ファッションとビジネスの付き合い方について

日本での路面店や百貨店へのテナントの出店によって欧米での販売よりも高い利益をあげていたブランドの多くが日本での販売価格を下げはじめている。
この現状をいち早く嗅ぎ取り、中国の巨大コングロマリットと手を組んで中国とその周辺の発展途上国の生活の文化力向上にブランド誘致で食い込むのが伊藤忠商事。日本のアパレル産業各位は伊藤忠商事もとい総合商社が執り行う事業経営体制を見習うべきではないか。

近年、中国では産業力の爆発的向上で様々なブランドの直営店での購入が国内でも可能になった。
これまで中国人、アジア諸国の人々は日本国内では爆買いで知られるように、わざわざ日本や近隣の先進国に足を運んでコモディティを購入することが多かった。偽物が中国国内で多く出回るため、確実に本物を手に入れるのなら国内で本物か偽物か議論を紛糾させるよりも、旅行がてら日本にある各ブランドの旗艦店で購入した方がコストパフォーマンスが良かったからだ。こういった消費者行動はこれまでは中国国内でも裕福層に見られた。しかし、近年中国のGDPが爆発的に向上し、現在は世界二位である。こうした高度経済成長があると、世界の一流ブランドも中国を巨大市場として当然マークし始める。
海外直営店の出店に慎重だったマルジェラですらチャイナマーケット参入の可能性を明言し、中国人や他のアジア人が日本でブランド品を買う必要が無くなった。日本で高級服飾品が売れなくなった一つの要因である。

こういった現状の中、ただでさえ足が速いトレンドに大部分を左右されるファッション、アパレルという産業はやはり半分、いやそれ以上にビジネス色の強い経営を行う他ないと思う。それを先駆けてやっていたのがやはり川久保玲と山本耀司だし、今で言えばデムナがそうだ。

特に日本のアパレル産業はバブルの感覚を未だに引きずっている。人々のモノ消費とコト消費の概念の追求がピークに達しブランド力という看板があるだけで何もしなくても高級ブランドが売れる時代、だが今はそうじゃないにも関わらず、日本のファッション産業はのらりくらりとしすぎている。

しかし、難しいのはファッションはやはり芸術的側面があるということ。過去や伝統を重んじる風潮は根強いし、エディのサンローランへの批判やそれに対する回答、ガリアーノとマルジェラを見ればそれは明らかで、そういった意味でブランド経営にビジネス色を持ち込むのはブランドイメージの毀損に繋がりかねないのが難しいところ。

伊藤忠、引いては総合商社はそこが非常に長けている。商社という商品のブランドに自社の名前が色濃くのらない側面を生かして、ファッションブランド経営を通してあまりブランドに関わっている匂いを漂わせない。ポールスミスは有名だが、ランバンを伊藤忠がOEMによって自社工場で生産してるとどれくらいの一般の人が知ってるだろうか。

もっとうまいのがやはりデムナ。
兄弟が経営面を支えていることをインタビューで積極的に公表する。そうすることで血縁関係のある人間というだけでデムナの世界観を損なうリスクを極小化しているように感じる。ビジネス的視点と文化的視点で今最も成功しているブランドは間違いなくヴェトモン。ゴーシャラブチンスキーも経営に関しては同じだ。

洋服を買うのがカッコ悪いことになりつつある現代を乗り切るためにはコーポレートの強化は避けられない。顧客に「どう買わせるか」という視点がないと日本を含めたハイカルチャー化した地域で成功するのは難しい。

日本に関して言えば、元気なブランドはパリやロンドンに出ていってしまう問題がある。そういった中で常に新しい芽を発見し続け、伸ばす。そういった振興ブランドの新陳代謝の向上が日本のファッションシーンを盛り上げる鍵だと思う。そういったことができるのは日本発の強いブランドだと思う。
商社を見習えと言っておいてなんだが、残念ながら商社はこれには向いていない。トレーディングと事業投資、経営といったビジネスモデル的にやはり小売部分とBtoCの強化については各社のコンビニエンスストアの経営を見てわかるように未だに課題が残る。バイヤーの育成の段階になると商社が日本の若手発掘的部分で強みを発揮できる時代はでもっともっと先になってしまうな。

何が言いたいかというと、日本のでかいブランドは余裕があれば日本のストリートとマーケットにも着眼して若手の発掘をして欲しいということ。ゴーシャなんか、川久保玲が発掘したっていう看板が、ブランド力の大半を占めてると思うから。

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