命についての「確率」は、何を意味するのか。

昔の日記を見ていて、5年前の昨日、双子の次女が先天性心疾患の手術を終えて退院した日だったことを知った。双子の出産、そして次女の心疾患を乗り越えた経験は、私が命の「確率」ということの意味を改めて考え、それまでと違う解釈をするようになったきっかけでもあった。

とても個人的な出来事の記録ではあるけれど、今回はそのことを言葉に残しておきたいと思う。

「100分の1」の双子妊娠

妊娠が分かって2回目か3回目くらいの妊婦健診で、私はお腹の子どもが「双子」であることを告げられた。その時の担当医から、「双子を妊娠する確率は、だいたい100の妊娠があったら1くらい」だと教えられた。100人に1人というと思ったより多いような、でも1%と表現したら少なく感じるような、不思議な感覚を今もよく覚えている。

それからの私の妊娠生活〜出産には、様々な数字がついてまわった。例えば、我が家の場合は「一卵性双胎」で、さらに分類される3つのタイプの中でも「一絨毛膜二羊膜(MD)」と呼ばれるもの。これは分かりやすく言うと、2人の子どもが1つの胎盤を共有しているということなので、血液供給のバランスが崩れる「双胎間輸血症候群(TTTS)」という病気にかかるリスクがあり、これを発症する確率が約10%なのだそうだ。

我が家は、まさにこのTTTSの疑いが出て慎重に入院管理することになり、結果的に29週0日で、緊急帝王切開で出産することになった。

急に手術が決まったので、私はストレッチャーに乗せられた状態で、1人で麻酔や手術についての説明を受けて同意書にサインした。リスクについての説明がたくさん書かれていたけれど、その時は「0.0001%の割合で、こんな症状が…」といったものはほとんど目に入らず、どちらかというと「そんな確率ならほぼ起こらなそうだし、とにかく子どもたちを無事に出産しなければ」という想いしかなかった。

出生体重は、長女686g、次女900g。最終的には、厳密に言うとTTTSではなく、長女のSelective IUGR(一児の胎児発育不全)という診断だった。私たちは、説明されていたTTTSの「約10%」ではなかったことになるけれど、IUGRが起こりうる別の何%かの中に入ったらしい。

双子が生まれた後は、主治医から医療的な説明をたっぷりと聞かされた。生後72時間が山場で、こんな合併症が起こる割合が◯%、あんな合併症が起こる割合は◯%…。その度に、その◯%の中に入ったらどうしよう、どんな治療をすれば良くて、我が子はどうなってしまうのだろう。私はそんな不安と常に戦う毎日だった。

生後半年、次女の先天性心疾患が発覚

その後、我が家の双子はすくすくと成長して無事にNICUを卒業し、家庭でごく普通の生活を送っていた。出産直後にたくさん聞かされた合併症は何も起こらず、私は「残りの◯%の方で良かった」みたいな感覚さえ持っていた。平均より体は小さいけれど、2人はとても元気に成長していた。

けれど、生後半年を迎えたある日のこと。予防接種の前の診察で、次女の心雑音が指摘された。すぐに生まれた大学病院の循環器科を予約して検査をしてもらい、「心室中隔欠損」「心房中隔欠損」という先天性心疾患であることが判明した。簡単に言うと、心臓に小さな穴があいていたのだ。

順調に育っていると思っていた娘が、実は先天性心疾患だった。このことは、私にとっても夫にとっても本当にショッキングだった。でも、循環器科の先生はいたって冷静にこう説明してくれた。「心室中隔欠損や心房中隔欠損は、子どもにとても多い病気です。もっと大きくなってから見つかるケースもあるけれど、だいたい100人に1人くらいの割合で起こるんですよ」。

100分の1の確率で双子として生まれ、さらに100分の1の確率で心疾患だなんて。もはや多いのか少ないのかも分からないけれど、2回当てはまることもあるのか。私はぼんやりと、そんなことを考えていた。

その後、状態を詳しく知るためのカテーテル検査で、次女は確か1%にも満たないような確率で起こるとされた不整脈が起こり、集中治療室に運ばれて経過観察をした。この時の血の気の引くような感覚は、今もとてもよく覚えている。

