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夜とラジオとSCHOOL OF LOCK

22歳で東京に出てきてから、ずっと芸人とシェアハウスしてるからもうかれこれ10年。1人部屋なんてものは無かったから、去年の秋に引っ越してきたこの家で初めて1人部屋を持った。やっと出来た自分の城。10歳の時に初めて1人部屋を持てた時の無敵感。つっても今回もシェアハウスで、しかも今回は5人の大所帯で。いくら部屋で好きな音楽マンガ映画に浸りひたってこもってても、リビングから「カレー出来たよー」って聞こえたら部屋を飛び出してしまうから、もうこれは実家と変わんないじゃないか。


東京では週末の外出自粛要請が出たもんだから、みんな舞台の仕事も無いもんだから、外に出ず家でワイワイと過ごす。うちではなんかあった時は、大鍋でそれこそ石原軍団の炊き出しばりに作るもんだから、今回も大鍋でめちゃくちゃ豚汁作って。それが最高に美味くて、今日はそれがカレーに変身してて、それもまた最高にたまんなくて。そして今しがた夜中の4時半、もうそれはもはや早朝なんだけど、母親が炊き込みご飯まで炊き出した。
おいおいマジかよ!なんか言って僕は金麦を芋のお湯割りに替えて、めいっぱいワクワクした。そんなうちの母親は、金髪でロン毛でメガネでしゃくれてて花柄のパンツを履いて料理が上手くて、名前が英語なんだよな。まじZAZY。
朝方4時に炊き込みご飯は、まじZAZY。そう言っとけば大概のことは説明出来るんだよ。
テンション上がって写真がブレブレだ。よっぽど早く食べたかったんだろう。


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朝ごはんに最高の状態で炊き込みカレー食べるために、お腹減らすために、その間、この3月に起きた僕の世界のあれこれを。


3月に入ってすぐにコロナの影響で劇場が1週間の休演が決まった。その間にうちのシェアハウス、カサグランデメンバーでやったのが173時間生配信。現時点で、この日本で、リビングからお届けする史上最長の生配信番組。馬鹿すぎる無謀な1週間がはじまった。
前のnoteにも書いたけど2日目の段階で、みんな飛ばし過ぎて身体が悲鳴も悲鳴を上げていたけど、楽しく楽しくしんどく、愛に溢れ、とても面白かった。

この1週間のメインイベントは、173時間の後半にあるピン芸人の最高峰を決める、R-1ぐらんぷりの決勝だ。同居人のZAZYが準決勝進出していたので、敗者復活で決勝に上がってきて、それこそ優勝したら最高じゃないか。それをみんなで生配信しながら応援しようというものだった。結果、ZAZYは惜しくも復活ならずだったが4位の大健闘。本当に素晴らしかった。そして代わりに敗者復活したのは大谷健太さん。大谷さんは僕と同じ福岡出身で、ずっとユニットやライブでも一緒で本当に面白くて素敵な先輩で、それでもずっと日の目を浴びずにもがいていたのも知っていたから、本当に嬉しくて嬉しくて全身がまたもやビリビリと痺れた。またもやってのは、キングオブコントの時のうるとらブギーズさんを思い出したからだ。そしてそんな最高峰の大会で優勝したのはマヂカルラブリー野田さん。凄すぎる。M-1、キングオブコント、R-1、トリプルファイナリストという前代未聞の大偉業をこなしてるのに、優勝までするなんで。もうお笑いモンスターだ。最高にかっこいい。面白いって最高にかっこいいよな。


そしてそんな173時間生配信のメインのビッグイベントを控える中、僕も人生のビッグイベントを迎えていた。カサグランデ生配信を観ているグランダーはもちろん、仕事仲間の周りの人にも内緒で、僕は半蔵門にあるTOKYO FMに向かっていた。とあるラジオ番組の生放送。ラジオブースに入り、席に座る。ブースの奥のガラス越しに沢山の大人たちが見える。ヘッドフォンをつける。番組は始まり、出番はすぐにきた。さっきから胸はドクドクと脈打って、心臓の音がマイクに通るかと思った。

「SCHOOL OF LOCK!4月から新校長をやります、坂田です!!」
 


あの景色を僕は多分はっきりと、これからもはっきりとずっと覚えてんだろうなぁと思う。


15年続く歴史ある、偉大な番組のメインMC、未来の鍵を握るラジオの中の学校の、校長になった。


4月1日から、毎週月曜〜金曜の夜10〜12時。
全国38局でオンエア。年に1、2回深夜の番組に出れたら万々歳の絶賛売れてない若手芸人の僕からしたら、到底予想だに出来ないとてつもないことだ。
しかも、新教頭はGENERATIONSの小森隼さん。おいおいマジかよ。僕のさえない人生じゃ到底交わることないと思ってた。今、文字にして書いても嘘なんじゃねえかな、ドッキリなんじゃねえかなと思ってる。それくらい破壊力ある文字の連続だ。

