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ビルの隙間での物語【ジョジョの奇妙な冒険】

 皆さん、ジョジョの奇妙な冒険は好きでしょうか?絵柄がかなり特徴的で、癖があるので得意ではない方もいるかと思います。ですが、ハマる人にはハマる。それは、独特な台詞回しや演出、因縁などにあると思います。私は友達に勧められて1部から見た時、1部の最後でどこからともなく込み上げてくる感動に襲われました。その当時、ロードローラーで襲ってくるDIOやスタープラチナ、ザ・ワールドなどは多少知っていましたが、設定は何も知らなかったのでジョジョに対しては「昔のYouTubeではよく使われてたアニメ素材の一つ」というイメージしか持っていませんでした。1部を見た時、スタンドがなかったので少し物足りない感がありました。私の中ではジョジョ=スタンドみたいなものでしたから。それでも、最初の方は怒涛のネタラッシュ。あれもこれも、何もかもがネットのどこかで見たことのあるシーン、セリフ。よく、1部2部から見ると挫折しやすいので、3部か5部からが良い、と見ます。私は珍しい方なのか、1部からで大正解だったパターンです。
 なぜ感動が込み上げてきたか。それは、1800年くらいから始まった二人の男の因縁が、この先ずっと続くのかッ!という事に気づけたからです。なんて面白いんだこの物語は。ジョジョは常にディオとジョースター家の因縁で構成されてるんだな!と思いました。実際は、そうとも言い切れないのですが。そんなことはどうだっていい、この作品はずっと前から、因縁のきっかけは小さな、でも世界を巻き込む事になる、そんな話を作り続けてきた、という事実に、「なんでもっと早く観ようと、知ろうと思わなかったんだろう」となりました。
 絵柄も好きですが、それぞれのキャラの渋さ、かっこよさが好きです。誰が一番好きかと言われると難しいところですが、ポルナレフですかね。強すぎる。耐久力が化け物。

 4部ダイヤモンドは砕けない、には「The book」というスピンオフの小説があります。この小説があることは知っていましたが、作者の乙一さんは作風に癖があるとかなんとかで、一度別の小説で作風を掴んでから「The book」を読む、としました。私が選んだのは「失はれる物語」でした。この小説も良かったんですよ!!
 またどこかで感想を書きますね。

 そして、万全の状態でいざ、「The book」へ! 結論、面白すぎた。

 以下ネタバレ注意です。全て話すわけではありませんが、読んだ事のない方は是非、一度新鮮な気持ちで読んでいただきたいのでここで終わることを推奨します。









 他の表現があるだろうと言われるのは間違いないですが、私にはどハマりしました。3つの視点から描かれる、まるで接点を感じないそれぞれの話。ある出来事をきっかけに全てが繋がり、バラバラだったはずのピースが綺麗にハマった時、心の中で歓喜でしたよ。まずね、入りがいいんですよ〜 初手に、この作品オリジナルの登場人物が父親を殺すところから始まるんですけど、そこからちょっとジョジョっぽい。

 最初の方は、康一くんパートがしっかりジョジョっぽく、琢馬、千帆パートと明里パートは乙一さん味を感じました。琢馬に明らかな闇は感じたんですけど、あまり明里や大神照彦との関係性は掴めなかったなあ、といった感じでしょうか。
 後になるにつれてビルの隙間から始まった関係性が繋がっていくのがよかったです。
 キャラクターが割とメタ思考、メタ発言してたのが著者が違うならではだと思いますね。荒木飛呂彦が、4部の中で謎に包まれていたのを「正解はこうです」と示すのではなく、同じジョジョの読者である著者だから、自分なりの解釈をしていたり、小説を読んでる人と距離が近かったり。よかった。
 アニメや漫画は常に絵があるので想像力は要りませんが、小説となると挿絵を除けば文なので、かなり想像力を要しますよね。でもそれがいいんですよ。喋り方まで解釈は人それぞれ。だから、他の人と物語について語り合う時に面白くなる。

 戦闘シーンが素晴らしかったです。ミステリー要素はかなり期待していました。間違いなく面白いだろう。でも、まさか小説で戦闘シーンがガッツリ入るとは。原作と同じく凄みに溢れた戦闘でした。吉良吉影戦を終えてからの話だからか、億泰が本編より落ち着きがあるように感じました。音声がなく、文章だけだからかもしれないのですが。本編以上のクレバーさを出していました。
 相変わらず仗助は強いんですよ。そりゃあもちろん。
 一番驚きだったのは、琢馬のスタンド、「The book」があそこまで強敵だったことですかね〜
 ミステリー、謎解き的な要素を面白くするだけのスタンドだと思ってました。ここもジョジョっぽかった。一見弱そうな、戦うのには向いてなさそうなスタンドが、使い方次第では化ける。適材適所とどこかの吸血鬼さんも仰っておりましたが、その通りですね。琢馬じゃないとあそこまで化けないとは思います。なんせ送ってきた人生が結構悲惨ですから。

 ラストもすごかったですよ。あえて全部書くことでもないので書きませんが、うわあってなりました。このオチまでが琢馬の手のひらの上だったのかも、しれないですよね。結局最後まで琢馬の思い通りだったとしたら、彼は死に方まで選んで幸せだったのかもしれません。メリーバッドエンドでしょうか。千帆が本当にあれでよかったのかはなんとも言えないですけど。
 琢馬は生まれてすぐに母を失い、父とその愛人に捨てられる。きっと彼はその一部始終をスタンドで見てしまったのでしょう。そして復讐を始めた。結局、彼は父と同じく人を殺してしまった。だからあそこで死ぬことを選んだ。助かることはやめた。
 琢馬の子は、母となる千帆が育てる。きっと彼女らには運命とは遠い、明るい世界が待っているでしょう。
 始まりは真っ暗、出られるかもわからない絶望的状況でも、いつかは開けた世界へ行けるかもしれません。きっと明里は黄金の精神を持っていたことでしょう。杜王町には黄金の精神の持ち主が多いですね。早人くんもそうですよね。
 そんなことを、男の財産とビルの隙間から始まった物語を読み終えてから考えました。

 結論。面白かった。スピンオフはいいですね。
 以上。

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