辛めのメッセージを感じる。
「ヒロシマ・アピールズ」シリーズでここまでダイレクトなアメリカ批判のポスターはない。
ビジュアルコミュニケーションの表現に行きがちな作品が多い中でストレートなコミュニケーションと見た人に少し考えさせる余白のあるポスターだ。

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資生堂の石岡瑛子

1949 中村誠 入社
1956 仲條正義 入社(1959退社→1961独立)
1961 石岡瑛子 入社(1970独立)
1964 松永真 入社(1971独立)
1969 佐藤晃一 入社(1971独立)

資生堂の同時代のデザイナーをざっと調べてみた。
横綱大関、勢揃いのすごい顔ぶれ。
中村誠さんが一回り以上先輩。
仲條正義さんがちょっと先輩。
後輩に、松永真さんと佐藤晃一さん。すげえ豪華。

山名文夫さんが作ったアールデコ調の資生堂スタイルを新しいものに塗り替えようというのが60年代〜70年代のひとつの潮流と思う。
その中から石岡さんは「本流」を進んだんだなと、今回の展示をひとしきり見て思った。

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衣装、映画&舞台美術作品について

ここからは衣装や映画や舞台の美術作品に関して記す。

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グラフィックデザイン的な切り口

ドラキュラのコスチュームは既存のドラキュラのイメージは使いたくないと、ドラキュラという存在を改めて考え直して衣装を作ったそうです。
この、ステレオタイプを否定して新しいものを作るプロセスは、石岡さんが東京でグラフィックデザインをやっていた時の手法の応用ではないか?

ドラキュラというキャラクターの見直し、言語化

ビジュアル・デザイン化

衣装化

勝手な言い分だが、グラフィックデザインの2Dのビビットなイメージを衣装に引き上げている印象を受けた。

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「Mishima」にも感じたが、グラフィックデザインの素地があるからできるユニークな切り口だなと思った。「Mishima」は、画面レイアウトも込みで美術を設計している。これは石岡さんの得意ジャンルである。

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石岡瑛子の妄想

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石岡さんの妄想が面白いと思った。
これは、「ニーベルングの指環」の大量に配置された衣装群を見て石岡さんの妄想の面白さに気づく。
ファンタジーを土台とする映画的な妄想だと思う。
グラフィックデザイナーの時代は「現実を切り取る」ことを生業としてきたけど、映画や舞台美術の時代は時として物語の世界を妄想的に膨らませる必要があったからではないか?

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「ドラキュラ」「落下の王国」や「ザ・セル」もそうした石岡さんの妄想が映画的なスケール感の獲得に機能している映画だ。結構、無理難題なお題が多かったみたいだけど突破しているところが凄い。


ドラキュラのドキュメンタリーがあったので紹介。
石岡さんのデザインのコラージュにもなっているので是非見てほしい。

展示のインスタレーション

インスタレーションは大人しいなという印象。
空間の支配の仕方が弱いのは配置するアイテムを制限しているせいか。
衣装や美術のデザインの過程が分かる資料がもっと見たい。
資料そのもので見ると「ドラキュラ」の衣装スケッチが面白かった。
他のデザイン画と比べてA1くらいのサイズで大きく、イラストレーションとして見ても「いい絵だな」と思った。
キャプションを見ると「海外の図書館所蔵」とあり、こういった資料を集めるだけでも大変なんだろうなと思う。

2Dの魅力

現物の衣装以上に石岡さんのデザイン画や2D図の方が魅力的に見えた。これはソルトレイクシティオリンピックのコスチュームを見たときに思った。デザイン画とコスチュームが両方展示されていたが、デザイン画を見たときの「おお!」という驚きが、コスチュームを見たときに「なるほど」という感想に変わった。
これはデザイン画の方がイメージの余白があるから、無限に面白さが広がって見えるのだろう。
コスチュームは現実。デザイン画はイマジネーション。

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ビョークのMVを見ても同様な感想を持った。
石岡さんの作品は2Dの世界で見て完結するものであると。
晩年に近い作品だったが、絶好調だなと思った。
ビョークのMVは、Youtubeの動画がなかったのでニコ動。コメント消して見ましょう^^

つまり、映画や舞台の作品もそのものを見ないと石岡さんの仕事は理解できないのかもしれない。
映画見たいなと思ったので軽くまとめてみた。

石岡瑛子が関わった映画
・Mishima: A Life In Four Chapters (1985年、美術)
・クローゼットランド(1991年、美術・衣装)
・ドラキュラ(1992年、衣裳)
・ザ・セル(2000年、衣裳)
・落下の王国(2006年、衣裳)
・インモータルズ -神々の戦い-(2011年、衣裳)
・白雪姫と鏡の女王(2012年、衣裳)

「ドラキュラ」「白雪姫と鏡の女王」はNetflixで見れる!やったぜ!
「地獄の黙示録」も見ないと^^

「落下の王国」が一番見たいけどw

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参考資料

①展覧会の公式解説


②松岡正剛さんの千夜千冊における「I DESIGN(私デザイン)」の回。
旧知の間柄だった?松岡正剛さんが論じる石岡瑛子さん像。とても面白い読み味だった。

③本展担当学芸員の藪前知子と河尻亨一さんの対談。(音源)
展示の解説と、PJの苦労話など色々聞けてジワる対談でした。

④gggの方のイベントで、榎本了壱さんと河尻亨一さんの対談。(音源)
これは、榎本了壱さんも気になるめちゃ面白い対談でした。

⑤石岡さんと共に広告の仕事をしたカメラマンの水谷充さんのインタビュー動画。
こういう一緒に働いていた人のインタビューが見たかったのでありがたし!
スタッフ、カメラマン、モデルの信頼関係の醸成の仕方がユニークで興味深い話だった。


⑥河尻亨一さんの「石岡瑛子とその時代」プロジェクト。

⑦これは、河尻さんの本買わねばな!ということでリンク貼っとく。



#石岡瑛子 #血が汗が涙がデザインできるか





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