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開かずの踏切

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朝のラッシュ時。
列車が飛び交う時間帯。
数十分と遮断機が開かない踏切がある。
渋滞に巻き込まれた運転手が苛立つ。
毎朝の恒例行事だ。

その日も警報器が鳴り続く踏切に苛立ちながらも、車内のラジオ放送を聞き気持ちを落ち着かせる。
その日の特集は年輩者ののど自慢大会。
さぁ、今日もやって参りました。
お兄さんお姉さんの十八番を披露して頂きましょう。

司会者が場を盛り上げる。
大して上手くもない、むしろ下手くそな歌唱力に拍手をおくる。
歳をとったら恥じらいもなくなるのか。
男性は呆れ、ラジオ番組を変える。

お料理の時間です。
今日はなまずとアスパラの和え物です。
お手軽にできるのでぜひ試してください。
声がガラガラの女性料理人が場を仕切る。
なまずとアスパラの和え物?
見るも奇妙なレシピだな…。

しばらくダラダラしてると、何やら大きな音が聞こえる。
背後を振り返ると、大勢が自分を責め立ててるじゃないか。
俺が一体何をしたというんだ。
やめてくれ。

ふと目が覚める。
後列の車からクラクションが鳴り響く。
どうやら、踏切で待っている間に眠っていたようだ。
全部夢だったのか...。
急いでクラッチを踏み込み発進させる。

それにしてもリアルな夢だったな。
長い踏切を渡り切ろうとすると、また警報機が鳴り出した。
やばい、前列がつかえて前に進めない。
このままだと列車と衝突してしまう。

逃げ場がない踏切。
このまま車から降りて、自分だけでも逃げよう。
車から降りようとするがロックが解除されない。
窓も開かない。

バックミラーを覗き込むと、そこには一人の血まみれの女性が。
ゾッとした男性が、勢いよく後部座席を振りかえる。
振り返ると同時に女性が大きな声で泣き叫ぶ。
痛い!痛い!!

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