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クソゲーと罵られつつも本当は凄いサイレントヒル:シャッタードメモリーズ

「よく来てくれたね。」
「ここへ来たということは、君が協力的であるということだ。」

「君の記録を読んだよ。」
「他のセラピストとは、上手くいかなかったようだが。」
「今回は大丈夫だ」

この記事ではこちらのセリフの謎を解き明かしていきます。

僕は一時期ホラーゲームが大好きでした。特にサイレントヒルシリーズは大好物でしたね。
その中でも最も思い出深い作品
『サイレントヒル:シャッタードメモリーズ(SILENT HILL SHATTERED MEMORIES)』
について何となく語りたい機運が高まったので語りたいと思います。

※シリーズのネタバレ注意

・まずサイレントヒルシリーズってなんぞや

最初に登場した作品は1999年にコナミからプレイステーションで発売された『SILENT HILL』です。
初代バイオハザードがこれの三年前に出てまして、その当時プレステではバイオの影響が否定できないような
・第三者視点で
・近接武器や銃でクリーチャーと戦って
・時々唐突に謎ときがある
といったゲームがいろいろあったといえばあったのですが、その系譜の作品といえるでしょう。その中でも特にオカルト的な方向性のホラー色を強く押し出したゲームでした。

その後PS2やPS3等などの後継ハードで続編が作られています。
初代と3のように、登場人物が引き継がれているなどして明確なストーリー続き物になるものもあります。2や4のように一応つながりはあるといえばあるけど、他のシリーズとはほぼ関わりのない人物がメインとなる作品もあります。
ただすべての作品で舞台となるのは基本的に「アメリカの北東部にある架空の観光地サイレントヒル」となっています。

・シリーズ中でのシャッタードメモリーズの立ち位置

今回特にご紹介したいサイレントヒル:シャッタードメモリーズ(以下サイレントヒルSM)は最初に発売された初代サイレンヒルの「リ・イマジネーション作品」「再構築作品」と公言されて発売されました。「リメイク」ではないんですね。
そして従来のサイレントヒルシリーズファンからの評価は…決して高いとは言えませんでした。

「敵と戦えない逃げゲーであるのがつまらない」
「ストーリーに従来シリーズからのつながりがない」
「サイレントヒルシリーズの代名詞といえる血と錆をベースにしたおぞましいビジュアル表現が登場しない」

確かにごもっともな意見ばかりです。
ですがこういう意見もありました。

「ホラーゲームとしてはそこそこ怖いしよくできてるけど、これ別にサイレントヒルシリーズとして出さなくてもよかったんじゃないかな」

いや、それは違う。
むしろこれはサイレントヒルじゃないといけない作品であって、サイレントヒルシリーズ全てを内包する作品であることを声を大にして言いたいのです。

・娘を探し回る父の物語

先に初代サイレントヒルの物語をざっくりとご紹介しましょう。
主人公であるハリー・メイソンは自動車事故の後、目を覚ますと最愛の娘シェリルが行方不明に、異様な霧に覆われた異世界と化した街サイレントヒルでクリーチャーを倒しながらさまよい歩くハメになります。
サイレントヒルの「異変」の元凶は土着信仰が過激化して生まれた悪魔崇拝に近い信仰を持つカルト教団。彼らは超能力を持つ少女アレッサを生贄に邪神を降臨させる儀式を行おうとしていたことが発端です。
主人公が探し回る愛娘シェリルは実は拾い子であり、神の力を宿した少女アレッサが儀式を不完全なものとするために自らの魂を逃がしたことで生まれた存在こそがシェリルだったのです。
シェリルがサイレントヒルに帰ってきたことで教団の儀式は完成され、「神」が復活します。それに対峙した父である主人公ハリーは見事に邪神を打ち破り、教団の野望を打ち砕くことになります。(つよい
娘シェリルは儀式の犠牲となってしまいましたが、不思議な力で自身の魂を受け継いだ生まれ変わりの赤ん坊をハリーに託しました。
そのシェリルの生まれ変わりが再びハリーに育てられて成長した少女が直接の続編であるサイレントヒル3の主人公。
という流れです。
このお話を「再構築」したものが僕の大好きなサイレントヒルSMになります。

