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蜜 漬~♂蜂先生の女王口説き

「・・・今夜は、嬉しかったです。勇気を出して、お誘いして良かったです」
「こちらこそ・・・、ご馳走様でした。美味しかったです」
「あの・・・、もう少し、お時間ありますか?」
「・・・少しなら」

タクシーに乗り込んで、ターミナル駅の方へ向かう。

「時間、大丈夫なんですか?」
「家の者も、今日は地方に出ていて、戻りませんから」
「少し、遅くなれそうなんですね?」
「・・・先生、なんか、嬉しそうですね」
「あ、そりゃ、そうですよ。・・えっ、あー、」

「お客さん、ターミナル駅外れでいいんですか?」
「えーと、外れ?ああ、外れ、ですね。はい」

 外れ、って、なんだっけ?なんか、聞いたような、あああ、と思ったら、ついてしまった。 

 再び、彼女の顔を見ると、気恥ずかしそうに呟き始めた。

「さっき、お話しましたよね。私、月鬼げっき症候群だって。実は、それが今日、解って、病院から、連絡を頂いて・・・」
「月鬼症候群・・・まさか、確定なんですか?」
「そうなんです。私もまさか、自分が罹患するとは思ってませんでしたが・・・」
「症状が出てるんですね」
「ええ・・・」

 彼女の顔が途端に曇り、涙が溢れ出した。あああ、この場所で、このタイミングで泣かれるのは、ちょっと・・・。

「あの、もし、嫌じゃなかったら、その、なんていうか・・・」
「はい、わかりました」
「え?」

 どうするとかではなくて、とにかく、落ち着かせて、話を聞こうと思って、彼女をいざなう。・・・ああ、もう、これは、言い訳にしか聞こえませんね。彼女も、この時ばかりは、気が動転していたのか、そういえば、先ほど、少し、杯が進みがちではあったし・・・。

 すんなり、部屋に入ると、我慢していたものが堰を切ったように、彼女は声を立てて、泣きだした。両手で顔を伏せて。

 ベッドに座らせて、話を聞くと、身体に『黒墨』の症状が出ていることが辛いという。そんなに酷いのか、と聞くと、首を横に振る。できた個所が嫌なのだと。先ほどの居酒屋の席では、話ができない内容だった。

「主人には、見せられないから」
「・・・そうなんですか?」
「だって・・・」

 身じろぎするような仕草で、彼女は胸の前で両手を組んだ。

「多分、ショックに思ってしまうから・・・」
「見られたくないんですね」
「多分、見たら、もう・・・」

 そういうことか。すごい、現役感だな。じゃあ、なんで、君、ここまでついてきてるわけ?

「見たら、もう、嫌がられて・・・」
「そんな、きっと、そんなこと、ありませんよ」
「そもそもの求めが、とてもレベルが高いんです」
「どういうことですか?」
「ずっと、綺麗にいてくれ・・・って」

 やっぱし、現役じゃないか・・・。なのに・・・いいのかな。今、ここにいて。

「それは、そういうだけで、許してくれると思うよ。病気なんだから」

 彼女は頑迷に、首を横に振る。

「そんなあ、僕だったら、そんなの気にしないよ」
「・・・」
「あ、いや、そんな、えーと・・・」

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