波乱の幕開け (1分小説)
「キミは、この母親のもとに生まれて、本当に幸せな人生を送れると思う?」
せまくて、暗い羊水に浸っている相方に聞いた。
一歩外へ出れば、ボクらを育ててくれるのは、未亡人のママ。苦労は目に見えている。
「うん。お腹の中で、こうして双子の兄弟にも出会えたわけだし。君は、どうして、この母親を選んだの?」
ボクは、多少クサいが正直に答えた。
「愛しているからだ」
【翌朝】
オギャー、オギャー!
助産婦さんが、ボクらを見て言った。
「一卵性双生児の兄弟なのに、ぜんぜん似てない」
へぇ、気は合いそうなのにな。
「この子は、お尻にハートのアザがあるわ」
助産婦さんが、相方を抱き寄せる。
それを聞いた母親が、驚きの声をあげた。
「交通事故で亡くなった主人にも、その位置にハートのアザがあったんですよ。生まれ変わりかも!」
相方は、照れくさそうにボクのほうを向いた。
「もう一度、どうしても、嫁さんに会いたくなってさ」
そうだったのか!
さっきの助産婦が、今度はオレのケツを触った。
「あら、この子のお尻には、スペードのアザがあるわ」
母親が、絶句している。
「同じ車に乗り、同じ被害にあった、主人の親友にも、同じ場所にスペードのアザがあったわ」
あちゃー。
相方は、ピタリと泣き止んだ。
「ちょっと待った。どうして、親友のケツのアザを、ウチの嫁さんが知ってるんだ?」
波乱の幕開け。
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