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ファミレス行こ。10話を踏まえて語らせてくれ - 2024/02/12 日記#225

漫画『カラオケ行こ!』及び『ファミレス行こ。』上巻・本誌、映画『カラオケ行こ!』のネタバレを含みます。

・これは本を読んだ上で個人が受け取った感想であり、事実ではありません。的を得てもいません。ただの感想です。私の考えの情報整理です。

・ずっと仮定の話ばっかしてます。

・前回の→

・続きの→



・とりあえず、完全に舵を切ったな、と思った。私達が何の「確認」なのかわからず悩んでいた間、まさか聡実本人も同じ悩みを抱えていたとは……

・これで北条麗子先生のターンだったらどうしよう、と思っていたけど、きっと読者の誰もが想像出来なかったくらい直球の10話がきて安心したというか、心臓が痛いというか。

BLに限らず恋愛ものを描くのに照れがあったので、照れ隠しでギャグ寄りに見せたというのがあります。

『女の園の星』和山やまが語る、独自の作風が生まれるまで 「ギャグ漫画はローテンションでもいいと気づいた」

・直近でこの記事を読んでいたので、9話のラスト、今回の10話を読んで、和山さんは覚悟を決めて聡実と狂児の関係を書き切るつもりなんだ、と感じた。

・そして、狂児が元々女をたらしこむのに使っていたテクニックを、意識的にか無意識にか使われていた聡実。しかも中学生という最も多感な時期に。そんな聡実の方が恋愛に近い感情、聡実自身も世間に通じる言葉で言うどれに当てはまるのかよくわかっていない、狂児に対する嫌悪と愛着を感じていて、そんな自分の感情の扱いに困っている感じ。

前回のnote

・わりと合ってたというか、そもそもそこまで至ってすらいなかった。10話でようやくそこに辿り着いた様子。ここまで本編では聡実のモノローグが極端に少なく聡実の感情すらよくわからなかったけど、聡実自身も書かれている以上のことは考えていなかったんだな。聡実はおそらく、狂児に対する自分の感情の本質に向き合うのは今回が初めてなんだろう。これまでは「怖い」とか「むかつく」とか「ご飯くらい行ってやってもいいか」「生きてるかな」とか、その時々の短期的な感情しか自覚していなかったし、その感情がどこから来るのかなんて考えたこともなかったような。人間関係、初めて?

・過去、狂児という存在に真正面から向き合った経験はあの卒業文集。それでも、どうしてあんな文章を書いたのか、どうして忘れられないのか、そこまでは思い至ってない。ただ聡実は今までの人生を思い出して、言語化したい思い出が狂児とのことだった、それだけ。傍から見たその行動の意味までは考えてもいないのだと思う。そこで気づけていたのなら、おそらく聡実は文集にはあの文章を書いてない。狂児への感情は聡実の中ではすべて点で記録されていて、ひとつも繋がっていないように思う。

・だから、なんか流れで会っちゃってるけど、こんなのは辞めなきゃなと真っ当に考えている。自分の名前も消させて(多分)、狂児と自分の人生が交わった痕跡を消して貰わなきゃならない。普通の道に戻るため、反社と関わりのある自分と決別するため、聡実は極めて冷静に常識的な行動している、と自分では思っている。親戚でもないおじさんとご飯食べるだけの関係を維持する必要なんて聡実の人生にはないからね。狂児に会おうが会わまいが、影響はないと。

・聡実が認識している自分自身はここまで。本当の聡実は14歳のあの日からずっと狂児に囚われているし、別れるのは辛いし、忘れられないし、理性では抑えられないくらい狂児を離したくなくなった、なんだよ。

・聡実のハグは自分でもよくわからない衝動だったという結論だけど、そもそも本当の本当にあの瞬間の突発的な100%の衝動ではないと思う。勢いだけなら狂児の腕ごと抱きしめに行くはずだ。でも実際の聡実は、わざわざぽっけに突っ込んだ狂児の腕の隙間に自分の腕を差し込んで、胴体をぎゅっと抱きしめている。可愛いね。前のコマから目線を上げたり逸らしたり、きっとお店を出てエレベーターに乗って階段を降りてすぐ近くの駅まで向かうその最中、狂児の背中を眺めているはず。0.1秒なんて咄嗟の行動ではなく、少なくとも行動に移すまで数秒はあったように見えた。

・「好きを伝えるため……いや…なんかそんな単純なもんではないやろ」、本人もそう自覚しているように、あのハグにはあっさりと離別を肯定された寂しさとか、物わかりの良い大人な対応への腹立たしさとか、それは正しいのに強引に引き止めて欲しいと思ってた本心とか、いつまでも追いつけない大きな背中への苛立ちとか、「聡実くんが心配することはなんもないけど」と守られ突き放される縮まることのない距離感とか、聡実の中で色んな感情がない交ぜになった結果のものなんだろうな。

