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曲に込めた想い③:「Sky Fragment EP」編

初めましての方は初めまして、こんにちは。すなじろと申します。
久々のライナーノーツ的な記事です。しばらく書いてなかったな、と思ったら一年半ぐらい特に何も書いてない※4らしいです。マジか。

先日、デジタルリリースかつフリーダウンロードという形で3曲入りのEPである「Sky Fragment EP」をリリースしました。
今回のこの記事では、それぞれの曲について作りながら考えていたことなどをだらだらと書き連ねていこうと思っています。

アルバム

彩色の空をテーマにした3曲です。
フリーダウンロードなので良かったらDLしていってね。
というかこのEPの話がすべてなので聴いてないと意味不明だと思います。聴け~~~~!!!!

きっかけ

2022年秋に初めてのソロアルバムをリリースし、M3という同人音楽のイベントに出展しました。(過去記事)
現在2nd Albumを誠意制作中なのですが、「1st Albumから2年も開くし、その間でストリーミングサービスに一発何か流したいな……そうだ、ミニアルバム、作ろう。」と思ったのがきっかけでした。

アホすぎる依頼

例のごとく絵は描けませんので、アルバムアートワークは依頼する必要があります。そこでかねてよりの知り合いであるずあきさんに相談を持ち掛け、アルバムジャケットを書いてもらうことに。
その依頼文が──

内容としては「任意のキャラクターがヘッドホンを装着して楽しそうに音楽を聴いているバストアップのイラスト」です。(中略)背景に関しては何かしらあると嬉しいです。

これマジで送った依頼文(一部)らしいです

中身0すぎん????????????
まあまず「任意のキャラクター」って。何を描いてほしいかが依頼文ですよね。マジで何も指定していない……。
背景に関しても「何かしら」と丸投げしていて、具体的なデザインのアイデアを伝えようとする姿勢すら見えません。なんだこれ……。
しかしこれだけに留まらず──

・スケジュール
曲が今虚無ですので(以下略)

これマジで送った依頼文(一部)らしいです2

曲が今虚無ですので????????????????????????????????????????????
つまりこのすなじろという奴、曲のジャケットを描いてもらうのにもかかわらず、曲を提示せず、方向性も指定せず、すべてを丸投げしているのです。

しかしずあきさんの「意図をくみ取る能力」や「作風に合わせてイメージを作る能力」が高すぎたため、信じられないぐらい良いジャケットが納品されてしまいました。本当にありがとうございます。

今回のジャケット。すなじろがやったのは文字入れのみなのでほとんど絵師にお任せ。

あの依頼文でこれが出てくるの凄すぎる!!!!!!!
本当にありがとうございました、いや本当に……

曲について

以下、曲に関しての製作記です。
音楽の受け取り方や感じ方は人それぞれです。決して楽しみ方を限定するものではないし、読む人によっては蛇足となり得ることをご理解の上お読みください。

1. Sky Fragment

D major / 182 BPM

アルバム表題曲の歌物ハードコアです。
EPを制作すると決めた時、表題曲は絶対歌物ハードコアにしたいと考えていた(単に作りたいから)のでそんな感じです。
イメージしていたものは、極彩色の夜空です。天の川とかを長時間露光で撮影した感じといえば伝わるでしょうか。夜空に星の軌跡が見えるようなアレですね。
これにSky Fragmentという言葉を当てるアイデアの大元として、オルバースのパラドックスという、宇宙にまつわる一つのパラドックスがあります。

ざっくり言ってしまえば、「星が無数に存在するのなら、空はすべての場所が同じような明るさに見えるのではないか?※1」というものです。
もしこのパラドックスが成立するのであれば、空は星で満たされ、均一な色が広がっているように見えているはずです。しかし、実際にはそうなっていない。
すなわち、星とは空に浮かぶ断片なわけです。Sky Fragmentって、要は夜空の星のことなんですね。

曲全体に対して、このように宇宙から着想を得ています。
歌詞にある「いつまでも終わらない夢よどうか消えないで」とは、人間の寿命からすれば途方もない時間を生きる星の終わりのこと──つまり、超新星爆発の暗喩であり、「深く水底に沈んでく永久(とこしえ)の記憶」とは、観測可能な宇宙のその先を深海に例えた、膨張する宇宙のことです。
この曲では歌詞パートがシンセサイザーのメロディの前に前座として存在しますが、それも人間(歌)という存在が宇宙に比べればちっぽけなことを表していると考えてよいでしょう。人間なんて、この広大な空に対してはあまりにも矮小すぎます。
イントロなどで使用しているⅠadd9/ⅳ⇆Ⅰadd9/ⅲというコードも、地に足を付けるというイメージとは逆のアプローチで壮大さ・雄大さを感じさせたくて選択しています。ウワモノが変わらないのにベースラインだけ動いていくわけですからね。

いろいろ書きましたが、要は最初から最後まで「空でけー! すげー!」って曲です。

どこが好きか決めようと思うと迷いますね。
コード進行が曲想にビタっとハマった感じがするのでそこでしょうか。「水底に沈んでく」でⅠ/ⅲ→Ⅲ♭M7とか。あとはメロディが全編好きです。
制作中にミックスうめえ~って言ってました※2。ピアノを帯域分けして低音部分にのみダッキングを掛けたのですが、かなりスッキリしていて聴きやすいかな~と思っています。

