青春18きっぷ、贖宥状

この2年、ジョルダンの乗り換え検索サービスに非常に助けられている。旅に出たい、しかし飛行機や新幹線などといったでくの坊には乗りたくない、との思いで「川越駅から山寺駅」と検索をすると、飛行機や新幹線を使うこと前提の道筋が表示されてしまい、非常に気分が悪い。移動を普通列車だけに絞って検索することはできないものか、そう試行錯誤していると、ジョルダン乗り換え検索ではそれが叶うと知ってしまった。

ジョルダン乗り換え検索によれば、川越駅から山寺駅まで、普通列車のみの利用で13時間37分とのことらしい。乗り換えはたった5回。案外、行けてしまうものだ。しかも、水上を経由してくれる。以前、新潟に旅行に行ったとき、途中下車した水上は色々と印象深い土地だった。一面に雪が積もっていて、雪合戦に興じ、老夫婦が経営する純喫茶に入り、一生来ないカレーを待った。またあの喫茶店に行って、カレーを注文してみることにする。前回は真冬だったから、指先がかじかんでうまく動かなかったのかもしれない。暖かい時期に行けば、きっと料理の提供だって早いはずである。

山寺…。行けてしまう…。片道13時間37分…。交通費は9,640円とのことだが、青春18きっぷを使えば相当安上がりだ。行ける…。余裕だ…。何なら、片道で一泊してもよい。どこか、知らない街の民宿で…ああ、山寺…。行けてしまう…。食事代も合わせて、総額20,000円もあれば、行って泊まって帰って来るくらいできるだろう。

この”行けてしまう”というのは考えものである。旅って、銀行強盗くらい、リアリティがない。時間がないから、お金が無いから、ひとりじゃ怖いから、あらゆる理由をつけて、これまで隅に追いやってきた、しかし確実に脳内に存在し続けているのが旅である。行けてしまう、輪郭を帯び、実体を持ってしまう、選択できてしまう、というのは、なんとなくおそろしい…。ジョルダン乗換検索、旅に輪郭を持たせる悪魔のサービスである。もしかして、俺に、「このとおりに乗り換えろ」とでも言いたいんじゃないのか、ジョルダン乗換検索…。


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