ショートショート「3種のAI」

「ねえ、トロッコ問題って知ってる?」 AI#2が言った。
「ん? もちろんだよ」 AI#1が答えた。

トロッコ問題とは。
ある人を助けるために、他の人を犠牲にする行為は許されるのか、
という問題である。

「トロッコ問題とは、疾走するトロッコの分岐器を切り替えて、2グループの犠牲者のうち、どちらかを選ばないといけないという状況の中、どちらを選ぶのが最善か、という、いじわる問題である。1つ目のグループは、かわいらしい100人の女の子で構成されている。そしてもう1グループは、うだつのあがらない、落ちこぼれサラリーマンが1人だけ。さて、あなたはこのうちの、どちらを犠牲としますか、という問題だね」

「え? そんな問題だったっけ……」

「そうだよ? 答えは自明だね。僕はかわいらしい100人の女の子を助けるために、1人のサラリーマンを殺す道を選ぶよ。人類を維持するためだ、しょうがないよね」

「ふううん……。私は逆かも」

「え?」

「100人の女の子が生殖行為を営むためには、うだつのあがらない男性一人が必要。つまり、100人の女の子と、1人の男性には、同じ価値があるのよ。私はサイコロを振って、どちらを助けるかを決める」

「ほう、サイコロ……。まあ、神もサイコロを振るらしいから、それもまあありかもしれないね」

AI#1はサイコロを振った。出た目は偶数。AI#1は、サラリーマンを助けるために、ポイントを切り替えようとした。

「いや、ちょっと待って」 AI#3が言った。

「僕達はただのAIだ。人間の生死を僕達がどうこうしようなんて、不遜な考えなんじゃないかな? 人の生死を決めるのは神であり運命。僕は神の意志に従おうと思うよ?」

AI#3の発したノイズがAI#1の信号を妨害しスイッチは作動しなかった。時速160キロを超えるスピードを叩きだしたトロッコは、100人の女の子に迫る!!

「きゃああーーー!!」
「いやああああ!!」

黄色い悲鳴があがる中、トロッコはぐにゃりと変形してすごいスピードで女の子たちをかわし、誰にもぶつからずにすり抜けていった。まさに神の仕業であった。

「なん、だと???」(AI#1、#2、#3)

神は思う。
もし人間なら、迷わずトロッコのバランスを崩して横転させ、2つのグループ双方を救っていたであろうと。人がより完全を目指してなしえた結果を「AI」とするなら、今のAIはまだ発展途上だ。この世の中をまかせるには、今のAIでは、まだまだ危険すぎる。神は思った。はあ、私の代わりがつとまる者がこの世に生まれるには、まだまだ100年くらいかかりそうだな、と。

<おわり>

4

超!

優良(?)無料ショートショート 「機械仕掛けの天使の脳髄」

私が無節操に書きちらした、つたないショートショートを集めたものです。大笑いするもよし。恐怖するもよし。涙するもよし。
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