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18-19 PL 第21節 Arsenal × Fulham

前節はリバプール相手に惨敗。チームとしての完成度の違いをまざまざと見せつけられた試合だった。心機一転(とはいえわずか中2日だけど)2019年始めの試合となる今節はホームでフラムと対決。フラムは前回対戦時から監督が変わっており、以前レスターを優勝へ導いたラニエリが率いている。今シーズンの目標は残留となりそうだが油断ならない相手だ。アーセナルは引き続き怪我人が多く、主力メンバーでは、エジル、ムヒタリアン、ベジェリン、モンレアル、ホールディング、ウェルベックなどの欠場が続いており、厳しい状況。エメリのやりくりに注目だ。

■チーム概要
・アーセナル(監督:ウナイ・エメリ)
フォーメーション
基本:3-4-3

・フラム(監督:クラウディオ・ラニエリ)
フォーメーション
基本:3-4-3

■試合の流れ(前半)

お互いに3-4-3のフォーメーションを採用し、ミラーゲームとなったこの試合。アーセナルは開始早々からチャンスを作り、上々の立ち上がりとなった。

DF-MFのライン間や下がってきてボールの引き出しも出来るイウォビ、ラカゼットの2人が前線に入ったことで、ビルドアップから上手く前へ運ぶことができていた。また、イウォビ、ラカゼットが下がったことで出来たスペースへオーバメヤンが入るなど前線3枚の流動的な動きでフラムDFを翻弄していた。

特に左サイドは良い崩しが出来ている場面も多く、コラシナツ、イウォビの連携で深いところまで侵入できていた。また、左CBにコシエルニーが入ったことでビルドアップで持ち上がって相手を引きつけたり、縦に早い楔のパスを出せたりと、良い展開を創ることが出来ていた。

アーセナルペースで試合が進むと思われた15分、一転アーセナルはピンチを迎える。前線からのプレッシングを行い、ジャカ、ゲンドゥージの2CHも積極的に前へ。センターサークルの前辺りまで出ていた。これにより生まれるCBをとの間をシュールレに使われ、レイオフから裏の大きく空いたスペースへスルーパス。GKと1対1になったセセニョンだったが、シュートは枠を外れた。2CHの上がったスペースをフラムに突かれた非常に危険なシーンだった。

21分にも同様の形で危ういシーンを迎えていた。この時はフラムの攻撃がうまくいかず事なきを得たが、2CHが高い位置を取っていたことで危険なシーンが散見されていた。23分にはCHの戻りが遅いことでCBがさらされ、シュールレがサイドから入れたクロスにセセニョンが合わせにいってあわやの場面もあった。

しかし25分。このCHが高い位置取りをすることのメリットでアーセナルは先制点を奪う。WBのコラシナツからWGに開いたイウォビへ。その間にするするとCHのジャカがペナルティエリアへ侵入。ラカゼットが相手DFをスクリーンし、フリーのジャカへパスが通る。ジャカがこれを難なく決めてアーセナルが先制。ラカゼット、オーバメヤンがいる中でジャカがここに顔を出すというのはここまで見ることはなかったし、CHが高い位置を取ることはエメリの指示だったのかもしれない。

その後もイウォビを中心に左サイドから攻め、決定機を何度か生み出すも追加点は奪えずに前半は1-0で終える。

■試合の流れ(後半)

後半開始早々、この試合でもエメリは動いた。ムスタフィに替えてトレイラを投入。フォーメーションを4-3-3(4-1-2-3)に変更。どちらかというとジャカがアンカー気味。

この交代の狙いは、おそらく2点。
・CH裏のスペースを埋めること
・サイドでの数的優位

ではないかと推察する。詳しくは後述。

55分にアーセナルが追加点を奪う。ペナルティエリア付近でのスローインからオーバメヤン、コラシナツ、イウォビの3人でパス交換しながらDFのラインを突破。ゴール前へ抜け出したコラシナツが落ち着いてマイナスにポジショニングしていたラカゼットへ、これをラカゼットが落ち着いてゴールを決める。非常にきれいな崩しだった。

61分にフラムが動く。一気に2枚替えで交代枠を使い切り、フォーメーションを4-4-2に変更。アーセナルのフォーメーション変更に対応しつつ、2トップでゴールを奪おうという狙いだろう。

そしてこの交代策が実り69分にフラムが1点を返す。若干無理のあるビルドアップからトレイラがボール処理に手間取りボールロスト。ショートカウンターからサイドを崩され、セセニョンのクロスからこの直前に交代で投入されていたカマラが決める。