・それらをひっくるめて読者はみんな「狂児が好きだからだよ」って思うんだけどね。聡実自身も「寂しくなったんでしょうか?その人のことが好きなんでしょうか?」と書いているように、わかっていないというより俯瞰で見たその行動の意味はわかるけど自分事として認められていない、のほうが近いように思う。

・manaちゃん(と思われるいつも一緒にいる同級生の女の子、私も学生時代1000mlのパックジュースやお茶をストローで飲んでたから親近感湧いた。これって大学生あるあるだったりする?)のことは「好きだよ、人として」と言う聡実。つまり、狂児のことは「人として好き」では片付けられない感情なんだよね。 

・では果たしてそれが世間でいうロマンティックに分類される感情なのか、そうだとすると更にそこにセクシュアル面での欲がついてくるのか、それはまだわからない。

・これはメタ読みだけど、とはいえ、メインやコアなファン層の中に二人を恋愛関係として見ている人も少なくないとおそらく作者や編集部も把握した上で「確認」をぶち込んできておいて、それ以上なにもないって展開にはならないのでは、と考える。個人的には、下手したらクィアベイティング(クィアっぽく見せて消費者の期待を煽るが、実はクィアではなかった、という展開で消費者を釣る行為)って言われる可能性も視界に入ってくるくらいの描写にはなってきていると感じているからだ。

前回のnote

・わからないし、必ずしもカテゴライズするべきだとは微塵も思わない。ただ10話を読んだ上で思うのは、ここまではっきりと描いておいて、「でもこの好きは恋愛ってワケじゃないかも」みたいなオチだったら大真面目にクィアベイティングにストライクで一発アウトだよ、ということ。私もこの手の話であまりうるさく言いたくないタイプではある。でもブロマンスとロマンスの境界線を歩いてきたシリーズだったこの作品は、9話と10話ではっきりその境界線を越えてきたと私は思っている。クィアベイティングに当たるかどうかという方向性でシリーズについて論じている方はごく数人しか見つけられなかったけど、それだけ和山さんを信頼しているということなのだろうか。

・メタ余談でした。

・メタ余談のついでにこのあとにも出てくるセクシュアリティについての前提→

★性別(ジェンダー)
生まれ持った身体的性別、自認している心の性別。
★恋愛的指向
恋愛の対象となるのはどのような人なのか、恋愛をどのように位置付けているか。
★性的指向
性的魅力を感じるのはどのような人なのか、性的欲求をどのように位置付けているか。
★表現したい性
実際の性別や性自認とは関係なく、服装や言葉遣いなどをどのように振る舞いたいか。

参考:セクシュアリティ分析 anone,

・余談終了。


・聡実はあの感じだと高校時代に恋人はいなかったんだろうし(いた場合は当時の感情と比べると思うので)、大学生である今もそんな雰囲気はない。興味はあったのかなかったのか、それは本編には描かれていないのでわからないが、これまで読んだ感じだとおそらくそんなに興味もないのだろうと思う。周りは放っておかなかっただろうけど。

・そもそも聡実は自分の恋愛指向や性的指向について考えたこともないんじゃないかな。別に自分の感情や指向を何かに分類する必要もないが、こんなにも誰かを好きだと認識する(まだしてない)のは初めての経験なんだろう。狂児以上に想える相手には、今まで出会えなかったんだね。

・相手が25も離れた同性だというのも一つの要因だと思う。「めちゃくちゃ好き」の対象に狂児が入っているとは想像もしていなかったんだろうな。まさか自分が狂児に対してこんなにも激しく深い感情を持っていたなんて、聡実にとってはまさに青天の霹靂。むしろ、聡実は狂児に出会ってしまったせいでその「好き」の対象に20以上も年の離れた同性が組み込まれてしまったのにね。

・この先、聡実が「狂児が好き」を自覚した後に受け入れなければならないことは山程ある。

・まず相手が20年以上ヤクザをやっていて役職までついてるということ。聡実は狂児にヤクザを辞めてほしいのかもしれないけど(「ヤクザ 未来なし」「ヤクザ 辞めさせる」「キクラゲ 正体」)、もし本当に辞めるとしても若頭補佐まで上り詰めた狂児が逃亡するのはそう簡単な話ではないと思う。末端の構成員なら逃げれば済む話かもしれないが、役職のある狂児はおそらくそう簡単には行かない。『カラオケ行こ!』では基本聡実には優しいおじちゃんたちだったけど、何なら狂児は深入りするなと釘を差されているかもしれない。「狂児を僕にください」で狂児を貰えたらいいのにね。

・そしてもし万が一辞めさせられたとしても、およそ20年ヤクザをやってきた40過ぎの男が、5年間のブラックリスト入りを抱え、まともな職でやっていくのは想像以上に大変なことだと思う。20代の狂児なら簡単に養ってもらっていたのかもしれないが、聡実がお金を出すと言っても狂児はきっと素直には頷かないだろう。

