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どうしてアポなしで牧場に行ってはいけないのか?

最近アポなしで牧場に行かれている方が増えているということが問題になっています。なぜアポなしで行ってはいけないのか?元生産牧場のスタッフの視点から解説させて頂ければと思います

・ほとんどの牧場さんは観光牧場ではない

牧場というと、牛や羊や馬などいろいろな動物がのんびり過ごしているイメージをお持ちの方もいるかもしれませんが、競走馬の牧場はとてもシビアな環境で運営されています。

生産牧場のスタッフの方は早朝に起きて(5時~6時)飼葉を付けて、馬たちを放牧。少しの休憩を挟み馬房掃除に入ります。そして昼休みの後に馬房を整備して、飼葉を作ってお馬さん達を集牧します。集牧後にブラッシング、馬体チェック等々...そのほか空いた時間は牧場施設の整備などに使うので余裕な時間があるかというと殆どありません。

私も実際にスタッフ時代にファンの方を案内したことがありますが、ちょうど馬の餌づくりの時間で、手を離せないこともあり「どうしよう...」とあわあわしてしまいました...しかし幸いにも見学者さんの方は10年前から牧場に来られていた方なので、私の目に見える範囲で見学して頂き、馬が近づくと自ら離れて頂いたりと、私も安心して作業に当たれ、無事一日の作業を終えることができました。

牧場によりけりですが、本当に生産牧場さん、育成牧場さん、スタリオンさんは時間の無い中で、ファンあっての競馬ということで開放して頂いています。

その牧場さんのご厚意を無駄にしないためにも、まずは見学を受け入れているかどうか、事前連絡が必要かどうか、確認されてみてください。

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・功労馬がいる乗馬クラブは?

確かに生産や育成に比べ、乗馬クラブさんは気性の大人しいお馬さんたちが多いのでスタッフの方に余裕があると思われるかもしれませんが、乗馬クラブさんも同じぐらい大変です。お客さんを乗せるわけですから、事故が起きないように随時馬の様子をチェック。短い時間で繋養馬を放牧に出したりと、タイトなスケジュールで運営されています。その中で乗馬ではなく見学のみで来られた方のために時間を作って案内していただけるのは、乗馬クラブさんの最大限のご厚意というのをご理解いただけると幸いです。

・疫病感染、パンデミックのリスクがある

※昔の知識なので間違っていたらすみません...

これは馬だけの問題ではないんですが、防疫に関してはどの牧場さんも神経を尖らしています。あまりないとは思うのですが、厩舎に入って頂く場合は必ず石灰等で消毒して頂いてから馬房に入って頂きます。それをすることにより繁殖牝馬であれば”流産”の危険性を低減することができます。

流産と聞いて「そんな大げさなの?!」と思われるかもしれませんがそれだけ大げさなんです。例えばAの牧場で流産を起こす菌が流行ると、周りの牧場さんは自分のところにその菌が来ないかとても警戒されます。

それだけピリピリしてる状況でアポも取らず知らない人が牧場に来ると...もしその人が他の場所で流産を引き起こす可能性がある菌をもって勝手に繁殖牝馬と触れたら、そしてその繁殖牝馬がほかの繁殖牝馬と触れたら...最悪の場合牧場の牝馬が全滅する可能性もあります。

仔馬が1頭生まれるまでにかかる費用はまちまちですが、種付料が100万円として、牝馬1頭を1年間繋養するのに200万の合計300万円ほどかかります。もし5頭の繁殖牝馬が流産してしまうと1500万円の損失となり、牧場の存続自体が危ぶまれてしまいます。

そういう危険性もあることを十分ご理解いただきたいです。

その他にも持ち込んだニンジンを与えたり、道路沿いにある放牧地にいる馬に餌をあげるという行動も、病気の原因になるのでお控えください。

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・人馬共に怪我のリスクがある

馬はとても臆病な生き物です。いきなり知らない人が来ると
「誰だお前は!!!!!」となります。
いきなり自分の家に知らない人が来たら怖いですよね。
またお母さんであれば仔馬を守る為に威嚇するお馬さんもいます。
威嚇行動としては
・耳を絞る
・噛みつく
・蹴る
の3つが主な行動です。
耳を絞るのはいいのですが、噛みつくときは本気で噛みついてきます。僕も昔本気で噛まれたことがあるのですが、いまだに傷跡が消えていません。大人の手でそうなのですから、もし小さい子の手が噛まれたとなるととても恐ろしいことになると思います。

また蹴る行動に関してですが、人が馬に蹴られたら場合によっては即死です。威嚇のために蹴った場所が悪く、柵を蹴った時に馬側も足を骨折する可能性があります。最悪の場合は安楽死の処置を取らざるを得ないことにもなりかねません。

そのようなことにならないためにも、スタッフの方との行動が必須です。しっかりとアポイントを取り、牧場の方が同伴、もしくは監督できることを確認したうえで見学できるようにしましょう。

・そもそも今はコロナ渦の中

そもそも今はコロナです。牧場さんからしてもいきなりどこから来たか分からない人が来られる恐怖というのもあるかと思います。特に少人数で運営されている牧場さんは、牧場主さんがコロナに感染した場合、もし重篤化した場合、馬の様子を見る人がいなくなってしまいます。コロナでなくてもアポイントを取るのが人様の敷地にお邪魔するうえで当たり前の行為なのですが、牧場さんによってはお世話できる人が1人しかいないということも念頭にいれて見学するか否かを判断されてください。

・アポなしで行ける牧場はないの?

あるにはあります。
私が知っているところでは、北海道のビッグレッドファームさんと優駿スタリオンさん(記念館)がアポなしで行けます。しかし今はコロナ期間中ということもあり、見学を受け付けていないの紹介はまた機会があるときにでもさせて頂ければと思います。

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・最後に

馬は悲しいほどに脆い生き物です。昨日まで元気いっぱい走っていた馬が次の朝馬房を見ると亡くなっている。恐らく馬産地では日常茶飯事かもしれません。なので牧場さんサイドからすると、少しでも馬の生命に危険が及ぶ行為は避けたいということをご理解いただけるかと思います。

ですので牧場に見学に行く前はアポを取る必要があるかないか、まずは確認されてみてください。またコロナということもあり、アポイントを取る必要がないとHP等に記載があっても更新の遅れの関係でアポイントが今は必要になっている牧場様もあるかもしれません。保険的意味合いで競走馬のふるさと案内所様に確認されることをお勧めします。

競走馬のふるさと案内所様URL↓
https://uma-furusato.com/


最後まで読んで頂きありがとうございました。
殆どの方からすると当たり前のことかもしれませんが、その当たり前のことが守られなくると、どんどん見学中止にされてしまう牧場さんが増えてしまうかもしれません。私自身にも言えることなのですが、わかっているつもりにならず、常に初心に帰ってお馬さん達に会いに行っていただけると幸いです。

薄っぺらな知識で長々と書いてしまっているので、もし間違っている点があれば修正いたしますので、DMで教えて頂けると幸いです。

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