寒波にやられている

阿佐ヶ谷・中杉通りにむっちゃいいアパート?マンション?があって、それの家賃が約12万円。いつもなら、ハイ、12万円ですか、すみませんね、私のような部外者はおさらばさせていただき、うちで砂利を数えてきやす、と退場していくところなのだが、最近は元気がないので、12万円、もしかしたら住めるんじゃね?という謎の希望で、その物件の情報を見続けている。今の家賃が8万5000円、そこから12万円の家に住むとなるとほとんど倍の額となるし、こないだ4万円の外套を買ったときだって片腕をもぐような苦しみだったというのに毎月12万なんて到底無理なのだが、しかし、12万、別にいけるんじゃね?という希望がどうしても捨てられない。

高級車や腕時計、高級ブランドのスーツだの財布だのはくだらないし、フィットネスジムだのにも興味は起きないのだが、住居に関してはとても関心がある。金持ちになって良い家に住みたい、他に何もいらないから良い家に愛する人と住みたい、そこで銀行を襲う計画でも立てたい。家賃12万円の家に憧れるのだって無理はない。なんてったって阿佐ヶ谷だし窓から緑が見えている。冬の朝、自分だけの屋上で温かいコーヒーを飲めたら、どんなに良いだろうか。叶うはずもないが、ここに記しておく。

次いで、スマホを捨てようと考えている。いらない。スマホがないことで起こる苦しみなんて、スマホを持っていることで起こった苦しみと比べれば屁でもない。あまりに日常生活に支障をきたすのは分かっているし、周りの人間にも多大な迷惑がかかるだろうからなかなか踏み切れないのだが、毎日スマホの画面を7時間見ていると知った今、こんなもの持っていたくはない。スマホのない生活、想像してみるとよだれが出る。人に会おうと思ってもなかなか会えない、伝えたいことがあっても伝えられない、分からないことがあっても調べられない、この苦しみに、今の苦しみを解消する何かが眠っているのだと、そう信じている。今、俺はあまりにすべてが分かりすぎ、そして分からなすぎている。スマホのせいで右脳も左脳が混ざっている。人間の身体だって、スマホを見るように作られていないはずだ。知らぬ間にダメージが蓄積され、ある日突然に血液が凝固するかもしれない。俺の幸せに、旅や美味い飯が登場することはあっても、スマホが登場することはない。捨てる準備を整えて整えて、捨てる瞬間が来たらみんなに見てもらって、気持ち程度にお礼を言って、バキバキに踏みつぶして、それでおしまいである。冬到来、俺はおかしくなっている。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?