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絵になる美しい街並みを創造するための粉本/奈良・紀寺(なら・きでら)/奈良県奈良市東紀寺町/ 奈良の歴史風土を取り入れた街並 み

   

 我が国の伝統的建築で形成された古い街は味があり美しいのに、近代建築で形成され戦後の街並みはそうでもない。その要因は機能をそのまま形にするのが最も美しいとする戦後の建築教育の所以だろう。特に集合住宅にあっては直方体の住棟で形成された団地を数多く創出。結果として全国に画一的な街並み景観を創ってしまった。

 この流れに対峙する方向で私がデザインしたのが、奈良・紀寺だ。これも団地だが、画家が街並みを描くように、見所から奈良の街並みを彷彿させる一幅の絵に見えるよう配慮している。主な見所は建ち並ぶ住棟間に設けた街路から見られる街並み景観。一番のお勧めは導入部の東大寺大仏殿裏から二月堂に向かう参道のようなそれ。実際に実測調査し、模してデザインしたもの。前景の両側に連なる住棟を囲う塀、中景の集会所棟や設備棟、その奥のケヤキ林、更に奥に見える後景の高円山、これらで形成される街並み景観は美しく見える構図の基本形で、この街並み景観にお盆に見られる高窓山の大文字が重なれば最高だ。

 見所を創出するための拘りは、建築をデザインするのでは無く街並をデザインするという観点から、長い住棟を奈良町の町家が建ち並んでいるように分節して見せたり、勾配屋根や伝統色、むしこ窓、格子、万葉花木、等々の奈良で調査収集したデザイン要素を徹底的に採用したこと。

 この取り組みは奈良建築文化賞景観賞やグッドペインティングカラー賞の受賞に繋がっており、壁に窓を描く等の邪道とも言えるデザイン手法も日の目を見ることができている。

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