・いきなりカウンセリングから始まる

サイレントヒルSMは精神分析がテーマの一つとなっています。
この記事のトップに貼ったトレイラームービーの冒頭でおっさんがなんか言ってますが、このDr.Kというお医者さんに診察してもらう形でストーリーが進行します。つまり本編のゲーム部分のストーリーは主人公が過去を語る回想にあたるというわけですね。
このゲームは複数のチャプターに分かれているのですが、チャプターごとにこのカウンセリングシーンに戻ってきます。
「君の記録を読んだよ。」
「他のセラピストとは、上手くいかなかったようだが。」
「今回は大丈夫だ」
じゃあ最初から順番に話してみようか、といった形でお話が始まります。
先に言ってしまうと、「他のセラピストとは、上手くいかなかった」という言葉はメチャクチャ重要な意味を含んでいます。
そして「今回は大丈夫」にしてくれるんです。

・やっぱり娘を探し回る父の物語

サイレントヒルSMもストーリー本編が始まると主人公であるハリー・メイソンが自動車事故にあった後、意識を取り戻すと姿を消していた娘シェリルを探し求めて雪に覆われたサイレントヒルの街をさまよいまわることになります。
視界不良甚だしい街サイレントヒルの描写が真っ白い霧と雪という違いがありますが、この辺まで大体同じです。登場人物も娘を探し回る父であるハリー、協力的な女性警官シビル、幸薄そうな看護師リサなどと、初代サイレントヒルと共通する名前と役割を持った人物が登場します。
ダリアという女性は初代とSM両方に登場しつつも表面的には立場が若干異なります。初代では神の力を持つ少女アレッサの母であり、カルト教団の中心人物で娘への虐待を繰り返して最終的に儀式の生贄にしてしまう狂った女性でした。
サイレントヒルSMではダリアは父であるハリーの妻・恋人としての女性として登場します。(初代の主人公ハリーの妻は既に死別しています)
初見プレイ時はこの違いがかなり衝撃的で違和感を感じましたね、でもこれも意味があったんです。

・様々な痕跡とその違和感

このゲーム主人公が携帯を持っていてそれを活かしたゲーム性になっています。
特定の場所で携帯で写真を撮る必要があったりとか、登場人物から電話やメールが着たりとかするわけです。
携帯には別の側面もあって、これはやっぱりホラーゲームなので怪奇現象が起こるわけですが、その一つとして携帯に何処からともなくメッセージやボイスメールが届くというのがあります。
謎解きやら特定の場所を調べたり写真撮ったりするとメッセージが来るんですが、これはその調べたりした対象にちなんだ音声とか文章だったりするのです。これはやっぱりホラーゲームなのでマップ中に落ちている意味深なオブジェクトも、それを調べた際に送られてくるメッセージも大抵不穏なものばかりです。夫婦間の軋轢を感じさせる1シーンや、退廃的で無軌道な学生生活を切り取った会話等、そんなのが多いです。まぁこれはやっぱりホラーゲームなのでそういうのはつきものですよね。
と思っていたらこれは全部意味があった。

・揺らぐ存在

ゲーム中発見される様々な痕跡の数々、そのほとんどが言ってしまえばハリーとダリア夫妻とその娘シェリルに関わるものばかりです。名言はされませんし、かなりぼかして表現されていますが。
となると違和感があります。父ハリーは娘を探して大雪の街の中を必死に探し回り、おぞましいクリーチャーに襲われて力尽きても何度でも立ち上がり、娘を探し回っているような家族思いの理想的な父親像です。
ですがその「愛する娘を探し回る理想的な父親」という一点を除けば、そのすべてが揺らぎ始めます。
ハリーは自宅に娘シェリルが帰っていないかどうか確認しに向かえば、自宅には見も知らない赤の他人が住んでいます。
大雪が酷いので地元の高校に避難所が出来ていたとしたらそこに娘がいるのではないかと考えて向かうと、なぜかその高校に娘シェリルが在籍していた痕跡が見つかります。
ですがハリーは「小さい女の子を探している」と再三主張してきており、ここで大きな違和感が発生するわけです。

因みにこれがゲームをニューゲームした際に一番最初に流れるオープニングムービーです。ホームビデオかなんかですね。
これ最初に見ちゃってたら当然娘は小さい女の子だと思いますよね?
そもそも初代サイレントヒルの娘シェリルは小さい女の子でしたから。

ですが高校を探索して得られた情報はシェリルは既に高校を卒業しているという事実と教師と不倫しているような荒れた学生生活を送っていた生徒がいたと思われる痕跡だけでした。

