君たちはどう生きるか(映画版)とキュビズムと多次元

(はじめに断っておきますが「君たちはどう生きるか」の考察ではないです)

生成AIが急成長をして、この後の世界、未来というのは今までとはまた少し違う発展をしていくのだろう。
生成AIと深く関係している量子コンピュータ。そして量子コンピュータの考えの元になる量子論、量子力学。

「ひも理論」は量子力学の中で新しい考えの中で最も有名な考え方だろう。昨今はドラマ、映画、アニメなどでも出てきているがそれはパラレルワールドやタイムリープの存在を科学的根拠として利用されているが本来は多次元で物事を考えることがひも理論の本質になるように思う。
多次元で考えるというのはどういうことか?「シュレーディンガーの猫」という有名な話がある。生きているネコと死んでいるネコは箱の中では重ね合わせで存在しているという話。いろいろ難しい話をすっ飛ばして、イメージの中で説明すれば、キュビズムの絵の世界と同じと思っていい。キュビズムというのピカソが描いた独特な絵画だが横から見た顔と正面から見た顔が一つの顔として描かれる、これはシュレーディンガーの猫と同じようなもの。3次元にあったものを2次元に落とした時に描けない部分を半ば強引に重ね合わせした結果、ヘンテコな絵になった。
そして量子コンピュータにおいて、重ね合わせはとても有効で多次元を使えることでできることが飛躍的に増える。一般的な写実的な絵画であると一つの視点しかわからないがキュビズムのような絵画であればいろんな視点、いろんな次元を利用できることになり、より多くの情報が手に入る。
一般生活の中で重ね合わせの一番わかりやすい例は翻訳なのかなと思う。例えば「好きです」という言葉は日本語も英語も中国語もどの言語にも存在する。意味自体はどの言語にも重なって存在するが言葉、表現というのはそれぞれの言語で異なってくる。注意書きの看板などでいくつかの言語で書かれているのはキュビズムのように捉えていいように思う。また「好きです」という言葉の意味に関して、それは「好き」なのか?愛に近い「好き」なのか? 英語の方が分かりやすいが「like」か「love」なのか表面上の言葉では測れない場合もある。言葉としては変わらないのに発する人、受け取る人によって受け取りが変わってくる、これも重ね合わせによっておこる現象だと思う。

さてタイトルに使わせてもらった「君たちはどう生きるのか」ですが、これは多次元、重ね合わせというのを利用して作ったように個人的には感じます。まぁ宮崎監督は重ね合わせを意識して作ったとは思っていないですし、自身で「訳が分からない」ということも言っている。しかし、量子力学ではキュビズムのような訳の分からない状態、重ね合わせの状態であることでいろんな次元を利用ができ、従来のコンピューターでは考えられないような速さで計算が可能になる。今までのコンピューターというのは写実的な絵を一枚一枚描いていく、キュビズムというの一枚の中にいろんな視点、次元を入れて描くことができる。描くモデルが一人であれば写実的な絵もキュビズムの絵も情報とすればさほど変わらないかもしれない。しかし、対象がいくつかあった場合、写実的な絵で情報を得ようとしていくと描くのに非常に多くの時間を費やしてしまう。しかし、キュビズムの絵であれば少ない枚数(時間)で必要な情報を得ることができる。そして「君たちはどう生きるか」では結果的にキュビズムのような状態で表現することで簡潔に短くまとめられる。自分も本を書くこともあるが説明が多すぎて、言いたい、伝えたい内容がボケてしまうこともある。文章が上手い人というのはそのような場合、キュビズムのような重ね合わせを文章で行い、本質を残しつつ簡潔に表現するように思う。イメージ的には俳句や短歌などもそのような感じか。「君たちはどう生きるか」では時間的にも内容的にも丁寧にやると間延びする可能性があるところ、いろんな部分をキュビズム化する、重ね合わせをすることで上手くまとまった部分も大いにあるように思う。ただそのような重ね合わせはピカソのキュビズムの絵と同様にイメージが合わない人にはまるっきり合ってこないだろう。それが評価が大きく分かれる理由の一つだとも思う。

そして今後はこのようなキュビズムのような作品、重ね合わせを利用した作品は増えてくるだろうとも予想している。多様化の社会となってきて、情報は今まで以上に入ってくるし、多くの情報がネット、パソコンなどを利用すれば簡単に手に入る。そして受け取る側の人間も今までは世界のどの地域も国内がほぼ最大の視聴者だったと思うが今後、多様化が進めば国内と海外という境界はなくなっていくだろう。そうなっていくと作り手側も多くの情報を持ち、受け取り側は多様な人たちがターゲットになるとすると一つ一つ丁寧に説明していく作品ではなく、量子力学的な価値観、重ね合わせ(キュビズム化)の利用した作品が増えていくように思う。そのほうが量子コンピュータのように効率がいいだろう。それが10年後なのか50年後なのか、それとも5年後なのかはわからない、しかし、科学の進歩、量子力学的な考えが拡がる中で「君たちはどう生きるか」のような重ね合わせを利用した作品は増えていくように思う。

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