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いじめを受けた相手から、結婚式の招待状が届いた。

高校時代の同級生ユミから突然LINEが届いた。
「この度、結婚することになりました。招待状を送りたいので住所を教えてください。」
結婚相手は同じ高校の同級生で、私も良く知っている人物だ。「おめでとう」という感情が湧き上がると同時に、どこか幸せを祝福しきれない、黒いモヤが心を覆った。私は、あの時ユミから受けたイジメを忘れてはいない―。

話は少し遡る。高校一年生の春、入学して間もない頃だった。同じ中学出身の知り合いが誰もおらず心細かった私に、すぐ前の席に座っていたユミが積極的に話しかけてくれた。私たちはすぐに仲良くなった。トイレも一緒、移動教室も一緒、お弁当を食べるときも一緒。高校時代の女友達との付き合いは、「何をするにも引っ付いて一緒に行動する。」これが鉄則だった。明るくて話題豊富なユミと一緒にいると、根暗な私まで性格が明るくなったようで楽しかった。「良い友達ができたなぁ。」と、心からそう思っていた。しかし、入学して2か月、梅雨でジメジメした日が続くころ、ユミの私に対する態度が明らかにおかしくなった。どこか冷たい、よそよそしい態度。朝、おはようと声をかけても、無視される。声をかける私には目もくれず、すぐに別のクラスメイトのところに話しに行ってしまう。移動教室やお弁当だって、まるで私なんて存在しないように、さっさと別のクラスメイトと行動を共にするようになった。ユミは当時、クラスの権力者的存在だった。ユミの命令で、クラスメイトは誰一人として私に話しかけてこなかった。必然的に私は一人ぼっちになった。移動教室もお弁当もずっと一人ぼっちで、周囲からの「いつも一人ぼっちの可哀想な子」的な視線に耐えなければならなかった。学校という閉鎖的空間での一人ぼっちは本当に地獄だ。クラス替えがある高校二年生の春まで、この状態がずっと続いたのだった。

高校二年生になって違うクラスになったこともあり、ユミとはそれっきり、口もきかず、卒業を迎えた。卒業した後の同窓会でたまに顔を合わせることがあったが、その時には既に、一言二言話せるまでに関係は修復していた。あの時から時間が経ったことと、卒業後はそれぞれ別の道に進んだことが大きかった。だがしかし、「なぜ私をあの時いじめたのか」については結局何も聞けないままだった。もちろん、ユミからの謝りの言葉もなかった。あのイジメは、私にとっては忘れられない、辛く苦い思い出だが、いじめた当事者にとっては、すっかり忘れ去るほどの、軽いものだったのだろう。

結婚報告LINEを受け取った時、その当時の本当にツラかった気持ちがフラッシュバックした。あれから数年経ち、思い出すことは少なくなったけれど、確実に私の心はあの時の傷を忘れてはいない。だから、こう思った。
「結婚式、行きたくないな・・・。なんで私があなたの幸せを祝福しなくちゃいけないの?私の知らないところで、勝手に幸せになってくれればいい。」
私は、体調不良を理由に結婚式の出席を断るLINEを送った。行きたくないものは、行かない。大人になった私には、出かける場所や付き合う人を選択できる自由がある。大変お世話になった人・今現在親しくしている人・親族で行う結婚式には大賛成なのだが、昔の知り合いや単なるクラスメイトだった同級生を招いて行う結婚式は、不要だと私は考える。しかも相手は、当時私をイジメていた人。結婚式がなければ会うことすらないであろうその人のお祝いに、なぜわざわざ出向いていかなきゃならないの?私の今の生活を、昔の泥水のような思い出に汚されたくはない。

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