そして不審な行動を繰り返しているハリーをマークしていた警察官シビルはこう告げます。
「あなたはハリー・メイソンではない」
衝撃的な発言ですが、この直後にサイレントヒルの代名詞「裏世界への変貌」が始まって彼女の言葉の真意は聞けずじまいになります。
ゲーム的には探索パート終わって敵に襲われるパートに入りますよーって感じですね。サイレントヒルシリーズは世界が突然変貌しておぞましい姿を取ることが恒例となっているのですが、今回はシナリオ上の重要局面でストーリーの確信に迫りかけたときにまるでストップをかけるかのように世界が変貌する、という演出が複数回見られます。

・そして「今回は大丈夫だ」った

最終的に父ハリーは「シェリルは灯台に行っている」という情報を得ることになります。
クリーチャーたちの猛襲を受けたり、凍り付いた湖に落ちて泳いだりといろいろあって湖のほとりの灯台に到着します。
そしてそこには「LighthouseClinic」の文字が、どうやらここは診療所の様です。
場面変わってチャプターの合間に挟まるカウンセリングパート。

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終始冷静だったDr.Kが語勢を強めて語り掛けます。
「18年も、拒否し続けている!全ては、君の小さな脳みその中の幻想の世界なんだ!」
「目を覚ますんだ!」
「君の父親は、輝く鎧をまとった騎士なんかじゃない。ただの人間だ。父親の真の姿を君は知らないし、これからも知ることはない。」

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「自分の人生を生きるんだよ。」

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なんと今まで主人公だと思っていた父がカウンセリングシーンで第三者として登場しました。
じゃあカウンセリングを受けているのは誰なんだ?

・I love my Daddy!

結局の話、Dr.Kにカウンセリングを受けているのは7歳の娘を想う父ではなく、大人になった娘・シェリルでした。

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父であるハリー・メイソンは家庭崩壊の原因を作り離婚、その後自動車事故で死亡していました。
幼かった娘は夫婦関係の悪化、そして父の死の結果、自分を責めました。
成長した後も荒んだ生活に陥り、過去の父の姿を拒絶した結果、想像のなかの理想的な父親像にとりつかれていったというお話でした。
このゲームはマルチエンディングではあるのですが、この事実は一切揺らぎません。
最後のシーンでささやかな分岐として「シェリルのもとにたどり着いてしまった」直後の父と娘の振る舞いが異なります。

一つ目は父は「これからも一緒だ」と歩み寄るも娘は首を振り、静かに父の姿は凍り付いてしまう結末。

二つ目は父と娘はお互いに拒絶し合い、父は静かに凍り付いて崩れ去る結末。

三つ目は父の姿は虚像であるという事実を叩きつけられたにもかかわらず、父と娘はお互いに抱き合ってしまうという結末。

この辺の分岐はプレイヤーのゲーム中での振る舞い(虚像の父親の活躍)が誠意あるものであったかといったといったところを見られて決定するようです。あとはゲーム中様々な場所に隠されている思い出的なアイテムの収集率も影響している気がします。
さらにカウンセリングパートで質問に対して適当に答えたり、Dr.Kに対して目を合わせなかったりしても分岐するようですね。

その後ももうちょい分岐ポイントがあります。
オープニングのホームビデオが再度流れます。お出かけに連れて言って貰って遊園地で遊ぶ父と娘、大はしゃぎで「パパだいすき!」と笑う微笑ましいビデオです。オープニングムービーではこのシーンを何度も巻き戻してみるという演出でしたが、エンディングでは巻き戻しが行われずにこの続きが再生されます。ここで流れる続きの内容が分岐内容です。
今まで微笑ましい思い出だけを見てその先を思い出さないようにしていた、父の真の姿が映ったシーンが数パターンあってそれが分岐になっているわけですね。

・酒乱END
酔っぱらって家に帰ってきてくだを巻く父の姿がビデオに映っています。幼い娘にも絡んできて大分タチが悪いです。
ゲーム中に酒や食べ物のオブジェクトを注視している時間が長いとこのENDになりやすいようです。
このゲーム、基本的に敵クリーチャーの種類は皮を剥かれたのっぺらぼうの人型みたいなやつ一種類だけなのですが、分岐の方向性によってデザインが変化していきます。
酒乱ENDの場合は腫瘍のようなものが目立ち、若干の肥大化が見られます。

