見出し画像

株式会社ユーグレナ代表執行役員CEO・永田暁彦さん | サステナビリティ・ファーストで挑む新しい時代の事業経営

サステナビリティを継続的に学ぶラーニングコミュニティ『Sustainability College』
月に2回の授業のうち、1回は多種多様なフィールドで活躍されているゲストをお招きする「講師回」、2回目は生徒同士の交流や知恵を交換し合う「ゼミ回」を行っています。

連載中のこちらのマガジン「 #サスカレ授業参観 」では、講師回のダイジェスト版をお届け。
講師による45分間の講義とそれを受けた生徒たちからとめどなく溢れるアツい質問...。
『Sustainability College』では普段、どんなふうに学びを高めているのか、その様子をレポートしていきます!

「Sustainability College」では現在5期生を募集中!
気になる方はサスカレのHPをご覧ください。

***

2022年最初の講師回にお越しいただいたのは『株式会社ユーグレナ』代表執行役員CEOの永田暁彦さん。ユーグレナと言えば、世界で初めて微細藻類ユーグレナ(ミドリムシ)の食用用途での屋外大量培養に成功した会社として有名ですし、18歳以下のCFO(Chief Future Officer:最高未来責任者)を採用していることでも話題になりました。

ユーグレナは2020年、創業15周年を機にCI(コーポレート・アイデンティティ)を刷新して「ミドリムシ」の会社から「Sustainability First(サステナビリティ・ファースト)」の会社へアップデート
将来にわたって変わることのない組織の哲学『ユーグレナ・フィロソフィー』のもと、サステナビリティを軸としたさらなる事業展開を目指すユーグレナの、経営理念や想いについてお聞きしました。

画像1

参照:創業15周年を迎え、CI(コーポレート・アイデンティティ)刷新 | 株式会社ユーグレナ

プロフィール

画像2

株式会社ユーグレナ 取締役代表執行役員CEO リアルテックファンド 代表
慶応義塾大学商学部卒。2008 年にユーグレナ社の取締役に就任。未上場期より事業戦略、M&A、資金調達、資本提携、広報・IR、管理部門を管轄。現在はCEOとして全事業執行を務め、健康寿命延伸を目指したリブランディング、脱炭素社会を目指すバイオ燃料開発、経営に10代を取り込む制度設計をするなど次世代経営を推進。また日本最大級の技術系VC「リアルテックファンド」の代表としてファンド運営全般を統括する。

「僕はいま怒っています、社会に対して」という言葉から始まった本講義。
続けて、永田さんは「サステナビリティを語る人は有言実行でなければならない」と仰いました。サステナビリティを語るときに「なんか良いよね」というところで終わっていたら不十分で、ちゃんと結果を追求して、結果を出したいんです、と。

社会を変えなければならないという立場にいる責任感から、資本主義の中で事業を回しながら、社会をより良くするために邁進されています。

そんな永田さんが代表執行役員CEOを務める株式会社ユーグレナの事業は、身近な食品・飲料=Foodから飛行機の燃料=Fuelまで、バイオマスの5Fに沿って展開しています。

画像3

東大発ベンチャーとして始まった当時は資金がなかったため、自分たちで食品を作って売ったお金を研究費や製品開発に充てていたのだそう。2021年には国内の民間航空機で初めてバイオ燃料『サステオ』を搭載したフライトを実施しました!

画像4

ユーグレナがどの事業でも大切にしているのは、会社の事業成長と社会へのインパクトの関係、つまり社会問題の縮小/解決がイコールの関係にあること。例えば、今後ユーグレナのバイオ燃料『サステオ』を選択する利用客が増え、より多くの路線で『サステオ』を使用したフライトが増えるほど、石油燃料の使用を減らすことができるため、気候変動の抑制につながります。

逆に、ある事業が成長することで環境負荷が増えるから、その分をCSRとして植林してオフセットする、というような構図だといつまでも課題はなくなりません。

この事業インパクト=社会インパクトの関係を崩さずに、事業を拡大していくことで、真に社会が変わっていくといいます。

画像5

これを維持するためのひとつの仕組みがCFO(Chief Future Officer:最高未来責任者)です。
「大人」は事業の上での利益やコストのことをどうしても考えてしまう、けれどその意思決定の場に未来の当事者である世代の視点を入れ、その声を会社の経営に反映することで、事業インパクト=社会インパクトの構図につながります。

画像6

***

そんなユーグレナのフィロソフィーや、永田さんのマインドセットに対して受講生の間では「自分たちの事業のやり方や日々の考え方は、まだまだ甘かった…」という反省の声もちらほら。
質問も沢山あがり、永田さんの考え方をより深掘りしていきました。その一部をご紹介します!

Q1.「Sustainability First(サステナビリティ・ファースト)」というフィロソフィーにおける「サステナビリティ」とは、ユーグレナや永田さんの中では、どういう意味で使われていますか?

