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Ep3. もしもジンとピンガが親子関係だったら【ジンピン親子if】【名探偵コナン妄想捏造小説】


コペンハーゲン編です。


登場人物紹介


コードネーム:ピンガ(まだピンガじゃない)
本名:アラン・ユール(Allan Juhl)(勝手につけた)
 本作の主人公。

中学生になりました。
前髪センター分け、
後ろはお団子作って下に髪を垂らしている。
目はもうちょい青い。
身長165センチ、体重50キロくらいの細身。
まだまだ成長期です。

アンナ・ユール(Anna・JuhI)/オリジナルキャラ
 アランの母親。故人。

コードネーム:ジン
本名:不明(黒澤陣という名前は明かされている(おそらく偽名))
 黒の組織の構成員。

コードネーム:ラム
本名:不明

コードネーム:ベルモット
本名:シャロン・ヴィンヤード

 アランの育ての親たち。

※戸籍についての情報が出てきますが、確かな情報ではないので暖かく見守ってください。(笑)

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 アランはラムから親に関する情報を受け取り、1人でコペンハーゲンへ向かった。

 彼の最初の目的は戸籍を調べることであり、そこから父親の名前を特定するつもりだった。

 アランは、戸籍を調べに行って何らかの手がかりを見つけることを望んでいた。

 彼は祈りながら、デンマークへ、そしてコペンハーゲンへと向かった。


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コペンハーゲンに着いたらすぐに市庁舎へと向かった。


 戸籍を調べられる課に行き、名前を名乗った。

「アラン…アラン・ユールです。199○年生まれの…」

「今お調べしますね。」

 アランは、昔話していたデンマーク語を思い出し、なんとか日常会話はこなせるようになっていた。
 しかし、故郷の言語はろくに覚えておらず、自分自身や親についても全く知らないことに気づき、悲しみに包まれていった。

「アランくん、お待たせしました。これかな?」

 受付の女性がアランの戸籍謄本を持ってきてくれた。

 アランは乱暴に受け取り自分と親の情報を確認した。

「…お父さん、いないんだね…。」
「みたいですね…」

 予想通りなのか、あるいは期待しすぎたのか。

 父親の情報を得るため、コペンハーゲンまでやって来たが、父親の名前が空欄であることを知り、肩を落とした。

「あと、アランくんは二重国籍みたいだね。」
「…そんなこと、俺にとっちゃどうでもいいんです。…こっちに来れば父さんに会えると思って来たのに…」

 母のアンナが既にこの世を去っていることを戸籍で改めて知り、アランはますます沈んでいった。

 母との思い出はごくわずか。彼が育った組織の冷たい世界では、親代わりの構成員はいたものの、そんな間柄で愛情などは生まれようがなかった。
 そのため、アランは今この現実を知り、自分の本当の親に会いたいという渇望が強くなっていった。