・不倫END
ゲーム中登場したミッシェルという女性と看護師のリサという女性と不倫している様子がビデオに映っています。(というかノリノリで自撮りしている)
ゲーム中にセクシーなオブジェクトを注視している時間が多かったりするなどするとこのENDになりやすいようです。
クリーチャーは女性的な体格に変化し、巨大な口とヒールのような足が特徴的です。

・喧嘩END
夫婦喧嘩の様子がビデオに映っています。どちらかというとケンカというより一方的に妻に夫がその不甲斐なさを責められ続けている形です。(二回もぶたれる)
ゲーム中に暴力的な物(死体や刃物など)を注視したり、登場人物に非友好的に接したりするとこのENDになりやすいようです。
クリーチャーは体の節々に穴の開いた、凹凸の目立つ外観に変化します。

・離婚END
まぁ全部離婚してるんですけどね。
このパターンの場合は具体的な父のクズっぷりを示すシーンは映りません。
ただ玄関で父が家を去っていくシーンが映っています。喧嘩ENDでは非常に感情的になっていた妻のダリアもこのシーンでは冷静そのもの。
オープニングの車でお出かけするシーンと対になるようなシーンになっているため大変切ない雰囲気です。
ゲーム中にシェリルを探すために適切な行動をとり続けたり、登場人物に友好的にふるまうとこのENDになりやすいようです。
クリーチャーはなんか骨と皮だけになって、頭部にも大きな穴が開いた感じになります。

マルチエンディングのゲームは数あれど、父親のクズっぷりがエンディングで様々な方向性に分岐するゲームはサイレントヒルSMだけだと思います。

・Dr.Kの手腕

実際カウンセラーのDr.Kは何をしていたんでしょうか。
僕はDr.Kがしていたのはただひたすらに娘が自分の家族のありのままの姿を受け入れられるように導いてくれていたのだと思います。そしてそれが上手くいったのがサイレントヒル:シャッタードメモリーズだったのです。

「他のセラピストとは、上手くいかなかったようだが。」

と冒頭でDr.Kは発言します。
これってつまり他のセラピストの治療の際に娘が語った内容が初代サイレントヒルから連なるお話だったのでしょう。
サイレントヒルSMが描くハリーは、見た目は若干冴えないですが遮蔽物もカッコよく乗り越えるし、クリーチャーに飛び掛かられても力強く振りほどき必死に娘を探し回る立派なパパです。
ですがプレステの初代サイレントヒルのハリーに至っては同じく娘を愛し、加えて邪悪な教団の野望を打ち砕くような英雄です。神だか悪魔だかよくわからんものまで殺しちゃってます。そのあとPS2やPS3とかで続編が五本くらいでいたり、前日譚が出たり、PS4で小島秀夫が続編を作ることになったり、それがおジャンになったりしました。

作品が出るたびに街で悲劇が起こり続けました。
設定モリモリでもう全然収集ついていないわけです。
作品が世に出なかった小島英雄のSilentHillsに至っては作品が世に出ないという形で悲劇となりました。

「他のセラピスト」の先生もいきなりそんな話されちゃお手上げでしょう。
話を聞いたらいきなり18年前に事故死しているはずの患者の父がいきなり化け物やカルト教団と戦ったりするし、どんどん話が膨らんでいって患者の父の娘は神の力を持つ少女の生まれ変わりっぽいようなこと言ってすごいことになってきた。

挙句の果てにUFOです。
実はサイレントヒルシリーズには恒例としてUFOエンドというものが用意されています。いわゆる隠しエンディングで急にイラスト紙芝居みたいなのが始まって、主人公がUFOにさらわれたりする投げやりなシュールギャグエンディングで完全に正気を疑うような要素なのですが、なんかノリで多くの作品で採用されています。(だいすき
本来は本編一切関係ないギャグが急に始まるという趣旨のマジで意味がないタイプの要素なのですが。サイレントヒルSMではこのUFOエンドすら意味を持ってきます。

今作サイレントヒルSMでもUFOエンドが用意されており、特定の条件を満たしてエンディングに到達すると分岐します。
突然イラストの紙芝居が始まり

「今まで会話を重ねてきて、君は本気で…父親がエイリアンにさらわれたと信じているというのか?」

とDr.Kは呆れ果てた様子。
いやーこれはやられましたね。
これまでのサイレントヒルの物語がシェリルの妄想の暴走の産物であったという解釈を前提にしてしまえば、マジで今まで物語的な意味がなかったUFOにさらわれて終わるENDすら妄想の暴走の一つの結果だということで説明がついちゃうんですから。しかも実際に父が居ないことへの理由付けにも都合よくなっちゃってるし。

