連載『数学はなぜ嫌われるか』 4章「すべての問題は文章問題」

よく、こんなことを言う人がいるよな。
「計算問題は得意だけど、文章問題は苦手」
けどよ、あんたの言う「計算問題」って、つまりはどんな問題だ?
その問題を、ここで出してみてくれ。
さあ、どうだろうか。
あんたは言うかも知れねえ。たとえば、

1+1

これが計算問題に決まってるだろ、ってな。
つまり、問題にゃただ「式」だけ書いてあって、その「式」を「計算」して「答え」を出させるのが計算問題。
式以外にもウダウダ「文章」が書いてあるのが文章問題、あるいは文章題。
そういう区別が広く普及してるのは、確かに間違いねえ。
けどよ、ちょっと思い出してくれ。

1+1

って問題が出されるとき、その頭に必ずと言っていいほど、
「次の計算をしなさい.」
って「文章」が、書かれてねえか?

本章じゃ、「計算する」と「解く」は実は違うっていう衝撃の真実に始まり、しかもそいつはなんと「もの」と「こと」の違いに関する哲学的なヤベえ問いに関連してやがることに触れて、そっから多くの人がやらかすド初歩なヘマのメカニズムを明らかにし、最終的に、そもそも計算問題と文章問題って分類がいかにアホくせえもんかを見る。
さらにおまけとして、レベルの高えことを知りてえ人のために、「こと」を「もの」に変える魔法の集合論って話までブッ飛ぶぜ。
楽しみに覚悟してくれ。

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