「…これから、お父さんを探すの?」

 受付の女性がアランにそう聞いてきた。

 アランは泣きたい気持ちを抑え、返事はせずに深く頷いた。

「他に、何かヒントがあれば協力するよ?わざわざ日本から来てくれたんだもんね?」

「…ありがとうございます。」

 親切な受付の女性にダメ元でホテルの情報を聞いてみたが、分からないと答えが返ってきた。

 ホテルの場所と、戸籍にかかれている自宅があったであろう住所に行ってみるしかない。

「だとすると観光課かな、あっちなら地図とかホテルの情報を得られると思うよ?」
「…ですよね、ありがとうございます。」

 最後に戸籍謄本のコピーをもらい、戸籍課を後にした。

 観光課に行きコペンハーゲンの地図をもらった。

 自宅の住所を確認したところ、市庁舎からそんなに遠い場所にある訳ではなかった。

「あの」
「はい、なんでしょう?」

「マークにイルカが入っているホテルってありますか?13年前に親がそこに泊まったみたいで…」

 ホテルの名前ではなく、マークで調べろなんて話は聞いたことがない。

 そこで、受付の男性に尋ねたが、彼は一瞬困った顔をした。しかし、彼はすぐに他の職員に声をかけ、そのホテルが存在するかどうかを調べるように指示した。

 アランは2、3分待ったが、職員たちはそのようなホテルは存在しないと報告した。

 アランはそんなわけない、と怒りを抑えるのが精一杯だった。彼は職員たちに噛み付くところだったが、10年以上前の話をしていることを思い出し、大人しくなった。

「…ごめんね、協力出来なくて…」
「…いえ…」

 アランが諦めて帰ろうとした時、奥のデスクからとある男性職員が1人、受付まで歩いてきた。

「ボウヤ待って」

 呼び止められたアランは振り返り、手招きしている職員の所まで戻った。

「13年前って、その時ボウヤはいくつなんだい?」
「今12歳なんで、俺が産まれる前の話です。」
「親が泊まったって言ってたよね?」
「はい…」

 地図を貸して、と言われて、机にコペンハーゲンの地図を広げた。

 その職員は地図を見てすぐ、細い路地裏のような場所を見つけ指を指した。

「ここ。もしかしたらこの辺にあるかもしれない。」
「え?でも、さっきはないって…」

 どうして、と一瞬考えたが、産まれる前に親が泊まった、ということを考えたら、答えに辿り着くのは簡単だった。

「ここで調べられるのは観光ホテルやビジネスホテルだけだ。それ以外のホテルについてはここでは取り扱ってないだけだ。
 親が泊まったというのならボウヤでも想像つくよな?この意味、分かるか??」

 子供の作りかたとか夜の営みのやりかたは、知識としてしか頭に入っていなかったが、そういうことはそういうホテルで行為が行われる、というその発想に至るのには少し時間がかかった。

「13年も前なら潰れちゃってもうない可能性もあるけど、行ってみる価値はあると思うよ。」
「…ですよね、ありがとうございます。」

 

アランは市庁舎から得た情報を頼りに、まずは自宅があったであろう場所に足を運んだ。


 そこには古いアパートが建ち、懐かしさを感じさせる建物だった。アランは部屋番号を確認したが、そこには全くの別人の名前が記されており、自分が住んでいた形跡は何も無かった。

 試しに部屋の前まで足を運ぶと、中から老夫婦の声が聞こえた。アランは迷惑だと分かっていながらインターホンを鳴らしてみた。案の定、出てきた老夫婦はアランを見て困惑していた。

「…以前、ここに住んでたんで寄ってみただけです。突然来られても迷惑ですよね、すみません…。」

 部屋の中をちらっと覗き込むと、懐かしい感じがした。そこには幼かった自分と母親との温かい思い出が蘇ってくる。

 部屋を見て感じた寂しさと悲しさを心に秘め、アランは部屋を後にしようとした。しかし、老夫婦のおばあさんはアランを見て何かに気付いたようで、「ちょっと待ってて」と部屋の中に消えていった。

 玄関には、おじいさんとアランの2人きり。

「ボウヤ、もしかしてお母さんと一緒に住んでた…?」

 おばあさんが写真を一枚手にもって玄関に戻ってきた。

 受け取った写真には、まだ幼かった頃のアランとアンナの2人が写っていた。

「昔、片付けをした時に、床の隙間に挟まっていたから取っておいたのよ。私たちが入る前は母子が住んでいたらしいけど突然いなくなったみたいでしばらく空き家だったみたいなの。この写真のこの男の子、これボウヤじゃない?」

 写真の裏には”アラン、4歳”と書いてあった。

 表に返し、まじまじと写真を見る。写真を手にしているアランの目には涙が溢れていた。

 この部屋の懐かしさと、写真で母親に会えた嬉しさと、ずっと母親に会えなかった寂しさと、もうこの世にはいないという現実と悲しさ。

 アランは、写真の中に映った過去の自分や、失ったものを思い出すことで、胸が締め付けられるような感覚に襲われた。そのため、涙が止まらなくなり、泣き崩れてしまったのだ。

 老夫婦は、アランの感情を察し、そっと彼を包み込むように彼を静かに慰めた。

 老夫婦はアランが落ち着くまでアパートで面倒を見てくれた。

 気づけばちょっと陽が傾きかけた夕方前。

 アランは自宅があったアパートを後にし、観光課で言われた路地裏のホテル街へ足を運んだ。

 建物が古く、マークにイルカが描かれているホテル。

 ちょっといかがわしい雰囲気にドキドキしながらも、ホテルの入口を一軒一軒まわっていった。

 ホテルを見て回って数軒目。もう潰れてしまっているのでは、と半分諦めかけていたその時、アランの視界にイルカの姿が目に入ったように見えた。

 ホテルの外観を見る限り、古びた印象はない。むしろリニューアルオープンをしたかのような綺麗な外観となっている。

 門に掲げられたエンブレムにはイルカが描かれており、アランはこの場所が自分の探していた場所であると確信した。

 真実を知る決意を固め、アランはホテルの入り口をくぐった。


 ホテルの扉を開けた瞬間、そこに漂う雰囲気はまさに別世界だった。不穏な、あるいは危ういとも言える、異様に甘美な空気が辺りを包み込む。
 その様子に、アランは少し耐えがたい印象を受けたが、しかたがない。

