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約半年間の大規模プロジェクト。『つみたてNISA』機能開発の裏側

こんにちは!
sustenキャピタル・マネジメントのnoteをご覧いただきありがとうございます。エンジニアチームの取締役(テクノロジー本部長)の中村です。

第一弾はメンバーの道祖土さんに詳細画面開発についての記事を書いてもらいましたが、私のほうでは『つみたてNISA』機能開発の全体像について書いていきたいと思います。

今回の開発プロジェクトは約1年、開発だけでも半年間に及び全社で挑んだ総力戦でした。

チームはまだまだ少人数体制で、当初は本当にこのスケジュールでリリースできるんだろうかと不安もありましたが、無事にリリースすることができ、メンバーには本当に感謝しかありません!

この記事では、スタートアップらしい面白さや個々の主体的な工夫が光っていたところもご紹介しつつ、今回の課題点を振り返るとともに、2024年の『新NISA機能』の開発にどう活かしていくかをまとめていきます。

▼2023年2月にリリースした『つみたてNISA機能』
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000010.000052955.html

▼NISAとは?


NISA開発の概要

パイロットプロジェクトでの全社集結ミーティング

マーケティングの様々な調査の結果、「つみたてNISA」を求めている方が多そうだということがわかりました。sustenでも前々から「つみたてNISA」の提供を検討していたものの、今後の制度改善も見据えて踏み込むなら今、という議論が起こり、2022年2月に「つみたてNISA」の開発を検討することになりました。

しかし、「つみたてNISA」の機能を開発するということは、20年という長期運用を前提にしたサービスをお客様に提供するということです。本当に良いものを提供するためには、まずあらゆる角度から開発着手前に入念に議論・検証をしておく必要がありました。そのために約2ヶ月をかけて実施したのがパイロットプロジェクトです。

そもそも開発できるのか。開発しても運用できるのか。20年という長期間運用するためにもどのように開発すべきか。プロジェクトの今後の進行に大きな壁が無いか、全部署が分担してフィージビリティチェックを行っていくことになりました。週次のプロジェクトミーティングでは、全部署のメンバーが毎週一同に集まり、進捗共有・議論を行いました。この方法は、やはり20人〜30人規模の会社ならではのもので、スタートアップの醍醐味が詰まっていたなと今ふり返って感じています。

エンジニアのリソースが決定的に不足しているという問題をチームを超えて見つめ、「本当にエンジニア側で機能開発する必要があるものか」「どの部分はカスタマーサポートや運用本部のマニュアルオペレーションで行い、どの部分の自動化が必要か」などについてもここで徹底的に情報を洗い出し議論しました。

このプロセスを踏んだことが、それまで開発本部だけで抱え込んでいた業務を分担し、全社一丸となってサービスを開発する体制を作ることにつながった大きな要因だと思っています。

メンバーが主体で行った数々の工夫

たくさんのメンバーが自らの得意領域でユーザーファーストを実現するために自発的に動いてくれたというのも嬉しい部分でした。
例えば、社員にユーザーとして口座開設画面を触ってもらうことで、率直な使用感を確認する「UXインタビュー」はデザイナーチームからの発案です。

社員の中でも、まだ実装予定のデザインに触れていない社員に協力を仰いで、UIモックアップを触ってもらいました。UIモックはFigmaを利用し、エンジニアの力を借りずデザイナーが作成を行いました。

Figmaでは「ボタンを押した場合に別の画面に遷移させる」、という挙動を定義することができるおかげで、単なる紙芝居ではなく実際のUIの挙動の違和感を洗い出すことができました。初回は金融知識に関してはプロフェッショナルであるような社員であっても、どう操作していいか分からない、といった箇所がいくつも出てきたのは意外な結果でした。フィードバックを受け、「デザインの見直し→UXインタビュー」というプロセスを複数回まわすことで、大きく改善されました。

その流れを汲んで、開発した機能を実際に操作して確認してみる「プレイ会」も、正式リリースまでのマイルストーン毎に実施していきました。これはスクラムの「スプリントレビュー」の知見を一部取り入れたもので、進捗把握やクオリティ向上の大きな助けになりました。

他チームと連携しての取り組み


もう一つ触れておきたいのが現場エンジニアがカスタマーサポートや運用本部と連携して作成してくれた「運用フローチャート」です。私たち金融商品のサービスはエンジニアが作るシステム単体では完結しません。カスタマーサポートや運用本部の「人」が連携・一体となって動く必要があります。

しかもNISAの口座開設は、「お客様がシステムに登録→カスタマーサポートでの審査→e-Taxで税務署に申告」と通常の投資信託口座の開設よりもさらに複雑で、それまでのオペレーションに大きな変更が加わるものでした。メンバーからの発案で「運用フローチャート」を作ることによって、これを事前に整理していきました。