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「カルト集団や悪魔の話のほうが、よっぽどつじつまが合っていたよ。」

このセリフ、まさに過去の上手くいかなかったカウンセリングの際にカルト集団や悪魔が出てくる話、つまりサイレントヒル本編シリーズの話をしていた裏付けなんですよね。

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因みにここの紙芝居シーンのシェリル大分かわいいです。
大分狂っていますけど。
まぁサイレントヒルSMの通常エンディングで出る3Dのシェリルのデザインも好きですけどね。

…とまぁこの通り、妄想が大分ヤバい方向に向かっているシェリルに本当の家族の姿に向き合わせることに成功したDr.Kはカウンセラーとして凄腕なんですね。途中持ってたグラスを激高して叩き割るというカウンセラーとしてあり得ない行動取るっちゃ取るんですがまぁそれは置いといて。

・まとめ&改めてサイレントヒルSMの立ち位置

以上がサイレントヒルSMの概要です。
エンディングのスタッフロールではゲーム中の行動、カウンセリングパートでの心理テスト、その他細々とした要素から導き出された精神鑑定の結果がカルテ風に記されます。これはまぁシェリルのというよりかはプレイヤーのものですね。まぁ大体当たり障りないことを書いてくれるのですがパターンがいろいろあってなかなか楽しいです。
エンディングだけでなく様々な部分が各種要素によって変動しています。
各エンディングの項目で書いた敵のデザイン以外にも登場人物の服装やちょっとしたセリフ、マップに残された痕跡メッセージの内容、ステージの内装などなど様々なところで変化が見られます。この辺の作り込みは本当に凄いっすよ。
例えば一週目は道中ハンバーガー屋を経由して目的地に向かっていたのに、二週目はちょっとエッチなオブジェクトを凝視したりしてたら一週目ハンバーガー屋だった店舗が風俗店になってたりしました。当然そこで見られるメッセージも変わってきます。

こういう細やかなところもこのゲームの好きなところなんですが、やっぱりこのゲームを嫌う人たちがいるのも分かります。
単純にストーリーが今までと全然違うのでこんなの知らん!サイレントヒルじゃない!というのも分からんではないですし、ストーリーを完全に理解したうえで、これまで積み上げてきたサイレントヒルシリーズをないがしろにするようなオチが許せないという意見も分かります。そもそもサイレントヒルSMはコナミによる開発ではない作品なのですから。

でも決してサイレントヒルSMは従来のサイレントヒルを軽んじて蔑ろにした作品ではないのだと思います。サイレントヒルSMを開発したクライマックススタジオは過去にもう一本サイレントヒルシリーズを開発しています。
その作品はサイレントヒルゼロという作品で、初代サイレントヒルの前日譚にあたります。
サイレントヒルゼロもこれまたなかなかよく出来ていまして、単純にサイレントヒルシリーズに対して非常に誠実な作品なのです。武器が消耗品でいろいろな場所にたくさん落ちているという要素を除けばゲームシステム面はサイレントヒル1~3を完全に模倣したスタイルですし、ストーリーもしっかりまとまっています。グラフィック表現なんかは非常に見事でサイレントヒルの世界観にこれ以上ないほど忠実です。

これ以上ないほどサイレントヒルシリーズに誠意ある前日譚作品を作ったところが開発したサイレントヒルSMです。そう考えていろいろ見てみるとやっぱり誠意ある作品であることが感じられてきます。

サイレントヒルシリーズは通して「家族」がテーマになっていると言われています。
サイレントヒルSMはゲームシステムの大幅な変更どころか世界観も大きく変わり、挙句の果てにストーリー面でもかなりの変化球でした。
ですがこのゲームに登場する会話やテキストの大部分はやはり家族に関わることでした。
何よりも家族に固執したシェリルが生み出した物語たち(サイレントヒルシリーズ)が家族をテーマにしているのは必然だったのです。

そういう見方をすると、よーく考えぬいて作られたんだろうなぁという思いがあります。
決して大団円のハッピーエンドになるゲームではないけれど、不思議な余韻を残してくれるゲームなんですよ。

いいゲームです。

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