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絵になる美しい街並みを創造する為の粉本/杵築(きつき)/大分県杵築/「高低差がある街並みは美しく見える」を裏付ける事象


 国東半島の南東に位置する大分空港から、車で伊予灘と守江湾を望める杵築沿岸道路を西に25分程走れば杵築だ。杵築は木付頼直が応永元年(1394年)に木付城を築いたのが始まり。地名は木付と称していたようだが、徳川時代に城主となった松平氏が杵築と改め、廃藩置県のあった明治4年までの227年間、治藩した。当然、江戸末期の杵築の街並景観は伝統的建築群が連なり、それらは適度な変化と調和を織りなし、美しく輝いていたはずだが、ご多分に漏れず廃藩置県や以降の近代化により、一時期荒廃していたようだ。
 しかしながら、今では住民がその歴史的資産の価値を見出し、それらの維持保全、再生することで街の活性化を図っていることから、往事の面影が堪能できて嬉しい。
 この城下町の持つ魅力は他のそれと異なり土地の特色がそのまま形に表れていること。観光パンフレットの表現によれば「杵築城を中心に、南北の高台に武家屋敷があり、その谷間に商人の町が挟まれています。この凹凸のある“サンドイッチ型”城下町は杵築だけといわれています。」とあるように杵築は高低差のある街で、谷筋や尾根筋の商家や武家屋敷が連なる東西軸の街路に沿った街並景観も良いが、尾根筋と谷筋とを繋ぐ南北軸の坂道によって形成される街並み景観が特に良い。
   中でも有名なのが志保屋の坂から酢屋の坂を眺望するダイナミックなそれ。杵築では敷地の高低差を利用して街並みを美しく見せるスペースデザインの極意がそこかしこで見られる。

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