「家族や友人に勧められる投資信託サービスの創出」というミッションのため、常に自分達が最初のユーザーとなり手触りを確認していくという信念を、各自が持って開発に取り組んでいることの表れだったと思います。

オンスケの裏側にあった課題

開発プロセス

一方で多くの課題もあり、その最たるものが開発プロセスです。正式リリース日を決めてからの半年という長期での開発プロジェクトとなるため、初期に仕様を固めて開発を進めるウォーターフォールに近い開発プロセスになってしまったことです。

もちろんなるべくアジャイルになるように工夫し、スクラムの知見は盛り込みましたが、もともと行っていた2週間ごとにスプリントを行って小さく作っていく形ではなく、大きな機能を長い期間をかけて開発することになってしまいました。

現在はこの反省を活かし、本来のスクラムを導入し、大きなリリースであってもスプリントで扱うことのできるユーザーストーリーに細分化する体制への変更を試みているところです。

エンジニアの能力に頼った機能開発

上述の開発方式のため、開発本部では各メンバーが一つの機能を分担して作成するようになっていました。そのため、機能毎にボリュームのバラつきが後から発覚し、当初の予測の2倍3倍時間がかかる機能が出てきたときに、メンバーのフォローが難しくなってしまいました。幸い、ストレッチゴールの達成に燃える気質の人が多かったために最後まで完成することができたのですが、個々の献身に頼る結果になってしまったことは大きな反省点です。

前述のスクラム体制を導入することで、機能を個々に依存させるのではなく、チーム全体でスプリントゴールを目指すことで個々人のスキルや経験の違いを担保していくという方針に切り替え始めています。

改善の余地が残るUX

正式リリースまで急ピッチで開発したため、やはりUX面ではまだまだ改善の余地があるというのも正直なところです。元来NISAは複雑な制度ですが、「法律で決まっているから」という売り手の論理から脱却しなければ本当にユーザーファーストのサービスはできません。

例えば、口座開設のプロセスにはまだユーザーのドロップが大きな画面があり、その背景には複雑な操作が必要だったり説明が洗練されていないと感じている部分があります。同様に、積立設定に関してもフローや設定画面への動線などの課題が多々あります。こうしたリリースまでに磨ききれなかった部分をユーザー目線で今後改善していく予定です。

総括:2024年の新NISAに向けて

二度目の挑戦で感じた成長

個人的に思い出深いのはリリース日の夜、エンジニアチームでピザを頼み、ビールを片手に乾杯したミニパーティーです。みんなワイワイとはしゃぐわけでもなく、これまでの約1年を振り返り、お互いを労い合う雰囲気は、まるで温泉に浸かりながら語らい合う感覚でした。

オンスケで、しかも大きなトラブルなく正式リリースを完了させることができたのは、間違いなく個々のメンバーとチームとしての成長があったから。『つみたてNISA』のローンチ時にそれを実感する出来事がありました。

1年間の集大成のリリースは、1回のメンテナンスで複数の機能をリリースすることになりました。ここでは、メンバーが主体的にリリース手順を詳細に定義したリリース手順書を作成し、リハーサルを何度も行うことで手順の細かい見直しと調整を行いました。このプロセス自体はマネージャーが依頼したものではなく、チームメンバー自らが行ってくれたのですが、その陰には「ここまでの苦労の集大成であるリリースを絶対に成功させるぞ」、という強い意志があったのではないかと思います。

この一連の動きを見て、チームメンバー、そしてチーム全体としても相当強くなったんだなあ、と感慨深かったのを覚えています。

三度目の挑戦に向けた開発体制見直し

現在は2024年に制度が大幅にアップグレードされる「新NISA」にあわせて、SUSTENでも「新NISA機能」の開発が既にスタートしています。家族や友人に勧められるサービスであるためにチームが目標としているのは「日本一シンプルかつ簡単に利用できる資産運用サービス」であることです。そのためにも、現在は口座開設と入金から一切の煩わしさを取り除き、最速でサービスを使い始められるようにする改善に目下取り組んでいます。

各自が目標の実現に向け、前回以上に力を発揮できるようにするためには開発プロセスも見直し続けないといけないと感じています。「つみたてNISA」の開発での反省を活かし、チーム全体で開発を進める自己組織化された開発体制づくりを現在益子と共に進めている最中です。

国の制度が変わる、というのは業界の潮流が大きく変わるタイミングでもあります。こういうときには、我々のようなフットワーク軽く動けるスタートアップが新しい形を提案していくチャンスでもあります。私達は、まだ誰もやっていないことを行い、それを業界のスタンダードにしてやる、という気概で開発を行っています。多少大げさな言い方であることは承知の上で・・・「資産運用業界の歴史の1ページを作ってみたい方」、是非一緒にsustenで開発してみませんか?

下記よりぜひエントリーください!







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