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海外のデザインスタジオに転職するまでのプロセス

概要

東京のソフトウェア企業でUX/UIデザイナーとして働き、いつの日からか世界で普通に働けるデザイナーになりたいという思いを持ち始めました。元々英語は苦手で初めて受けたTOEICは400点代でした。しかし日常の隙間時間に英語の勉強をして、その数年後の2017年4月からドイツに引っ越し、ワーキングビザを取得し、デザインスタジオでデザイナーとして働いています。英語の出来なかった私がヨーロッパのデザインスタジオに転職し、英語で仕事をするまでにどのような準備とプロセスが必要だったか、自分の経験を通して気づいたことを紹介していきたいと思います。

2017年に日本から家族(妻と2歳の子供1人)でドイツに引っ越しました。仕事、生活上での英語・ドイツ語でのコミュニケーションや慣れない生活文化面で苦労する場面も沢山ありますが、日々語学力は向上していますし、何より人生の中で外国で仕事や生活ができるという新しい選択肢ができたことは大きな自信や喜びとなっています。デザイナーとしての仕事は英語で行なっています。日々新しい課題や困難の連続ではありますが、沢山学ぶことがあります。一方で日本で培ってきたデザインのスキルや経験は確実に生きています。Tech/Design系の業界で海外で働くことに興味はあるが、ハードルが高すぎる、留学や海外生活の経験もない自分には無理、あるいはどういうステップが必要か見当も付かないというデザイナーは多いと思います。私も以前はそうでした。しかし、実際には、

1. 英語の習得(完璧じゃなくてOK)
2. 応募の準備
3. 応募&面接
4. 移住

と意外とシンプルです。もちろん各フェーズのボリュームは小さくはないですが、少しの勇気と地道な準備があれば非現実的な話ではありません。私の通ってきたプロセス、失敗談や成功談をいくつかの記事に分けてシェアすることで、それが同じような思いを持つ日本のデザイナーの助けになれればと思っています。

まず意義として、下記のような背景に伴い、英語で外国人と海外の仕事ができるようになる、というスキルはますます重要になっていくと思いますし、自分だけでなく家族にとっても大きなチャンスの拡大あるいは将来のリスク分散になると思います。

・少子高齢化に伴う今後の日本国内オンリーの産業分野の経済縮小のリスク
・世界中でのIT企業やスタートアップ、UX/UIデザイン系企業の増加、技術の発達
・中国をはじめアジア諸国の競合他社増加

一方で海外で生活し働く経験を持つことで、人脈や情報チャネルが圧倒的に広がり、

・語学力の向上
・デザインや関連技術に関する情報や交流のチャネルの拡大
・仕事、キャリア、プロジェクトのチャンスの拡大
・家族、子どもにとっての同様のチャンスの拡大 

また、とりわけドイツに関して言えば、社会保障制度が充実しており、

・医療費が基本的に無料
・教育費は、一部を除き基本的に公立の小中高校&大学の学費が無料
・日本より高い子育て補助金
・大人の教育費も税金控除の対象

といったように、大きなメリットがあると言えます。

もちろん日本で働いた方がメリットが大きい部分もたくさんあります。日本にも面白いチャンスは沢山ありますし、何と言っても海外に移住して働けば外国人として扱われますし、日本のように安全でない可能性も場合によってはありえます。また食事はやっぱり日本の方が圧倒的に美味しいです。(笑)その他にも言葉の問題、税金、治安など、不安を挙げればキリがありません。私もこの先ずっとドイツに住んでいるかと言うとわかりません。緊急事態や魅力的なチャンスがあれば日本に帰るかもしれないですし、あるいは他の国に移住するかもしれないですし。しかし、一度でも海外で生活して働いた経験があれば、将来どの国にいたとしてもその経験が活きますし、日本でしか働いたことのないデザイナーよりも国際的なチャンス多いのは間違いなさそうです。

