20220727_弐に勿れ

day : 2021/7/30
※2021/8/9に記述。
ようやく扉を開くことができた。
管理者やエレメンツたちにもバレてはいないだろう。
早速と人間界に転移したが、その際に協力者とは離れてしまった。
マナマナは人間界ではその肉体と保つためにある程度のワッチャが必要なのだが。
我にはそれすらなかった故か、形状を保てずスライム状になってしまった。
正直焦ったが、スライムになったことでエネルギー消費量は低下し、生きるだけなら水だけで足りた。
ひとまずは、こちらの世界での衣食住を確立させよう。
いや、衣はいらなかったな。

day : 2021/8/9
転移から今日までの記録をまとめる。
こちらの世界で正式にマナマナが存在する形の一つ、プリマジスタのパートナーとしての形を装うために、プリマジスタへの接触を試みた。
幸いにデビューを考えていた少女と遭遇し、快くパートナーとなった。
書類は予め偽装していたおかげで、名と姿を改めてパートナーマナマナとして存在を登録できた。我ながら段取りがよい。
その後は少女の家でぬいぐるみとして居候しながら、こちらの世界について情報を集めた。
パートナー用にとあてがわれた端末からインターネットを用いて、基本的な情報はすぐに調べることができた。
魔法界の図書館もこれくらい誰にでもなんでも解放していればよいものを。
それが一昨日、7日の出来事。
少女は夏休みということで積極的にプリマジを行っており、その協力の為にも多くの時間が取られたが仕方ない。

day : 2021/9/1
になの夏休みが終わったことで、プリマジへの協力頻度がこれから下がるようだ。
日中は多くの時間を調査に当てられる。
またその合間に、プリマジで用いるドローンの遠隔操作方法も確立せねばなるまい。この体でも、体内に取り込むことで細かな作業ができると分かったので、機械制作も可能であろう。

day : 2021/10/9
協力者を発見。だが逃げられた。
他の人間にも接触している。
非常に危険だ。できるなら、早急に捕獲しケージに入れなければ。

day : 2021/12/1
協力者についての続報。
やつは最初に接触していた人間、サニとパートナー契約をしたようだ。
幸いなことに、やつは記憶を喪失し自身が何者であるか思い出せないとのこと。
このまま何も思い出さず、ただのマナマナとして生きるのであれば、下手に刺激して危険性を高める必要はないだろう。
実際、やつは膨大なワッチャをため込む性質はあれど、それを何かに用いるマジを持たぬため、何かを成すことはない。
我のことを思い出したとしても、あの頃の姿とは似ても似つかぬ。
互いに魔法界でのことは忘れ、新しい自分としてこちらで生きた方がよい。
それよりも、ようやく開催されるエレメンツコーデフェスについてだ。
新年早々に予定されているが、になに報せるのはギリギリでよいか。
今のになの努力と成果であれば、優勝できるだろう。
危惧すべきは新人たちであり、その中にはサニも含まれる。
になに伝えればサニにも当然伝わる故、今はまだ黙っていよう。
になが確実に優勝できるよう、こちらも準備を進めねばならぬか。
はて、しかし作曲というのはどうにも、よく分からぬものだ。

day : 2022/1/8
ついにエレメンツコーデを手に入れた。
これを手掛かりに、この世界を成すエレメンツの研究が進められる。
世界の仕組みを理解し、マナマナを理解し、誰にもなしえなかった大魔法を実現させる。
まともなマナマナすら使えなかった我こそが世界を変えるのだ。
協力してくれたになには、こちらも相応の見返りを出さねばならぬだろう。
こちらの世界についての調査もだいぶまとまった、エレメンツの研究がてら、プリマジの方にも積極的に力を貸してやらねばな。
これからの日々が楽しみだ。

day : 2022/3/27
サニがアクアエレメンツフェスに優勝した。我の作曲センスもなかなかのものであろう。
になには悪いが、しかし最後のグランドフェスでにながより輝くためには、競い合うライバルが必要だ。
サニには確実にその立場を全うしてもらえるようこれからも努力してもらいたい。
ぽぽふにあまり刺激を与えないほうがよいとは思うが、何か思い出したらその時はその時だ。機械的にワッチャやマジに介入する術もいくらか見つけた、なんとかなるだろう。

day : 2022/4/30
いっと、という新人がフラッシュエレメンツフェスに優勝した。あれは手ごわいライバルとなろう。
しかしあやつに付きまとうように存在する歪なワッチャ、パートナーに起因するのだろうが。
純粋なライバルとして、またパートナーの正体について、今後とも注意すべき相手なのは間違いない。
にな本人、最初にグランドフェスへの参加資格は得られているが、その後も努力は欠かしていない。その上で純粋に敗北が続くというのは耐えがたいものかもしれないが、今は耐える時期だ。
多くのライバルを見て、より努力してもらいたい。己が志のためにも。

