人を撮るということ
ポートレートを長年撮ってきました。その際、大切にしてきたことを記してみます。
会話から生まれる表情
ポートレートって、会話だと思う。会話次第で笑顔が生まれ、素の表情が撮れる。篠山紀信氏はじめ、ポートレートの巨匠って、会話が上手いんだろうな、といつも思う。
その人柄を撮る
ポートレートを撮る時にモデルさんには、まず、
「撮りたい今は何ですか」
と相談することが多い。
人生の節目、転機……そんな今を撮りたいと話す。
撮影は、その人の人生の時間を写真に留めることになる。そのお手伝いをする感じだ。
いずれにせよ、モデルさんの「今」に寄り添う撮り方がひとつある。
それは、写真=真を写すの撮り方なんだろうと思う。
その人物を超えた存在を撮る
その人物を超えた存在を撮りたくなることがある。その場合、モデルさんといかにその思想を共有できるかが創作の鍵となる。
例えばこの写真。この写真はブラームスの交響曲第4番の2楽章が聞こえてくるような写真を撮りたい、とのコンセプトを伝えて撮った。
晩秋の夕暮れの光が、モデルさんを照らした。その時、モデルさん自体が内包する優しさとの相互作用によって神々しさが生まれた。その瞬間がフィルムに焼き付いた。
この写真は特にコンセプトはなかったけど、きれいな写真を撮りたい、と夢中になっていくうちに、その想いがモデルさんにも伝わり、その人持っていた大人っぽさや、美しく撮られたい、という気持ちとの相互作用が生まれ、別人格として画になった。
ふだん見たことない、これからも見られないであろう表情だ。
それは時間軸を超えた、
photo graph=光の画の撮り方
だったのかな、とあらためて思う。
写真は共同作業
いずれの写真もモデルさんとの共同作業によってできた作品だ。そんな共同作業で生まれるポートレートをこれからも続けていきたい。
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