このゴールで試合の流れがフラムに流れるかと思われたが、交代で投入されたラムジーが79分に追加点を決める。これもまた左サイドからの崩しでゲンドゥージとコラシナツのコンビネーションでポケットへ侵入。クロスをオーバメヤンがシュートするもポストに阻まれ、こぼれ球をラムジーが押し込んでゴール。流れを改めて引き戻すとても貴重なゴールだった。

そして更にその4分後、83分にコーナーキックのこぼれ球をソクラティスが拾い、サイドでフリーになっていたオーバメヤンへパス。オーバメヤンが落ち着いてゴールを決め、ダメ押しとなる4点目を奪う。
そのまま試合は終了。4-1でアーセナルが新年を勝利で飾った。

試合結果:Arsenal 4 × 1 Fulham

■得点
25分:ジャカ(アシスト:イウォビ)
55分:ラカゼット(アシスト:コラシナツ)
69分:カマラ(アシスト:セセニョン)
79分:ラムジー
83分:オーバメヤン(アシスト:ソクラティス)
■交代
45分:ムスタフィ → トレイラ
56分:クリスティ → フォス=メンサー
61分:シセ → セリ
61分:シュールレ → カマラ
75分:ラカゼット → ラムジー
83分:イウォビ → サカ


■ハーフタイムに行った選手交代の意図

【前半】
フォーメーションを3-4-3でスタートしたアーセナル。いつもであればWBを高い位置へ上げて幅と高さを取っていたが、この試合ではその役割はどちらかと言うとWGのイウォビやオーバメヤンあたりが担っていた。そして空いたスペースへ2CHが積極的に入っていく形を取っており、CHが非常に高い位置を取っていた。先制点は、まさにそれが実った形での得点となった。イウォビがサイドを突破し、空いたスペースへジャカが侵入してのゴール。

しかし逆に守備面では危険なシーンが何度もあった。CHが2枚とも高い位置を取っていたため、その裏にスペースが空き、シュールレにうまく使われていた。その対策としてCBのソクラティスが上がることでスペースを埋めにいき残った2枚のCBが中へ絞る、さらに両WBが下がることで4-1-2-3のような形で守っていた。

これがエメリの指示だったのか、選手の判断だったのか、フラムに合わせた反応的な形だったのか、詳細はわからない。ただ、CH裏をソクラティスだけでは埋めきれていなかったし、そこを起点に被カウンターでは何度か危ないシーンが見受けられていたので、うまく機能していたとは言えなかった。

【後半】
エメリ得意の後半スタートからの選手交代は、ムスタフィとトレイラ。最近ムスタフィが怪我がちで万全ではないことと、トレイラの連戦による疲れからくるパフォーマンスの低下を恐れての温存という理由から、エメリが元々準備していた交代策という可能性もある。そう考えると前半の戦術は急造のもので精度が低かったこともうなずける。

そして、トレイラが投入されたことでアーセナルは4-3-3(4-1-2-3)へとフォーメーションを変更する。

上にも書いたように狙いは、おそらく2つ。
・CH裏のスペースを埋めること
・サイドでの数的優位

CH裏のスペースを埋めること】
ジャカをアンカーに置いたことで空いたスペースにソクラティスが入って埋めるのではなく元々埋めておける形に。また、トレイラが入ったことでCH周りのトランジションで優位に立てるようになっていた。

【サイドでの数的優位】
WGの位置にイウォビ、SBに入ったコラシナツのオーバーラップに加えてCHのゲンドゥージなども加わることで左サイドで数的優位を作る形に。コラシナツの好調さもあり、左サイドからの攻撃は厚みがあり非常に見応えがあった。

ムスタフィの怪我とトレイラの温存だったのか、または前半を見て問題点を修正した交代策だったのか、どちらにしても後半開始10分と早い時間帯に追加点を奪えたのは良かった。

■あとがき

前節リバプール戦での惨敗から一転、結果的には快勝となったこの試合。
ただ、あわや失点というシーンも多く、内容的にはまだまだといった印象。やたらと前へ上がる2枚のCHがエメリの狙った采配だったのかは分からないが、今後の試合でも継続するようなら何か狙いがあるのだろう。

とにかく怪我人が続出している今、過密日程ということもあり、やりくりだけでも相当大変なはずだ。そんな中でエメリはよくやっていると思う。

次はFAカップ3回戦でブラックプール戦を挟んでハマーズとのロンドンダービー。4位争いへ落とせない試合が続く。