day : 2022/5/10
先日のむらさき家訪問から幾日。
むらさきの、というよりはぱたひらやばさらの調査が進んだのでここにまとめる。
やつらははるか以前に人間界に種族ごと移り住んだというマナマナの子孫。
元々の生態としては、ワッチャを宿す大樹のウロに住まう小型の妖精族。あの大きさは小さくなっているのではなく、魔法界でもあのサイズで生きていた本来の姿、ということだ。ワッチャが自然に存在しない人間界で、魔法界と同じ姿を保つほどマナマナの素質が高い種族なのだろう。
やつらは長く魔法界とは隔絶して生きているため、その記録と交流は途絶えている。故に、魔法界でやや悪名をとどろかせた我については何も知らないだろう。
独自発展した文化やマナマナには興味もあるし、その強い素質は役立つかもしれないが、頭の片隅に置く程度にしておこう。
今は残るエレメンツフェス、ダークネスとブライトネスがデュオなどという同時開催になったことへの対策か。
我とぽぽふが密に関わるのはあまりよくない、だろう。いっとを抑えられれば、ぺったとの接触機会になるかもしれない。

day : 2022/6/6
NO DATA

day : 2022/6/7
昨日のデータが失われていることは分かるが、何をまとめたかの記憶すらない。
察しはつく、やつにはこれ以上関わらないようにする。

day : 2022/7/12
先日のデュオ大会にて、むらさきとくれないの姉妹が優勝した。
これにより、おそらくフェスを開かないサンシャイン以外のエレメンツがフェスを終えたことになる。
ブライトネスエレメンツ、研鑚された伝統を正しく身に着けるくれない。
ダークネスエレメンツ、伝統だけでなくそれを超える信条を持つむらさき。
フラッシュエレメンツ、天然のままに才能を振るういっと。
アクアエレメンツ、底知れぬ器と輝きを秘めるサニ。
そしてフレアエレメンツ、にな。
似つかわしくない、とは世間の評価であるようだが、我はそうは思わない。
あの笑顔の中に秘められた情熱に、気づく者はすぐ気づくだろう。
『世界にもっと笑顔を増やしたいのにな』
そう記されたのは、になのプリマジスタ申込書。
漠然とした、他愛もない夢想のように思われるかもしれないが、になのそれは確固たる強い目標である。
そしてそれは、今ではになだけの目標ではない。

day : 2022/7/27
我がこちらの世界に来てからもうすぐ一年となる。
になたちの夏休みも始まり、八月になればすぐにグランドフェスが開催される。
ぺったからの情報によれば、そこにサンシャインのエレメンツも顔をだすとか。
どのようなフェスになるかは分からぬが。
我らの目標のためにも、必ずや頂点にt

「何書いてるのにな~?」

反射的に画面を消す。いつの間にか部屋に入っていたようだ。

「ん、になか。なに、いつもの研究まとめじゃ」
「いつもはすぐ気づかれるのに、気づかない程熱心に何を研究してたのにな~?」
「さぁな。それより、もうすぐグランドフェスじゃが、心意気は?」
「ふふふ、ばっちりなのにな~」

自信に満ちた笑顔を振る舞う。
それが本心だけでなく、自らを奮い立たせるものであることに、我は気づけるようになっている。

「ならよいが……」

最初の印象こそ、へらへらと笑うどこにでもいる少女だった。
それが変わる程度には、この一年近くの付き合いは長すぎた。

「グランドフェスで優勝すれば、魔法で世界が変わるのにな~」

ということになっている。
時間をかけて集めたワッチャとコーデメイツ、そしてエレメンツ。
世界を形作るものたちへの大規模儀式による干渉。
それを通して、認められたものが願いを叶えることができる。

なかれ。
そう願われ付けられた名を、かわいくないのになと笑い飛ばしながら、意識しないでもその通りを目指す少女。
その漠然とした、しかし確かな願いは、唱えれば叶うのだろうか。
今はもう存在しない、あの悪にまみれた我が手では決して掴めないであろう世界に、この純粋な少女の手は届くだろうか。
いや、届かせねばならない。何をしてでも。

「勝とうな、にな」
「ん、えへへ~もちろんなのにな~」

照れくさそうに笑うこの笑顔が失われぬことを願う。
全てが終わり、我が断罪される日が来ようとも。

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