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人生最悪のフライト乗継ぎトラブル~トロント空港で乗継ぎ便が消えて何度も最悪!と叫んだ日


長かった海外滞在中は飛行機で旅行や出張に出かけることが月に数回はあり、日常生活の一部でした。帰国してすぐにコロナ禍になり、考えたらもう3年近く飛行機に乗っていないことになるなんて、考えもしませんでした。フライトインフォメーションを確認する電光掲示板、飛行機を利用する場合は空港で必ず見ると思います。その電光掲示板に自分のフライトの情報がキャンセルの表示もなく、そもそも全く載っていないとしたら、どうしますか?

飛行機を頻繁に利用していると何回もトラブルに出会います。チェックインした荷物が乗継ぎ便に間に合わず、目的地に到着しなかったことは数多くあります。経験的には、出発遅延等で乗継ぎ時間が一時間を切り、ヒースロー空港、パリCDG空港、フランクフルト空港など大きな空港の場合によく起こっていたようです。特にヒースロー空港はターミナル間の距離が長いこともあり、荷物紛失で悪名高い空港です。荷物の遅延ならまだしも、機材トラブルで怖いしたことも何回かあります。ヒースロー空港からブリュッセル空港に向かう飛行機が滑走路を離陸に向かい全速力で進み、離陸寸前で突然急ブレーキがかかって止まり、心臓が止まる思いをしたこともありました。ブリュッセル空港から南アフリカに向かうエチオピア航空(機材が当時最新のB777で、アフリカのベストエアラインだった)の飛行機がエンジントラブルで滑走路から動かず、ゲートに戻ったこともありました。こうしたケースは、離陸前のトラブルで今思うと本当にラッキーだったと思います。不思議な出来事もありました。ニューヨークに住んでいたころ、メキシコに出張して、帰途メキシコシティー空港からJFケネディー空港に向かっていた、私が乗っていたフライトがなんと行方不明になったのです。当時ニューヨークは大吹雪で、メキシコシティー出発も確か数時間遅れたのですが、フライト自体は順調でのんびり機内食やワインを楽しんでいました。ところが、ニューヨークに到着すると、家族から電話が入り、フライトの情報が消えて到着時刻も分からず行方不明になっていて大変心配したとのことでした。航空会社の情報アップデート漏れだったのでしょうが、家族にとって見たらあり得ない肝を冷やすトラブルだったと思います。また、2010年にアイスランドの火山が爆発してヨーロッパのフライトが制限されたときは、SAS航空便で成田空港からダイレクトでコペンハーゲン空港に行くはずが、ストックホルム空港に迂回着陸し、ストックホルムからコペンハーゲンまで夜行バスに揺られて行ったこともありました。

これからが本題です。あれは、2017年7月、ブリュッセルからヒューストンに住む次男一家のところに遊びに行った時の事でした。ブリュッセルからヒューストンへは直行便がなく(ヨーロッパからの直行便はアムステルダム発のみ)、北米で乗り継ぎが必要です。前回、2015年に訪れた際はユナイテッド航空を利用し、往復ニューアーク空港経由だったのですが、帰途の便が出発当日の朝にシカゴオヘア空港経由に変更になり、ちょっとバタバタしました。そんな経験もあったのと、アメリカの航空会社はサービスが悪くあまり好きでないので、今回はトロント空港乗継ぎでブリュッセル空港からトロント空港はブリュッセル航空、トロント空港からヒューストン空港はカナダ航空の乗継ぎ便を選びました。ともにスターアライアンスに加盟している提携航空会社なので問題はなかろうと思っていました。

出発時点から若干のトラブルはありました。カナダ入国にアメリカのESTAに相当するeTA が必要なことを知らず(ブリュッセル航空からの事前連絡もなかったので分かりませんでした)、ブリュッセルで空港のチェックインで指摘されてから大急ぎで手続きをして(空港にはオンライン手続き専用の端末機がありました)バタバタしました。更にブリュッセル空港で30分ほど出発が遅れ、元々2時間ほどあった乗継ぎ時間が短くなりました。そしてトロント空港に到着してびっくりしたのは、空港でカナダの入国審査の後にアメリカの入国審査を行うことでした。アメリカの入国審査に最低でも一時間はかかることは知っていましたが、その前のカナダ入国審査行も結構時間がかかり、ようやくヒューストン空港行の出発ゲートに駆け込んだのは出発15分前、ぎりぎりセーフでした。カナダでの乗継ぎは初めてだったので、まずカナダの入国審査があり、カナダなのにアメリカ入国審査もあることは事前には想定していませんでした。何もないはずが、出発から乗継ぎまで忙しい思いをしてヒューストンにようやくたどり着きました。