ユーグレナでは「目の前にある短期的な課題ではなく、未来がずっと続いていくために出来ること」をサステナビリティと考えています。私は常々「二項対立じゃない」ということだと言っています。

例えば、地球を救うには人類が滅亡すればいい、みたいな話は究極的な二項対立。
サステナビリティとは、ひとつの事象に関わっている多様なステークホルダーにきちんと配慮して、みんなが上手くいくようにするということです。昔の話で言うと「三方よし」ということ。

どこかで誰かの幸せを搾取している状態ではなくて、自分たちの事業が伸びているなら、同じ質・スピードで貧困地域の課題が解決されているか。会社の仲間そういう見方で、方でいられるようにしていきたいですね。

Q2. ユーグレナの成長を止めてしまうものとして、資本や技術力よりも「それ以外の立場の人」という存在がある気がしています。そうした人たちとどう向き合っていきますか?

正義の反対は正義、と言ったように反対する人たちが悪だってことではないです。
たとえば、日本でEVを導入することが本当に環境にいいのか、という話。一からEVを開発して新しくEVに合った設備も作って、今ある車を全部変えるより、これまでの高い技術力を生かして高燃費の車で石油燃料を使った方がいい場合もあると思います。

「環境問題を解決したい」という同じ目標を持っていたとしても、それぞれの立場での正義が異なれば、アプローチが変わることもあります。だから、私たちとは違う正義を掲げていたとしても、それは決して「悪」ではないんです。

もう1つ言えるのは、いかにして時流に乗るかということも、すごく大事。
いまはSDGsとかサステナブルとか、世の中全体で言うようになっています。W杯の時だけ、にわかでもなんでも関心持つ人が一気に増えますよね。その中の10分の1でも本質に気づく人がいたらいい。
サステナブルもW杯と一緒で、今やっと注目されてるならこれは利用すればいいと思います。私は神輿の上で踊るって決めています。笑

Q3. 講義の中で「正義の反対は正義」というお話がありましたが、自分とは全く異なる「正義」や「信念」に出会ったときに、自分の信念とどのように折り合いをつけていますか?

「反対の正義」が社内にあるか、社外にあるかでは大きく変わってきますね。
社内の場合は、やっぱり同じ方向の正義を目指すことが大切で、言い換えれば自分と同じ正義を持ってる会社に入ることがこれからの時代は大切だと思います。

大企業とベンチャーの違いってそこにあると思います。大企業ではやれることは大きいけど、ベンチャーの方がそうしたチーム内のベクトルの一致度合いというか研ぎ澄まされているなと感じます。

「反対の正義」が社外にあった場合、たとえば「地球とか環境とかぶっちゃけどうでもいい。儲かることが1番!」という正義があったとしたら、これはもう綱引きで、どっちの数の方が多いか、力が強いかです。だからこそ、僕は会社を大きくしようと思っていまいます。

ただ、実際は世の中の「浮動票」がめちゃめちゃ大きいと思います。
私たちが社会を変えたいと思ってるのと同じくらいの熱量で「金を稼ぐのが正義なんだ!」と思ってる人ってきっと少なくて、多くの人はその中間で、自分の中にはエンジンは積んでないけど引っ張ってもらったり押されたりしたら動ける人っていっぱいいる。
だからその人たちをどうやって自分たちの側に巻き込むか、つまり関係人口を増やしていくかってことを考えていけば、社会は変わっていくと思います。

***

ご自身の取り組みとは逆行するような力が働くことも少なくないと思いますが、「別の立場に立てば別の正義がある」ということを常に忘れず、異なる正義と出会った時も対立ではなく、「三方よし=サステナビリティ」の関係を生みながら、着実に社会を変えようとする永田さんの姿勢に、受講生一同とても背中を押されました。

「Sustainability College」の講師回では、毎回講師からの宿題が出されます。
今回はの宿題はこちら!

画像7

ぜひこの記事を読んでくださったあなたも、永田さんのお話をヒントにしながら、考えてみてください!

次回の「#サスカレ授業参観」では、『一般社団法人 Earth Company』の濱川明日香さんの回をお届けします!お楽しみに。

***

今後のサスカレの予定

画像8

「Sustainability College」では5期生の募集を開始しました!

現在約80名が在籍する「サスカレ」では3月21日(月)まで、新メンバーを募集しています。
(※5期生は、4月の講義回からの参加となります。)

入学後は、過去のゲスト講義回の動画もすべてアーカイブ視聴が可能です。
今回のnoteで紹介した永田暁彦さんの回も視聴できます!ゲスト講義の動画数は現在14本。

気になる方はサスカレのHPをご覧の上、奮ってご応募ください!!
【おまけ】今月のサスカレニュース
サスカレの受講生や学級委員長の最近の取り組みなど、ちょっとしたニュースを毎月お届け!

▼『morning after cutting my hair .inc』 が5周年を迎えました!
https://macmh-inc.com/

▼『対馬地球大学』がクラウドファンディングに挑戦中!
https://camp-fire.jp/projects/view/528684

▼香川県まんのう町『SUNNYSIDE FIELDS』が1月26日にプレオープン!
https://sunnysidefields.com/

▼RE:PUBLICによる『Circular Design Exhibition』2月18日に開催!
https://note.com/bonustrack_skz/n/ne507e0c4e4fd?magazine_key=m8699106a0d58

執筆:鈴木さやか


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?