結局次女は、生後8ヶ月で心臓の穴を閉じる手術を受けることになった。この疾患を持って生まれても、自然に穴が閉じたり、もう少し大きくなってからカテーテル治療をしたりする人も多いそうだけれど、娘の場合は早いうちに手術をした方がよい「数%」のケースに当てはまるという。この頃から私は、もう「◯%」という数字と向き合うことが難しくなっていた。

子どもの命を思う時、「確率」が意味することは何か

そして迎えた手術当日。自分が帝王切開で手術をする時の同意書では「ほぼ起こらないだろう」とあっさり解釈できてしまった様々なリスクが、我が子の手術の同意書となると、たとえ0.000001%だろうがなんだろうが重く感じて、サインするのを怖く感じた。

次女の手術の同意書を読みながら、私は双子を妊娠してからのたくさんの出来事を思い出し、そしてこんなことを考えた。

医療的な意味合いと目的で、世の中の事象にはたくさんの「確率」が計算されている。でも、その数値が多いか少ないかということに、必要以上にとらわれなくても良いのではないか。

そこに何%と書かれていても、多くても少なくても、我が身に置き換えると「起きる」「起きない」の2択だけ。そうなると、自分にとってはどんな確率もすべて50%なのであって、「どっち側の確率の中に入るんだろう」と思い悩むことは、実はそれほど大きな意味を持たない。

こう考えることで、私はすっきりと前を向いて、様々な覚悟を決めることができたように思う。

医学的な根拠があっての数字なので、ある程度は参考にして理解する必要もあるし、それによって下す決断もたくさんある。でも結局、親としての自分にできるのは、目の前にいる我が子の生きる力を信じて、「どちらの結果になっても受け入れる」と覚悟を決めることのみなのだ。

娘たちが双子として生まれてきてくれたことも、その後様々なことを乗り越えてきたことも。確率の世界で話すととても奇跡的なことの連続で、その全てを誇りに思っているけれど、大切なのはそれだけではない。

どんなことであれ正面から受け入れて、それでも前に進むと決めてきた先に「今」がある。そのことが何よりも尊く、娘たちの命をますます愛おしく感じるのだ。

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かおり

#双子育児 まとめ

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コメント4件

こんにちは。先月娘の心房中隔欠損がわかり、冬に手術を控えている身として真剣に読ませていただきました。起きる、起きないの2択の考え方の話、響きます。覚悟を決めて向き合ってゆかねばですね。大切な体験をつづってくださりありがとうございました。
こんにちは。コメントありがとうございます。娘さんが心房中隔欠損の手術を控えているとのこと、きっと今はいろいろな心配もあり、なかなか落ち着かないですよね。私も手術当日を迎えるまであれこれ思い悩んだのですが、ふと覚悟を決めた瞬間があり、その後は娘の生命力と医療の力を信じて、ただ前を向いて進むのみだったように思います。子どもって、本当に強いです^^poconenさんの娘さんの手術が、きっとうまくいきますように、私も心から応援しています。
かおりさん、はじめまして。もう何年も前になりますが、まさに先天性心疾患のお子さんたちを看る立場にいたので、当時の親御さんたちの様子と重ねながら目頭が熱くなりました。不整脈、本当にハラハラされたことと思います。
医療者にしてみれば概ね大丈夫だよという確率のことでも、親にしてみれば心配でたまらないと、自分にも子が出来た今強く思います。
でも例えば何かの感染症の後遺症だとか、予防接種の副反応だとかにしても、起こるのが50%ということも、またそうなんだよなと感じています。
何れにしても相手の気持ちを慮る気持ちを忘れずにいたいと、心に刻みました。ありがとうございます。
ゆみっぺさん、はじめまして!コメントありがとうございます。(お返事が遅くなってしまってごめんなさい…)

先天性心疾患のお子様たちを看られていたとのこと、現場をご存知の方からのコメントすごく嬉しいです。通院中も入院中も、親は心配が絶えず落ち着かない毎日を過ごしていましたが、先生方や看護師さんたちが親身になって寄り添ってくださり、こちらの気持ちが沈んでいる時でもいつも明るく接してくださって、私は本当に救われていました。

この記事に書いた「確率」の話は、私自身もいまだに生活の中でよく思い出すのですが、その度にお世話になった方々の優しさが心の中に蘇り、今もずいぶんと助けられています。こちらこそ、あたたかいコメントをいただきありがとうございました^^
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