でも人生最悪のトラブルに遭遇したのは帰りのフライトです。ヒューストンで一週間過ごした後、ブリュッセルに帰国の日が来ました。ネットの情報もフライトは予定通りでオンラインチェックインもできました、よしよし。ヒューストン空港では出国審査もなく(アメリカは去る人は追わずで、出ていく人のチェックは基本しないのです)、フライトも順調にトロント空港に予定通り15時過ぎに到着しました。トロント空港でもトランジットの審査は簡単に通過して、電光掲示板で18時発のフライトを確認しようとすると、あれれ、乗るはずのフライトが出ていません。どこかへ消えてしまっていました。何で!搭乗券で指定されたゲートに行って1時間ほど待ってみましたが何のインフォメーションも出てこないし、係員も来ません。これはやはりおかしいと思って改めてネットで調べると、なんと搭乗予定の飛行機が機材トラブルでそもそもブリュッセル空港をその日の朝に出発していないことが分かりました。機材がブリュッセル空港を出発していないのだから、ヒューストン空港出発時にはわかっていたはずです。通常であれば警告があるはずなのに、なんの注意もなく普通にチェックイン出来て、トロント空港についてもまだ情報が無いなんて、最悪!と怒りながら空港内のカナダ航空インフォメーションデスクに行きました。係員はブリュッセル航空のフライト状況まで把握していないので何もわからない、カナダ航空に責任はないのでブリュッセル航空に聞いて欲しいとのつれない返事。おいおい、なんて顧客志向のない傲慢な態度なんだ、同じスターアライアンスで乗継ぎ便になってるのにそれはないだろう!最悪!と心で叫んでいました。

とにかくフライトがキャンセルされたことが分かったので、空港の出発エリアから出て、ブリュッセル航空のチェックインカウンタ―に行かなければいけません。これが簡単でなく、通常はセキュリティーの問題から空港関係者しか外部に出ることができません。ここで負けてはいけないと、再びカナダ空港の担当者と押し問答の結果、ようやくセキュリティーゾーンを通ることが許されて外に出してもらいました。

全速力で走って、空港の端にあるブリュッセル航空のチェックインカウンターにたどり着きました。他の搭乗客はもういなくて、係員だけが残っていました。カウンターで状況を説明すると、「お客様がいらっしゃらないのでどうしたのかと心配していました。申し訳ありませんが、夕方の代替便はもう手続きが終了してしまいました。」との返事。えー、空港内で待機していた時間は何だったんだ!なんとか連絡できなかったのか、最悪!と思っていたら、「でもご安心ください。夜に出発するカナダ航空のフランクフルト経由便がありますので、お取りします。荷物についてもフライトを変更しておきます。」と、嬉しい回答。予約を完了した旨の書類をもらって一安心しました。

空港内で時間をつぶして19時頃にカナダ航空のチェックインカウンターに行き、順番が来てこれでやっと帰れると思いました。ところが、ところが、提出した書類を係員がチェックをして何やら難しい顔をしています。「フライトは満席で、この予約はコンファームされていないのでチェックインはできません。」と、お馴染みになったカナダ航空のつれない説明。でも予約の書類まであるじゃないかと粘りましたが、全くらちが明かず、「これはブリュッセル航空がコンファームをしなかったのがいけない。」の1点張り、最悪!不幸な我々はまたブリュッセル航空のチェックインカウンタ―に戻るしかありませんでした。が、戻ったカウンターはすでに仕事が終わり閉まっていて、誰一人係員がいないではありませんか!しかもブリュッセル航空の便は1日置きなので明後日まで誰も係員が来ないことが分かりました、最悪!

