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桜の下で君と - 2023/11/12 日記#217


・結局コンカリーニョへ行った。

・久しぶりに生で見る演劇はやっぱり沁みる。私って演劇のことが好きだ。映画も好きだし小説も好き。だけど演劇って特別に好きかもしれない。生の音、振動、光、温度、におい、息遣い、すべて自分の目で見られるという経験は演劇にしかない。

・いや、音楽ライブにだってあるだろ、と思うでしょう。でも、音楽ライブって実はあまり失敗やハプニング、(音楽的な意味ではなく)全体を通してのテンポのズレなどのライブ感って少なくて、大体は客席から見ると滞りなく終わることの方が多い。演劇だと台詞が飛ぶ、音響照明のハプニング、動線のミス、上映時間の誤差(これが全体のテンポやリズム)、本当に様々なことが起きる。今回だって上演が始まってから客席が増設されて席移動なんかもあった。それが演劇の醍醐味だと思っている。

・この作品、特攻隊がテーマなのですごく重いテーマではあるのだけれど、お笑いが本業であるアップダウンのお二人が作ることによって日常シーンのコメディパートも多い。

・最近のシリアス劇への感想にはコメディパートを減らせと意見が寄せられるらしく、テーマ重ければ重いほどコメディが輝く、そんなコントラストが大好きな私にとっては黙ってはおけない事態。その点、お笑いコンビの二人がお笑いを主軸に作るこの劇はまさに私にはぴったりの作品で嬉しかった。

・ただただ暗い話だけで終わらせない、テーマに興味のない人にも楽しんで貰いながら史実を知ってもらいたいという思いも伝わってくる。過去noteにも書いてきたが、こうしたテーマに対してエンタメ消費をしていいのかと常々疑問に思っている。しかし、むしろエンタメ、娯楽に昇華することが過去を忘れないための大事な過程なのだと感じた。

・実際、わたしも戦メリを見てから(戦メリにはコメディシーンはなかったが)第二次世界大戦に興味を持って勉強するようになったし、同じく特攻隊がテーマの「蛍火艶夜」(※この作品を知らない方へ、性描写がメインの畜生向けBL漫画です……でもただのエロじゃない最高の作品です)をより深く理解したくて特攻隊について調べている。戦争を知らない世代が、私のようにお勉強があまり好きではないタイプの人が、こうしたテーマに興味を持って向き合うきっかけとしての側面も持っているんだと。

・こんな間近で衣装を見られることもないので、ついつい観察してしまった。市販のものというより衣装班が作ったもののような気がする。白絹のマフラーもそうなんだろうか。いま白絹というとつやつやのサテン生地が出てくるのだけど、当時の布は明らかにそうではないし、劇中で使われていたものもそう。ああ、すごく気になる。

・志願という名の強制シーンで、ああ、そうだよなぁ、このシーン、見覚えあるな、と思っていたら、既に客席からはすすり泣きが。早くない?

・出撃前夜のシーンがかなり印象的だった。そりゃ寝れるわけないよ。私だって初出勤の前日は寝れないのに。

・教官という(語弊を恐れずに書くが)安全な立場にありながら、お前たちだけを行かせやしないと言えるその根性があまりにかっこよすぎるし、17歳という若さで運命を受け入れ恩師と共に飛び立った勇気も凄い。

・けど時代という波に飲まれてそうならざるを得なかった方々を美化して感動物語として消費したい訳ではない。ただ知って、受け止めて、ちょっとだけ考えたい。

・あと本当にこれは蛇足の最低な感想なんだけど、あなた達は一緒に飛べて、桜の木の下で再会して、妻や子どももいて、約束が果たせて良かったですね、と……。まるでそうではない作品を知っているかのような書き方だけど、まあ、うん……

・正直、本当にもっとひどい血も涙もない人間が作ったような作品ばかり見てきたので泣けるようなシーンはなかったが、唯一最後のエンドロールで一人ひとりの似顔絵が映し出されたシーンがきつかった。これ(※また結構な畜生向け個展の写真なのでご注意を……)を思い出して。

・とにかくイラストがとても好きで、グッズは買うつもりはなかったのに思わずポストカードを買ってしまったし、サインまでいただけて嬉しかった。

・初っ端漫才から始まって何の劇見に来たんだっけって一瞬不安になったわ。靖国や桜というワードで少し題材に寄せているのも芸人さんって普段からネタとネタの繋ぎを考慮しながら作ってるんだなあと改めて凄さを実感した。

・映像化された作品も楽しみだし、また機会があればもう一度観劇したいな。


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