・そんな二人のこと、聡実の感情を、世間は決して肯定的には見てくれない。私が聡実の友人で相手がヤクザだと知ったら「自分でもわかってると思うけど、絶対にやめておいたほうがいい」と言ってしまうと思う。もし学校や職場にバレたら、処分されるのは聡実だから。ただご飯を食べていただけだって、そのご飯代は決して綺麗なお金ではない。関わりがあるというだけで、世間の風当たりはものすごくきついものになるし、狂児もそこは嫌でもわかっているだろう。

・映画版では同級生の栗山くんに狂児の話をしていた聡実だけど、原作では狂児のことを包み隠さず相談できる相手は今のところ一人もいない。もしヤクザを辞めたとしても、そう簡単には相談できないと思う。聡実は今後も狂児の存在を隠しながら「友達の話」なんてベタな言い訳でないと相談も出来ない人生を歩むことになる。もうなってるか。

・もし聡実が狂児への感情を「人として、を越えためっっっっちゃくちゃ好き」だと自覚したところで、狂児はそう簡単には受け入れないと私は思う。前回のnoteにも書いたが、狂児が何より真剣に聡実に伝えたいのは「死にたくなってもこっち来たあかんよ」という台詞だと思っている。今は許されないモラトリアムを過ごしているだけで、狂児はきっとこれ以上聡実に踏み込む気はないし、踏み込ませたくもないはず。狂児が聡実のことをどう思っているのかはわからないが。聡実は全然それどころではないけど、「確認」をしてしまったことで近づきすぎたと察した狂児がもう二度と聡実に連絡を取らない可能性だってある。本音を言わないことで均衡を保っていたからこそ維持できた関係性が、聡実の「確認」によって完全に崩れた今後、狂児と聡実がどのような道を辿るのか、結構怖い。私ももっと和山さんを信用しないと。

・でも、端から見てるいち読者の目線からすると、ここまで聡実を狂わせたんだから狂児は責任持って最後まで聡実の面倒を見なさい、と言いたいね。

・そして「人として、を越えためっっっっちゃくちゃ好き」を恋愛だとカテゴライズするなら、もしくはそう断定する材料になるものとして次に待ってるのは性的指向について。「好き」だとして、この「好き」は性的欲求にも該当するのか、って多くの人は考える。たぶん聡実も。ハグはもうしてしまったけど、それってつまり「僕は狂児と手繋いだりキスしたりしたいんかな」って。ハグの時点であれだから、それこそキモいやろって思いそうだけどね。一旦「確認」してみたらいいんじゃないかな。事あるごとに全部。大事だからね、確認。

・そんなこんなを色々と乗り越えた上で、一番最後に待ってるのは、親。家族。犬特集をお知らせしてくれるお母さん(このラインをくれている時はヤクザと個室で逢瀬を重ねていた事実、なんか色気あるよな)、アホみたいなお守りを買ってくるお父さん、教員として、ある意味聡実のお手本のように生きてるお兄さん。言えますか。同性で25も年上で(元?)反社で前科も紋々もある男を選んだって、実は中学生の時から交流があったって。言えないよ。だとしたら一生隠していかなきゃならない。でもどれだけ隠してたってふとした拍子にバレるかもしれない。身内が暴力団関係者と関わりがあるとわかったら、公務員である父や兄の立場だって危うい。言えないよ。町中で友達とすれ違っても、やっぱり親戚のおじさんとしか紹介出来ないんだよ。相談された方々は(あっ……例の……?)と思うだろうが。

・ぱっと思いついただけでも二人の間にはこれだけの障害があって、現実的に考えたらやはり二人で幸せになる未来はない。でもこれは漫画だから。なんとか、なんとかして聡実の幸せの隣には狂児がいて欲しい。頼む。


・聡実が今のところ考えている将来の進路って弁護士かな。聡実は決めてないと言ってるけど、鼻を触っているのでおそらく本人の中でははっきりでなくとも決まっている何かがある。教員でもなく警察でもない、法学をメインで学んでいる、何より狂児や狂児のような人たちと敵対するのではなく支えられる仕事はきっと弁護士しかない。

・特にはっきりとは描かれてないけど、丸山くんに対して「ファンには手を出さない」と言う森田さんの恋愛対象には同性も入っているのかな。ファンじゃない聡実になら手を出せるのかな。部屋に上げてラーメン作れ(帰るな)と要求して泊まっていけば?なんて誘うのは、自分のライブを見に来て欲しいと思うのは、割とアプローチしている部類に入るのではないかな。10話でもハグしようとしてたし多分。聡実は避けてるけど。きっと聡実は今までもこういうことたくさんあったと思う。でも、あまりにも脈がなさすぎてみんな引いていったんだろう。

・森田のハグは嫌だけど、狂児には出来る。聡実はmanaちゃん(仮)のお見送りには行けたら行くけど、狂児は聡実に会いに空港へ行く(諸説あり)。答えはたくさんあるのにね。聡実も狂児も『ファミレス行こ。』読んだらいいよ。


・これは本当に何も関係ない余談なんですけど、狂児って聡実のこと「聡実くん」て呼ぶじゃん。いつかどこかで「聡実」って呼び捨てしてくれないかな。うっかりきゅんとくる聡実も添えて。


・11話→


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