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【24歳_オーダースーツ屋“Tailor F”】ネットビジネスで得た富を捨て新たなチャレンジに挑む理由とは

 今回は、2021年1月から「オーダースーツ屋」としてスーツ業界に参入している、黄 心氏(ファン・シン/24歳)にインタビューさせて頂きました。
 
 かつてから「個人の力で生きていきたい」と考えていた黄氏。大学時代からネットビジネスに着手し、コツコツと利益を上げていった。大学を卒業する頃にはネットビジネスで生きていく力を手に入れ、会社に就職することなく、個人の力で生きていくことを選択をする。
 そして、昨年の半ば頃には、同世代の一般サラリーマンでは到底辿り付けない「最高利益」を叩き出し「それなりに大きな収入と幸せな生活を送り続けることが出来た」と、充分な生活が約束されていた。

 しかし、昨年11月に、“安定かつ約束された未来”の全てを捨て、「オーダースーツ屋」という新たなチャレンジを試ることを決断。
 
 黄氏は何故、ネットビジネスで得た“富”を捨て、自身にとってまったくの“未開拓地”であるスーツ業界に飛び込んでいったのだろうか。

オーダースーツ屋を始めたきっかけ。「すごいですね」に嫌気が差した

ーー本日はよろしくお願いします。さっそくですが、改めて現在の職業を教えてください。

:「今は個人で『Tailor F』というオーダースーツ屋をやっています。メーカーさんと代理店契約を結んで、個人で出張採寸をしては、お客さんの目の前で生地を見せて選んでもらう。ということをやっています」

ーー何故、オーダースーツ屋「Tailor F」を始めることになったのでしょうか。

:「自分の価値が、お金の増幅に比例していないということに気付いたんです。要はネットビジネスでお金を稼げば、いろんな人達から『すごいですね』という評価をたくさん貰うんだけど、『ありがとう』って言われる瞬間が圧倒的に少なくて。それに嫌気が差したというか、自分の価値が全然上がらず、お金だけが増えていくという状況を変えたい。そう思ってオーダースーツを始めました」

ーー「自分の価値とお金が比例していない」とは具体的にどういったことですか?

:「学生時代に遡るんですけど、当時の僕は『やりたい事』が無かったと同時に『やりたくない事』が明確にあって。満員電車に乗りたくないとか、指図されたくないとか、楽して稼ぎたいとか。かなり安易な願望だったけど、ある意味、その願望を忠実に叶えるために努力しました。そこで、アフィリエイトだったり転売というネットビジネスを始めるんですけど、コツコツやっていくと、確かに稼げるようになってきて、それだったら『無条件的に就職するんじゃなくて、やりた事が出来た時にすぐにトライできる環境(お金)を準備しておこう』と。で、大学を卒業した後も継続してネットビジネスを続けていました」

ーー「楽して稼ぎたい」や「満員電車に乗りたくない」という気持ちは皆に共通する部分でもあると思うんですが、その一方でそこに対して本気で努力出来る人は少ないのかなと。

:「まさにそうですね。ネットビジネスを始めた時に思ったことは『出来ないことは基本的に無い』ということ。変な話、やれば誰でも月100万は稼げると思います。でもほとんどの人がやらない。僕はサッカーをやっていたけど、スポーツには不確定要素が多いし、『無いものは無い』という条件下の中で、不利に対して如何に向き合っていくのか。だったから、僕がやっていたビジネスに関しては量をこなせば稼げたし、スキルや先天性的なものが左右する部分もあまり無い。サボらずに続けることが成功の秘訣だった。
そういった意味では、僕は特にプロを目指していた訳でもなかったけど、サッカーも大学4年間休むこと無くやり続けたし、『決めたことは真面目に続ける』というある種の能力はどの業界にも汎用性があると感じていますね」

ーー目に見える成果があったなかで、そのまま続けるという選択肢は無かったんですか?

:「もちろんありました。当時一緒に仕事をしていたメンバーはみんな良い人だったし、それで良かったんだけれど、ただ、『格好良くない』というか『憧れることが出来ない』という感じで。SNSではブランドを載せて、売上も載せて、『俺凄いでしょ』ってやってる。そういった人達はお金を持っているから人が集まっているだけで、お金が無くなったらどうなるんだろうと。
僕自身も、好きな時間に起きて、2時間くらい仕事して、ジムに行って、サウナ行って、後輩に飯を奢って。という生活をしているなかで、お金がいくら増えてもずっと不安が消えなかった。お金は最高のツールではあるけれど、お金を稼ぐ為にお金を稼いでも駄目だなと」

ーーいつ頃からその生活に見切りを付けはじめたんですか?

