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#中間報告書_あたらぼ研究ノート05_スマートグラスを使うと、縄文時代の神明貝塚の魅力を最大限伝えることができるか?


◆実験の目的と背景

実験の目的は、国の史跡に指定された春日部市の神明貝塚の特徴や価値を、スマートグラスを使って、効果的に伝えることができるかどうか、伝えるためにはどうしたらいいのかを研究すること。
上記の目的を設定した背景は、現在、発掘調査は終了し、貝塚は埋め戻されており、貴重な発見の数々を、一般の人に伝えることが十分にできていないため。

実験の背景の詳細は、実験計画書をご覧ください。
https://note.com/super_otter264/n/n8947b5ff43de

神明貝塚については、春日部市公式ホームページをご覧ください。
https://www.city.kasukabe.lg.jp/kosodate_kyoiku_bunka/kyoikuiinkai/bunkazai_rekishi/9140.html

◆検証したいと思っていたこと

1.スマートグラスを使うと、ユーザーにどんな情報を伝えられるか?
2.スマートグラスを使うと、ユーザーはどんな体験ができるか?
3.上記の場合、どんなコンテンツやアプリが有効か?

◆研究活動の概要

<当初想定の活動概要>

大学のメディアテクノロジーの先生と協働で、史跡解説アプリの開発の方向性や、デバイス(スマートグラス等)、コンテンツを検討する。

  1. スマートグラスに表示するコンテンツの動きの面白さを5段階評価(=どんなアプリを使うとよいかを導き出す)。

  2. ユーザーがスマートグラスから得た情報量は、発信する側が伝えようとした情報量の何分の1か、クイズ形式で計測。

  3. ワークショップ等を開催し、想定ユーザーが求めるコンテンツ、アプリは何かアンケートを行い、ニーズを把握する。

<実際に行った活動概要>

1.T1の使い方(遊び)実験

(1)スマートグラスT1をtype-cの無いPC(Surface Pro3)に接続する方法を調査。

  • ACアダプタで外部から給電可能なUSBハブと、HDMI端子とType-Aを統合しType-cに変換するアダプタがあれば、接続可能と判明。

(2)T1とPCを接続して、仕事をする。

  • 普通にWord、Excel、PowerPointを使うことができた。

  • 細かい文字を見るのには辛いかな。

(3)T1で動画を様々な姿勢で視聴する。

  • 寝ながら見ると、廃人になりそうなぐらい没入した。

  • 特にThe Chemical Brothers のStar GuitarのMVをみると最高。

(4)T1とスマホ(arrows)を接続する方法を調査。

  • スマホにtype-cがあっても、画像出力には対応しておらず不可。

  • 安いスマホではだめなのね。

(5)T1とNintendo Switchiを接続する方法を調査。

  • ゲーム画面がT1のスクリーンの4分の1の範囲にしか投影されない。しかもモノクロ。

  • 子供にマインクラフトで縄文のムラを作ってもらったのに体験できない。残念。

(6)T1とGalaxyを接続する。

  • Type-cから画像出力と給電をしてくれるので、接続は非常に簡単で扱いやすい。

  • ごろ寝しながらThe Matrix Resurrectionsを見ると、自分がPlug-inした気分。

  • PCだとT1から音声が出るけど、Galaxyは出ない。スマホのスピーカーかBluetoothのイヤホンを使う必要あり。電車の中で見るにはそれでいいんだけど、どうすればいいのだろう。

(7) RICOH THETAで神明貝塚の現況を360°撮影し、T1で見る。

  • T1はVRゴーグルではないので、横を向いても画面は変わらない。

  • SurfaceやGalaxyなど、タッチパッドで操作すると、頭を横に向けなくても画面が動く。これって、スマートグラスの利点では?

(8)Galaxyに他市町の史跡アプリを入れて、TIで遊ぶ。

  • アプリはスマホ用に縦長の映像なので、横長画面のT1では画面の真ん中に小さく映るので迫力がない。残念。

史跡アプリをスマートグラスで見てみた_あたらぼ研究ノート03_スマートグラスを使うと、縄文時代の神明貝塚の魅力を最大限伝えることができるか?|もりやま (note.com)

(9)神明貝塚をドローンで撮影した映像を、T1で見る。

  • なかなかの迫力。ドローンを操作(操縦)しているような感じ。

(10) THETAで埼玉県指定無形民俗文化財やったり踊りを撮影し、T1で見る。

  • だいすけさんの所属する、やったり踊り保存会の練習にお邪魔した。

やったり踊りの練習を360°カメラで撮影_あたらぼ研究ノート02_スマートグラスを使うと、縄文時代の神明貝塚の魅力を最大限伝えることができるか?|もりやま (note.com)

  • 保存会の皆さんが輪になって踊っている中にTHETAを立て、360°の動画、静止画を撮影。

  • 静止画については、60分の1秒にも満たない一瞬にもかかわらず、踊っている人全てと、その周りの風景を見回すことができる。通常ではありえない感覚を味わえる。T1で見ると迫力が増し、さらに不思議な感覚になる。

  • 踊っている人全員が映っているため、所作がずれている人、間違っている人、ポーズが甘い人などを判別することができる。

  • 動画は音声も録音できるので、T1で見ると、画像と音声の相乗効果で臨場感が増大する。

(11)だいすけさんのお手伝い

  • 詳細はだいすけさんのnoteを参照してください。

「文化財のDX化#私の働き方実験 #中間報告書 」|Daisuke_san_sg (note.com)