2. Cosmic Diver

D♭ major(A = 453Hz) / 182 BPM

コズミックにダイブする、ということで宇宙飛行をイメージしたドラムンベースです。チューニングを弄っていて、普段使用しているA = 440Hzからかなり上げたものを使用しています。
A = 440Hzにおいて、A♯ ≒ 466Hzなので、この453HzのチューニングはおおむねD majorとD♭ majorの中間の音に当たります。前曲のキーがD majorであり、次曲のキーがD♭ majorなのでその間なわけですね。
この選択には以下の二つの理由があります。

① 前後の2曲を滑らかにつなぐ音階だから。
② 一般的に使用されないチューニングを用いて異世界感を演出したかったから。

中でも②の理由がかなり大きく、宇宙という、地上とは異なる異世界のイメージを前面に押し出したかったという意図があります。そのほか、自分の曲では使いがちなピアノ等の生楽器音源を使用していないのも異界のイメージを出したいからですし、うっすら聴こえるクワイアのような音はシンセサイザーにフォルマントシフターを挿して音作りしているので、全部シンセです。
Sky Fragmentとは、宇宙を深海と比喩しているという点で共通項がありますね。なんとなく自分の創作観や世界の見方がこういったところに滲み出ていて、おもしろいな~と思っています。

曲として好きなところはやはりニ回目のビルドアップに存在するⅣ♯m7ですかね。これ使うたびに言ってるのですが、Ⅳ♯mの和音はめちゃめちゃ怪しく夜っぽくてとても良いので使ってください。ガチでドヤ顔で「このコードの動き気持ちええやろ~」つって作ってました。
そのほかコード以外で上げるとするなら2回目のブレイクに入る前、リバーブが強くかかって空間が一気に広がるところでしょうか。途方もない大きさの空間に投げ飛ばされたような感じが表現できて気に入っています。

3. Astralsphere

D♭ major / 190 BPM

星空を見上げるような歌物ピアノロックです。
AstralsphereはそのままAstral + Sphereの合成語ですが、これは天球のこと※3です。

地球を取り巻く空を球面に例えて、内側から見ているような感じですね。内側から見ている、ということは紛れもなく地球側の話です。
曲名が英語で日本語歌詞が思いっきりついているということに関しては、元々インスト楽曲でイメージしていたことに歌詞を付けただけなので大きな意味はありません。

長々と歌詞がありますが、歌詞に込めた大きな意味としては「目的なんてなくても自由に生きるのがええやん」というメッセージです。あれ、これどっかで見たような……
わたしの考え方の根底にこれがずっとあります。積極的ニヒリズムの考え方が近いでしょう。なので、この曲もそんな感じです。

その思想を星空に投影するにあたって、観測者と星の立場を入れ替えるという発想に思い至りました。星よ教えてよ──すべて見ているでしょう?
星々が私たちを、夜という時間を通して観測しているんですね。その夜空は地球の公転、彗星の通過などのイベントを通して毎日少しずつ顔を変えているわけですが、そんなことは関係なく日々はただ過ぎ去ってゆくのです。
観測者は何もしてくれない──いや、何もしてあげないでいる、という方が正しいでしょうか。宇宙の機嫌一つでこの日常は跡形もなく崩れ去るわけですから、何にもないかもしれない、されど美しい、というわけです。

曲の方に話を移しましょう。
一番お気に入りなのはサビのコードとピアノのフレーズですね。
ⅣM7 - Ⅴsus4 - Ⅵm7 - Ⅲm7/ⅱ - ⅣM7……のオンコードがミソで、情緒的で人間味の強い4563の進行に、62の強進行で雄大な感じを加えたようなイメージです。そのあとも2から4へ接続しますが、こちらもまた同機能のコードへの移行ということで大胆な感じです。
空の広さと人間の心の機微をごちゃ混ぜにしたようなコードで相当気に入っています。そのあとにくるピアノのフレーズもオシャレにできて、歌声とうまく掛け合わせることができかなり好きなパートに仕上がりました。

あとがき

EP、フリーなのでぜひみんなDLして聴いてくれ~~!

もうすでにDLして下ってる方はありがとうございます。ここまで読んでくださった皆様にも感謝申し上げます。


※1 実際にはもっと細かい条件の下で得られる帰結なのですが、大筋とはあんまり関係ないので詳しくはWikipedia読んでください。ここでは私が「オルバースのパラドックス」という概念から「Sky Fragment」という曲名を着想したということだけ伝われば十分です。

※2 当社比

※3 英語では正式に「celestial sphere」という言葉が存在するが、さすがに面白くなさすぎたのでAstralに変えている。正式な訳語ではないことに注意されたし。

※4 曲に込めた想い編を書いてないというだけで、雑記はめっちゃ(2回/年)書いていたことに後から気づいたので追記。追記したので記事の頭から注釈4が入る、何とも言えない気持ち悪さのある構造になってしまった。

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