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しかもそのあとの同じくゲストで来ていたのが「ゆず」だ。


あのゆずのお二人と、挨拶することが出来た。中3の時、地元の友達6人で電車で1時間半かけてマリンメッセ福岡までライブを観に行った、あの、ゆずの2人が目の前にいた。
そのゆずの2人から手渡しで、「新校長、これよかったら聴いてください」と新しいアルバムを二枚貰った。脳みそが追いつかなさすぎた。僕も良ければどうぞと、自分の小説を渡そうと思ったけれど、緊張しすぎて渡すどころか「は、、はい!あ、ありがとうございます!!」とお礼を言うので精一杯だった。
だってそりゃそうだよな。多分わかってくれるであろう、地元の中学のあいつらに自慢しよう。これは一生わかってくれるに違いない。だって、そうだよな。


15年。とんでもない年月だ。偉大な歴代の校長、教頭、偉大なミュージシャンや俳優の方々、スタッフさん方、そしてリスナーの生徒たち。すでに誰かの人生の一部に紛れもなくなっていて、それはこれからも続いていて。それこそ全ての、今まで関わった全ての人たちの想いを繋いで、この学校があること。想像も出来ないほどの沢山の愛と絆で結ばれて存在するこの番組に。重圧は勿論果てしなくあるけど、それよりもなんだか、少しだけドキドキが勝ってる。


なんでだろうなぁ。多分、とても嬉しいからなんだろう。相方の信清は、めちゃくちゃ喜んで応援してくれた。マネージャーから僕らに報告があった時、僕より声出して喜んでくれた。こいつはこういう時、本当にずるいんだよな。だから僕は敢えてスカしてカッコつけるしかなくて、まあまあまあ、みたいに。だせえよな。そんでズルいよなやっぱこいつは。めちゃくちゃありがたいんだよ本当に。



母ちゃんも父ちゃんも。家族も、周りの芸人仲間も、みんな良かったなと喜んでくれて。頑張れよと応援してくれた。それが本当に嬉しかった。まだはじまってもないけど、なんだか本当に、芸人なってよかったなと思った。みんなが、好きな人たちが喜んでくれる顔は嬉しい。それしかないんだよな、本当のところは。



番組の終わりで、とーやま校長から、僕にとっては大先輩の遠山さんから、最愛の言葉をいただいた。


「全ての生徒と、ひとりの生徒を」


たったひとりの、目の前の生徒のことだけ考えるんだよ。そう優しく教えてくれた。


学生時代、真夜中の秘密基地から聞こえる声。
後輩にもレギュラーを取られて悔しくて泣いた夜。好きな娘に5回告白して、5回フラれた夜。世界でひとりぼっちだと思った夜。僕のどうしようもなくかっこ悪い青春を、思春期を、救ってくれたのはいつだって、僕ひとりのために、僕ひとりのために届けてくれるような、どうしようもないほどのお笑いとロックンロールで。深夜ラジオで。とてつもないほどの愛と優しさと覚悟で。


やっと返せる時がきた。恩返し出来る時がきた。



10代のみんな、遠慮なく、ドンとぶつかってきてほしい。最初は上手く出来ないかもしれないけど、なんも上手く答えることが出来んかもしれんけど、全力でいく。生命振り絞って全身全霊でいく。だから君も安心して、全力でぶつかってきていいかんな。


一緒に笑って、一緒に悲しんで、一緒に戦おう。夢中なことに、夢中になれるように。


君のどうしようもない夜を、助けたいし、肯定したいし、君の背中を押せる言葉を届けたいし、僕らも貰いたいし、一緒に燃えてぶつかって、笑いとばして。
全部抱きしめて、一緒にこのかけがえのない一瞬のような青春を駆け抜けていこう。約束だ。


あなた方も、僕らみんな、今は踏ん張って、やれることやって、守るものしっかり守って、しんどいけど、助け合っていこう。そんでよく寝てよく食べてよく手洗いうがいしてよく笑って、そんで全部笑い飛ばしていこう。きっとまたすぐに会えるよ。


そうこう言ってたら、またもや夜が明けた。
お腹が空いた。カレーを食べよう。なんだよ、痩せるチャンスかと思ったけど全然痩せらんねえよ。しょうがない、笑って許してほしい。てか173時間生配信の時も、スクールオブロックの発表の時も、実は左胸のろく軟骨が折れてた。めちゃくちゃ胸痛いなーってずっと思ってて、病院行ったらちゃんと折れてた。それをどうやって折ったのか酔っ払って覚えてないんだから馬鹿すぎて嫌になるよ。でも頑張って173時間やり通したから、本当に笑って許してほしい。頼むよ本当に。


いつか世界がうんと良くなったら、みんなでカレーパーティーやろう。約束だ。まあ、またもや僕は作ってもらうだけなんだけどさ。

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読んでいただきありがとうございます。読んで少しでもサポートしていただける気持ちになったら幸いです。サポートは全部、お笑いに注ぎ込みます。いつもありがとうございます。言葉、全部、力になります。心臓が燃えています。今夜も走れそうです。