:「それこそ、去年の10月くらいなんですけど、人生で初めてサボったんです。これまで部活とかバイトとかをサボったことが無かったんですけど、朝起て、仕事の連絡も既に数件来ていたけど、全部無視して、サボりましたね」

ーー衝動的にサボりたくなったんですか?

:「そう、衝動的に。外の天気がめっちゃ良くて、すぐにレンタカーを予約して、アクアラインに乗って千葉に行ったんですよ。何も考えずに一人でUFOキャッチャーしたり、滝を見に行って写真を撮ったり、ソフトクリームとか蕎麦を食ったりして。それが本当にめちゃくちゃ幸せだったんですよね。
要は、誰にも雇われていないし、誰からの指図も無かったんだけど、どこかで『やらなくてはいけない』という圧にストレスを抱えていて。いざ振り返った時に、『俺はやりたい事をする為にお金を稼いで今の“時間”を手に入れたのに、いつの間にかこの生活を維持させる為の仕事になっているな』と思ったんです。そこで、このままでは駄目だなって吹っ切れることが出来ました」


今の収入源は「Tailor F」のみ。これからの半年間が勝負。

ーーオーダースーツ屋になるために、どのような準備をしましたか?

:「僕は何事に関してもクオリティを追求する『本物』になりたいと思っています。その準備として、とにかく本物に会いに行こうと。アパレル業界の本物の方だったり、スーツ業界の本物の方にお会いさせて頂いて勉強していました。そこ感じたことは、今の時代、サービスとかモノとかコンテンツのクオリティの差が無くなってきているということ。つまりは、『何を買うのか』ではなくて『誰から買うのか』というフェーズに入っている。だからこそ、人としての価値や魅力を磨いていくことが重要で、そのプラスアルファとして、プロとして当たり前のクオリティを担保して、自分のオリジナリティを加える。今の時代に合った売り方があるんだろうけど、クオリティを追求しないと何も面白くない。その両面が大事だなと。後は、以前まではスーツだからターゲットは営業マンという風に職業でターゲットを識別していたけど、それはまったく違うなということを今感じていますね」

ーーなるほど。現在の黄氏の収入源は「Tailor F」のみですか?

:「そうですね。ネットビジネスからの収入源は全て断ちました。現状で言うと、半年間は何もしなくても生活出来る貯金があります。でも逆に言うと、この半年間でオーダースーツ屋としての事業を軌道に乗せることが出来なければ、生活することが出来ない状況に陥いるということです。売上に関してはまだまだこれからですけど、有り難い事に、オーダースーツ屋を始めて3ヶ月なのにも関わらず、オーダーしてくださる方がいらっしゃいますし、半年間もあれば、人はいくらでも変われると思っています」

ーーこれからが勝負ということですね。それでは最後にオーダースーツ屋「Tailor F」としての夢をお聞かせください。

:「僕の『Tailor F』としての夢は、僕が死んだ時のお葬式のドレスコードを『Tailor F』のスーツにする。ということですね。僕は結婚していないし、結婚する予定もまだ無いけれど、自分の子供が葬式に参加した時に、自分の父親のスーツブランドである『Tailor F』を参列者の皆が着ていたら、『お父さん格好いい』ってなるじゃないですか。それをしたいですね。
そして、それを実現させる為には僕の『価値』と『信頼』を稼ぎ続けること。今は目の前のお客様に100%のプロとしてのサービスを提供出来るように頑張っています。
何より僕はスーツが大好きです。それこそ学生時代から既製品を買ったこともなくて、全てオーダースーツ。それも親に買ってもらうのではなくて、全部自分でオーダーして、全部自分で買っていました。
僕はこれからもずっと『スーツ』というコンテンツを扱って、そして、“本物”を追求していきたいと思っています」

 「お金選ぶのか。それともやりがいを選ぶのか」という論争はよく見かけるが、お金を稼いでみたことの無い人間にしか見えない景色や価値観があるだろうし、だからといってやりがいを追い求める価値観を非難する必要も無い。
 
 ひとつ確かな主張があるとするならば、黄氏がそうしてきたように、やりたいことをする為(やりたくないことを避ける為)には、その為の、努力(やりたくないこと)が必ず必要だということ。そして、チャンスや転機は勝手に訪れるのではなく、自分の理想を強く描き続けた者の前に訪れ、正しい努力を続けることでしか、自分の理想を掴むことは出来ないということではないだろうか。



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 また、「インタビューして欲しい!」という方がいらっしゃいましたら、是非DMをください。
 最後まで読んで頂き有り難うございました。

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