  • 春日部市内の獅子舞の各保存会の練習にお邪魔した。

  • 獅子舞の舞手にT1をかけさせ、舞手自身が映っている映像を見させた。

  • 舞手は自身の後姿の様子を見ることができると興奮。

  • T1とスマホがあれば、リモート練習も可能であることを発見。

(12)専用レンズの装着

  • ビジョンセンターに制作していただいた専用レンズをT1に装着し、視聴。

  • それまでは、Nose Padをはずし、眼鏡の上にT1をかけていたが、安定しなかった。

  • Nose Padをいくつか試し、適正なものを装着すると、画面がしっかりと見えるようになった。

  • 専用グラス付きでT1をかけ、しばらくの後に、目が専用グラスに慣れてきて、映画の字幕も難なく読むことができた。

(13)T1の購入

  • 実験で借りるだけでは飽き足らず、T1を購入。

  • やっぱり、自分のものっていい。

2.史跡アプリの在り方の共同研究

(1)共同研究の開始

  • スマートグラスに限らず、ITで神明貝塚の特徴や価値を伝える方法を研究するため、日本工業大学と共同研究を開始。

(2)アプリに対する春日部市側のニーズの把握

  • カード法で市担当職員(自分を含む)のニーズの抽出、整理を行った。

  • あわせて、神明貝塚は300年間人々が暮らし続けた集落跡であるから、現代においても、人々が活動し続ける場所となるよう、それを促進するアプリにしたい。

(3)アプリに対するボランティアガイドのニーズの把握

  • 春日部市内のボランティアガイドに対し、アプリを使って神明貝塚の紹介を観光客に説明するとしたらどんな機能が欲しいか、カード法を使ってニーズの抽出、整理を行った。

(4)アプリの方向性の検討

  • 縄文人の生活を伝え、コンテンツが継続的に更新され、神明貝塚現地で人々が活動することを促進するアプリを目指すことにした。

  • コンテンツの抽出とそれを表現する機能とハードウェア、優先順位と制作順位(戦略)について、現在、検討中。

(5)独自アプリを制作しない方法の調査

  • 全国の既存の史跡アプリのほとんどに、OSの更新に追いつくことが難しい状況が認められた。

  • 神明貝塚では、独自アプリではなくWebXRをベースとすることや、Google Mapなどの既存のサービス利用、アプリ開発プラットフォームの利用を検討する。

XR総合展に行ってきました_あたらぼ研究ノート01_スマートグラスを使うと、縄文時代の神明貝塚の魅力を最大限伝えることができるか?|もりやま (note.com)

  • 独自アプリを制作する場合でも、UnityやBlenderなど、市の担当者が自分たちで制作、更新ができるソフトウェアについて調査する。

(6)吉野ケ里遺跡でのIT活用事例

  • 9/30に吉野ヶ里遺跡のデジタル活用のシンポジウムが開催され、オンラインで参加。

  • 発表者の株式会社とっぺんさんによると、発掘調査期間中から素材集め(撮影、スキャン)、配信を受託しているとのこと。

  • 映像配信は、YouTubeを使って4種で、ライブ配信、ハイライト映像、双方向、まとめの映像から成る。

  • 詳細は後日、研究ノートとして報告予定。

  • やはり、生、リアルタイムの力は強い。コンテンツが生きているし、視聴者への訴求力が大きい。

  • 神明貝塚でも発掘調査していた時(平成27、28年)に、ここまでやっておけばよかったと後悔。

3.地方系グループとの共同研究

  • 地方の魅力を伝える、という共通の目標から、杉澤さんと地方系グループを創設。

  • 毎週木曜日20:00から、0秒思考を用いたブレストを実施。

  • 杉澤さんの南伊豆町での活動は、自分が将来、神明貝塚を通してその地域でやろうとしていること、やってみたいことであると感じ、非常に参考になる。

【指定企画】Lenovo - スマートグラス 研究計画書 #私の新しい働き方 中間報告書|Reina*地方時々都会がちょうどイイ🌤️ (note.com)

  • 神明貝塚でもワーケーションを導入できないかな?とか、T1と関係ない想像へと発展中。

◆中間報告時点での気づきと振り返り

  • T1とかTHETAとか、新しいガジェットを試してみると、素直に楽しく、史跡と関係ない活用(動画鑑賞など)に多くの時間を費やしてしまった。

  • 史跡アプリについては、コンテンツの制作がとにかく時間がかかることが判明した。持っている写真や動画、図面にしても、それを加工する時間と、その技術を得るための訓練に多くの時間を要することが分かった。

  • 全国で史跡アプリが更新されない要因の一つかもしれない。

  • スマートグラスの利用方法について考えてると、どうしてもリモートでの使用方法や、人間が動かない状態での利用の方がアイデアを多く思いつく。例えば、入院病棟ではテレビを設置せずに、T1とWi-Fiを完備したほうがいいと思うようなことである。

  • その点、だいすけさんのアイデアは、舞という動きの中にスマートグラスを持ち込む点で、非常に画期的である。

  • 本実験の最終的な目的は、神明貝塚に人を呼び込むことであるから、スマートグラスを使って現地に人々を誘う方法や、現地でスマートグラスを活用する方法を検討したい。

◆まとめ

専門職であるため異動がく、もう20年近くも同じメンバーで仕事をしている。そのため、新しい知識や技術を取り入れることをしていない。
今回、あたらぼに入り、多くの異業種の方々と知り合い、話を聞くことができ、何か面白いこと、新しいことができそうな気になってきたことは確かである。

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