麻雀代走屋③結果が全て

「てめーこら。トイレが汚ねえぞ!」

Tさんから鉄拳を数発食らい前歯が抜けた。血の味がしながらも今日の戦場へ向かった。

今日は場が2卓立つらしい。依頼主はTさんの横の繋がりのUさんだ。麻雀打てるやつを貸してくれということでTさんはUさんから依頼を受けた。条件は変わらず勝ち分も負け分も3割負担。

ルールはサンマイーハン赤2枚ずつありありのデカピンだ。ハコテンで約60000円の支払いになる。

この頃には何度か出番をもらっておりYさんには及ばないものの、麻雀力も上がりある程度結果を出していた。

この日Tさんは行かず私とYさんだけだった。相手は例に漏れずお金持ちだ。

しかしその場のノリで卓に入ってない人達数名が外ウマを始めた。(外ウマとは、誰がトップを取るか見てる人達でお金を賭け合うこと)

Uさんはその日2卓分の外ウマ全て私とYさんに賭けていたらしい。

その日私の調子は一進一退で収支はチャラぐらいだったがあと3半荘で場を閉めるとなった時のこと。

東発親番で連荘を重ね、持ち点は81000点だった。

東発
私親番81000点
南家4500点
西家4500点

ここは2人とも飛ばしてかっぱぎたいところ。しかし南家が5巡目に先制リーチをかけてきた。私は8巡目にピンフドラドラでテンパイした。ここは2人飛ばして飛ばすことでもらえる祝儀を取りに行くため危険牌を切って追っかけリーチした。状況判断として西家のリーチだったら私は降りる余地があった。南家のリーチだったので追っかけリーチをした。

この時考えることは放銃した際の次局の状況を把握しておくことだ。南家に8000の4本場12000点を放銃したときと西家に同じ放銃した時を仮定して考えてみる。

まずは南家のリーチに放銃してしまった場合。

次局東2局
西家私69000点
親番16500点
南家4500点

親はマンガン以上をツモアガリすると南家が飛んでしまうため私からデバサイを取らないとトップになるのは難しい。マンガンやハネマンをツモってくれるのであれば私はトップなので問題ない。親番でアガリに対して規制がついている状態になるのだ。親番を捨てて南家にアガってもらうぐらいの事をしないといけないがそれはそもそも自分のラス率が上がるだけでやる人はまずいないし西家の私にアガられたらまるで意味がない。つまり次局親は私がトップをとるための味方になり得るのだ。

では西家のリーチに放銃した場合はどうだろう。

次局東2局
西家私69000点
親番4500点
南家16500点

となる。親番は南家から18000点はアガれないが先ほどよりも規制が少なくかなり自由に打つことができる状況になる。この場合もし親に9000オールのハネマンなんてツモられたらどうだろう。点棒がフラットに近づきこのあと捲られる可能性がそこそこある点棒状況になる。南家はこの局私がトップをとるための味方になり得るが親を味方につけるのと子供を味方につけるのでは大きな違いがある。

降りる決断をしても問題のない局面ではあったが飛ばすことで得る祝儀も大きいためこう判断した結果東発かっぱぎの追っかけリーチをした。残念ながら南家に放銃となってしまった。8000点の4本場12000点で先ほどの状況になった。

次局東2局
西家私69000点
親番16500点
南家4500点

悪い状況ではない。南家がアガれない場合は高確率で飛ぶことになりそうだ。

と思っていると親が第一打目に赤5p、第二打目に6sを切り飛ばしてきた。様子がおかしいなーと思っていると第三打目に発を切ってきた。

あれ?もう余ってる?七対子なら赤5pは第一打目には普通切らないよな。なんて思っていると4巡目親が九万を勢いよく手元に叩きつけた。

24000オール。

呆気にとられながら24000点と祝儀の50000円を払った。

そのあと私はトップをとることなく収支は-140000円だった。Yさんはほぼチャラで終わったようだ。

帰る間際Uさんに

「81000点持ってたのに放銃して国士無双ツモられて捲られるなんて詰めが甘いだろ。外ウマで50万負けたわ。」

と言われた。麻雀は1日単位で見るものではなく分散を受け入れ長期的に得を重ねて結果を出すものだ。今でも東発の追っかけリーチは打つべきだと思っている。しかし依頼主からしたらそんなものは関係ない。その日の結果を欲しがる。

Uさんに負け分の3割である47000円を支払って帰宅した。

帰ってからTさんに結果を報告すると

「また勝てばいい。Uには俺が電話しておく。」

と意外と優しかった。

一生懸命打って負けるのは仕方ないことだがいつでも気持ちのいいものではない。自分のいる世界は結果が全て。結果を出せなければ居場所は無い。

もっと強くなるんだと改めて誓い缶ビールをグイッと飲むと前歯の抜けた跡に強烈な刺激が走った。

つづく

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