神様の成り損ね【試し読み版】

プロローグ


 暗闇のなか、シホは銃をぶっ放(ぱな)し続けた。
 セーラー服を着た仲間たちが、アサルトライフルを乱射する。光がパチパチはじけていた。火薬の臭いが鼻をつく。
 右手はグリップ、左手はハンドガードを持ち、フルオート射撃を繰り返す。撃つたびに弾とともに、光が発せられていた。スカートから、はしたなく太ももが出ている。気にしているよゆうはない。
 敵がどこにいるのかわからない。照明をつけたら、位置がバレて襲われてしまう。人であれば同条件で戦えるのだけど、相手は夜目が鋭(するど)くようしゃない。
 ――くそぉ! くそぉ! くそぉ! くそぉぉぉ!
 心の中で叫ぶ。
 周りで仲間の悲鳴が聞こえ、銃声が減っていく。恐怖がふくらんでくる。黒い壁におおわれているためか、広いと思っていた部屋が狭(せま)く感じる。
 獣の雄たけびが鼓膜をつぶす。
 ――なんなんだよ! あの化け物たちは! 今まで戦ってきたやつらと、ぜんぜんレベルが違うじゃないよっ!
 銃の弾が敵に当たっているかどうかなんてわからない。恐怖心が先立って引き金を押さえているだけだ。腰だめ撃ちなので精密さはなく、弾は乱れている。銃弾を数えることさえ忘れ、ただ撃つ。
 ――うわっ?
 背中に何かが当たった。あわてて銃を向ける。動かない。
 やってはいけないとわかっているけど、銃につけたライトを点灯してしまう。制服姿の少女が照らされた。ロングの黒髪や、ネクタイのついたセーラー服には見覚えがある。
 ――ミユキ……!
 声をかけようとして、言葉がつまった。
 ミユキの胸に、赤い液体が染みついている。腕や足が鮮血に染まっていた。
 制服の穴から血が噴き出した。糸の切れたマリオネットのように、ミユキは固い床に倒れる。目を見開いて、死体を見下ろした。仲間を殺したのは怪物ではなかった。穴から推測するに銃弾。
 私が殺したかもしれないという絶望感から、銃を下ろしかけたとき、何かが光った。
 ――ひっ?
 鋭(するど)い牙をむき出しニイィと笑った。歯の隙(すき)間(ま)から、色の違う仲間たちの髪の毛が唾液と一緒にたれている。愚行に気づき、あわててライトを消すと弾を撃った。手応えはない。
 ――くそぉ! くそぉ! くそぉっ!
 引き金をなんども押すけど、弾が出なくなった。
 装(そう)填(てん)できる予備の弾薬はない。意味することは簡単だ。
 終了。終わり。死。
 肩に、ぬめりとした液体が落ちてきた。
「☆%#! &+*っ!」
 喉をはげしく鳴らして悲鳴を上げる。
 どこかで、ヒツジの鳴き声がした。


試し読みはここまでです。


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因幡雄介

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