疲れた体と落ち込んだ心で途方にくれましたが、一緒にいるマダムのためにも何とかするしかないと思い、もう唯一の残された手であるブリュッセル航空の24時間サービスに電話することにしました。電話がつながり、係員に状況を説明すると最初は、「あなたはフランクフルト経由の便に乗ったことになっている。」と言われました、最悪!でも気を取り直して、フライトがコンファームされていなかったことを説明して、ようやく空港隣接のシェラトンホテルと、翌日のブリュッセル行きの便を予約してもらいました。手荷物しかない着の身着のままですが、これでようやく食事とベッドにありつけると、ほっと一安心できました。もう疲れ切っていたので、食事をし、シャワーを浴びてベッドに倒れこみました。

そして翌朝、確か昨日の電話では、メールでフライトのコンファメーションを入れると言ったのにまだ入っていません。オンラインチェックインもできません。えー、またかと悪い予感がして、再びブリュッセル航空に電話すると昨日と同じく、「あなた方は昨日のフランクフルト行の代替フライトに搭乗したと記録されています。」との回答、最悪!違う違うと、フライトキャンセルから、フランクフルト行の予約がコンファームされてなく、搭乗できなかったこと、その後の電話で代替フライトを予約してもらったはずなのにコンファメーションが来ないこと、など一から縷々説明する羽目になりました。担当者は上司に相談する必要があるとのことで電話を保持していると、途中で切れてしまいました、最悪!でもそこであきらめてはいけないと、もう一度電話して、違う担当者にまた最初から縷々説明して、ようやくトロント空港夕刻発、モントリオール空港経由ブリュッセル空港行の夜の便を予約できたのでした。

夕刻までの長い時間を空港内でつぶして、チェックインの長い列に並んで、ようやくたどり着いたゲンの悪いカナダ航空のチェックインカウンター。恐る恐るチェックインを申し出ると、なんと、今度は係員が笑顔で受け付けてくれました。良かった!そして気になっていたチェックイン荷物について、昨日のフライトがキャンセルされ代替便に乗れず荷物が空港内に残っているはずだと説明すると、新しい荷物タグが出てきて、「荷物はちゃんと保管されていますよ、これでタグを付け替えるのでちゃんとブリュッセルに行きますよ。」と優しく説明してくれて半券をくれました。ちゃんとやってくれるじゃない!荷物が本当にブリュッセル空港に着くのか確信は持てませんでしたが、搭乗して、モントリオール空港で乗継いでようやく26時間遅れてブリュッセルに帰りました。カナダ航空についてはもう一つ。モントリオール空港の掲示板で乗継ぎ便を探したのですが、見つかりません。まさかのまたか!と焦って出発時刻で確認すると、コードシェアのカナダ航空便名だけが表示され、我々の搭乗券に示されたブリュッセル航空便名が表示されていないのです。ここまで徹底してブリュッセル航空を無視するなんて、最悪!
ブリュッセル空港ではちゃんと着くかなとドキドキしながら半信半疑で待っていた荷物もちゃんと出てきて涙で再会しました、よく無事に帰ってきたね。これで長い長い乗継ぎの旅がようやく終わったのでした。

今回の経験で今後の教訓として皆様にも知っておいて欲しいことがいくつかあります。海外旅行にトラブルはつきものですが、今回は英語で様々な交渉ができたので何とかなりました。英語(または旅行先の現地語)に自信のない方は、個人でアレンジする旅行はできるだけ避けたほうがいいと思います。団体旅行でなくても旅行会社を介したほうがいざという時は安心です。また、ネットで情報を確認できるようにしておくことも大切です。最後に、アメリカに行く場合は、カナダでの乗継ぎは避けたほうがよさそうです。そして個人的にはお客様視線にかけたカナダ航空をこれからは利用しないと固く心に誓いました。

これで人生最悪の乗継ぎトラブルは一件落着ですが、実は後日談があります。ブリュッセルに帰宅して、ブリュッセル航空に対しトロント空港泊でかかったホテル代、食事代の請求をしました。しばらくたって先方から、かかった費用に加えて、EU規則により一人当たり600ユーロの補償金を支払うと言ってきたのです。何の事だろうと思って調べると、EU261法という法律があって、EU内の航空会社はフライトの遅延、キャンセルに対しその程度に応じ乗客に125ユーロから600ユーロの補償金を支払う義務があるのです。今回のケースは、飛行距離3,500KM以上かつ遅延4時間以上により最高金額の600ユーロが支払われることになったのです。まあ、あれだけ苦労したのだからこれくらいのご褒美はあってもいいなと思い二人分の補償金はありがたく受け取りました。こうしたことを要求もしていないのにきちんと対応してくれたブリュッセル航空が益々好きになりました。最後に質問です。私はこの話の中で何回最悪!と叫んだでしょうか?

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