「いらっしゃいま…」
「…どうも……」

 アランは、自分がまだこのようなホテルに入るには年齢が若すぎると知りつつも、勇気を振り絞って受付に尋ねてみた。しかし、受付の女性は固まってしまった。それは当然のことであった。
 アランは未成年であり、このような場所には立ち入ることができないのだ。

「…ボウヤ、入るホテル間違えちゃったかな?ここはボウヤが来るような場所じゃないよ。帰りな、お父さんとお母さんは?」
「その親を探しにここまで来たんです。」

 受付の女性は、アランが何を言っているのか理解できずに困惑した。

 アランは自分はただホテルに宿泊するために来たわけではないことを説明した。

「ここに10年以上勤めている方っていませんか…?」
「…いるけど…」

 受付の女性は椅子に座ったままその場から数10センチ後ろに下がり、ある職員の名前を呼んだ。

 呼ばれて出てきたのはやや大柄な男性職員だった。

「何?俺に何か用??」

 アランは無愛想なその男性に聞きたいことを直球に聞いた。

「13年前にここに泊まった俺の親のことを知りたいんです。」
「13年前!?んな前のこと覚えてねーよ!」
「どんな些細なことでもいいんで何か知っていることがあれば教えて欲しいんです!」

 アランは、受け取ったばかりの写真を、男性職員に見せながら言った。

「この写真よりも、もう少し若かったとは思いますが、俺の母親です。
 この顔に見覚えありますか?もしかしたら、誰か男性と一緒だったと思うんですけど、何か覚えていますか?」

 男性職員は写真を見てうーん、と少し考え込んだ。思い出そうとしている様子だ。

「ボウヤ、どこから来たの?」

 考え込んでいる男性職員を他所に、受付の女性職員が小さめの声でアランに話しかけてきた。

「日本です。」
「日本からわざわざここまで!遠かったでしょう?」
「まあ…それなりに(笑)」
「でもなんでお母さんのことについて調べてるの?行方不明とか?」
「いえ…どちらかというと探しているのは父親の方で…」

 アランはそう言ってここまで来た経緯を話した。自宅に行ったこと、戸籍謄本を確認したこと、そもそもこの情報は育ての親から聞いたということ…。

「…大柄な黒いロングコートの銀の長髪の男…」

「え?」

 ふとした合間に男性職員がそうポツリと呟いた。そして思い出したかのように別室に行き、何かを探しに行った。

「ボウヤ、それってちょっとおかしくない?」
「え?な、何が…?」

「戸籍を調べるのはまだ分かるけど、なんでその育ての親が両親が泊まったホテルのことまで知ってるの?まるでご両親のどちらかから聞いたみたいじゃない。もしかしてお父さん、ボウヤの近くにいるんじゃないの?」

 アランはそれを言われてたしかに、と納得した。

「何か複雑な理由があって父親だって名乗れないんじゃない?だからこんな回りくどいやり方で探させているんじゃないかしら…」

 女性職員の言う通りだった。
 なぜこれまで気づかなかったのだろう。

 確かに、男性職員が話した父親と思われる男性の特徴にアランも覚えがある。

 組織の幹部メンバーの中に、そうした特徴を持った男性がいるじゃないか。
 そして、アランが日本に初めて来た時、近くにその銀髪の男性がいたような気がする。

 それを踏まえてこれまでの情報を頭の中で整理すると、ある仮定に辿り着いた。

 しばらくすると男性職員が大きなバインダーを持って受付に戻ってきた。

 13年前の利用客のリストだ。
 アンナの名前、もしくは日本人男性の名前がないか一緒に探した。

「黒澤…陣…、この名前知ってます…」

 アランはとある日本人男性の名前を見つけた。

 男性職員が言っていたアンナと一緒にいたという男性の特徴と、見覚えのある名前の男の特徴が一致しており、アランは震えた。

 まさか、そんなまさか。
 アイツが自分の父さんだなんて信じたくない。

 アランは頭の中でそう思っていた。

「ボウヤ、大丈夫?心当たりのある人がいる…のね?」

 アランは信じたくないがゆっくり頷いた。

「もしかして俺は浮気現場の目撃者なのか!?」
「ちょっとあんた、子供の前でそういうこと言うんじゃないの!!」

 目の前でそんなやり取りが交わされていたが、アランの耳には入ってこなかった。


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