まず、デザイナーが海外でワーキングビザを取得して働くためには大きく3つのポイント(壁)があると思います。

1. 英語

いきなり投げやりな言い方ですが、これは努力して身につけるしかありません。避けて通れません。いくら優れたデザインスキルがあっても英語でのコミュニケーション能力が0だと難しいと思います。クライアントやチームメンバー、ボスの意図を正確に聞き取り、そして自分のデザインの意図を伝える最低限の英語力が必要です。でも諦める必要はないと思います。私自身初めてTOEICを受験した時は400点代でした。しかし毎日少しずつトレーニングして身につけました。時間がかかりますし、もちろん今でも聞き取れなかったり、すぐに伝わらなかったり苦労することが多いですが、それでも毎日少しずつ英語のトレーニングをして身についています。私がどのように英語のトレーニングをしたかは別の記事「海外でデザイナーとして働くための英語トレーニング法」で紹介したいと思います。

2. 技術

海外の企業が自国のデザイナーでなくあえて外国人を雇うには彼らにもリスクが大きいので、それなりのメリットがないといけません。英語や現地の母国語が得意でないなら尚更です。英語でのコミュニケーション能力に寄らず、選考で自国のデザイナーに負けない要因になり得るのは「技術」だと思います。例えば、

・洗練されたグラフィックデザインができる
・洗練されたアニメーションが作れる
・HTML, iOS, Android上でHigh Fidelityなプロトタイプを実装できる
・3Dのデザインができる, etc.

など、上記は一部の例ですが、その企業の目指している方向性、人材像にマッチした他のデザイナーが中々出来ない技術があると強いと思いました。

3. 選考

選考には大まかに下記のようないくつかのステップがあり、別の記事「海外のデザイン企業に転職した選考プロセスと準備」で詳しく紹介しています。中でも応募準備が大きな比重を占めます。ポートフォリオやレジュメ、簡単な志望動機などを全て英語で用意します。

・応募準備
・応募
・面接

4. 移住

住まい探し
現地で生活、仕事をするために移住します。住まい探しが最初の大きな関門になります。国や地域によって方法は様々だと思いますが、現地の不動産紹介ウェブサービスを利用して、物件を探し、内見や大家との面談を経て契約を取り交わします。私の経験したドイツの都市では会社が雇ってくれたリロケーションエージェントが現地での住まい探しから住民票、ワーキングビザなどの諸々の移住手続きをサポートしてくれたで助かりました。それでも住まい探しにかんしてはドイツ全土で現在アパートが不足し家探しが大変困難になったいるため苦労しました。現地で家探しをしている間はAirbnb、あるいはマンスリーレオパレス的な現地のサービスを利用して仮の家具付きのアパートで生活します。私の場合、私が2ヶ月先に渡独し妻と子どもは正式なアパートが決まるまで日本の妻の実家で、私は家具付きのテンポラリーのアパートで2ヶ月間別々に生活するという形を選択しました。その間に家族がスムーズに引っ越してそして生活ができるように余裕を持って準備できました。私が2ヶ月生活した仮のアパートはベッド、キッチン、個別トイレ、共同バスルーム、光熱費込みで700€でした。

引っ越し
日本から海外へ向けた引っ越し作業を行います。国や地域にもよりますが日本からヨーロッパに送ると船便で約1〜2ヶ月かかります。私はクロネコヤマトの海外引っ越しを利用しました。

ワーキングビザ
住まい探しと並行してワーキングビザを取得します。まずは外国人局で申請の予約を行い、会社から発行された雇用証明書を持参して申請を行います。この辺りもリロケーションエージェントが諸々の手続きをやってくれました。数日後に実際に発行されたビザを取りに行き無事ワーキングビザを取得できました。

その他にも実際にアパートを契約したり、電気、水道、ガス、インターネットなどを契約したり実際の生活をするためのプロセスが必要ですが、それはそれでボリュームが大きいため、また別の機会に紹介したいと思います。

とはいえ、ハードルが高いと思われがちな海外への転職・移住も、こうしてみると以外とシンプルです。日本でデザイナーとして働いていたけど、海外にチャレンジしてみたい、という思いを持ったデザイナーの参考になれば幸いです。質問があれば連絡をください。

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