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# 52 悩める人間

“You can’t connect the dots looking forward; you can only connect them looking backward. So you have to trust that the dots will somehow connect in your future. You have to trust in something — your gut, destiny, life, karma, whatever. This approach has never let me down, and it has made all the difference in my life.”
「将来を見据えて点と点を繋ぐことなどできません。過去を振り返ったときに初めて点と点が繋がるわけです。ですから、私たちは将来どこかでその点が繋がると信じなければなりません。勇気、運命、人生、宿命、なんであれ、何かを信じる必要があります。私はこの生き方で後悔をしたことは一度もありません、自分の人生を大きく変えてくれたと思っています」
スティーブ・ジョブズ(2005年、スタンフォード大学卒業式辞より)

スティーブ・ジョブズ(1955~2011年)はアメリカの実業家で、アップル社の共同設立者の一人であり、その才能は誰もが認め、尊敬していた。彼の理念を理解するには時間がかかりそうだ。しかし、彼の言葉を手掛かりにに、彼の素晴らしさを思い起こし、その真髄に迫れないか、考えてみたい。

点(the dots)とは何だ?
多分、点はポイントとなった経験を意味するのだろう。 
過去を振り返ると点と点が繋がると言う。 繋がると言うのはバラバラな経験が繋がって具体的な形になると言う意味なのだろう。ジョルジュ・スーラ の点描(グランド・ジャット島の日曜日の午後) が浮かんでくる。
過去を振り返ると結果を見渡すだけでも繋がりは姿を見せてくれると言うのであろうが、一般的には過去を振り返って、繋がらないことも多い。いわゆる無駄な経験をしたと後悔することの方が多いのである。ましてや、将来を見据えた時に繋がりは未知数なのだから、イメージできても不透明なのだ。
彼は将来をあらかじめ見据えて、点と点をつなぎあわせることなどできません。できるのは、後からつなぎ合わせることだけです。だから、我々はいまやっていることがいずれ人生のどこかでつながって実を結ぶだろうと信じるしかない。「ハングリーであれ。愚か者であれ」 ジョブズ氏スピーチ全訳 とも言及している。
ここでも自己の経験が将来、結実すると強く語っている。その気迫はすさまじく、凡人には到達し難い境地である。 
誰もが信じて事業を起こすのであり、結果、失敗することだってある。勇気、運命、人生、宿命を信じて事にあたれというのは、単なるおまじないにしか聞こえてこないのだが!
又、彼は次のように述べている
「時間は限られています。それを他人の人生を生きることで無駄にしてはならない。常識にとらわれてはいけない。常識にとらわれることは他人の考えた結果を生きることです。他人の意見によりも自分の内なる声に耳を傾けてください。そして、何よりも大切なこと、それは自分の心と直感に従って生きる勇気を持つことです。どういうわけか心と直感はあなたが真に望んでいることをあなたよりも早く知ることができるんです。それ以外のことはすべて二の次で構いません」。スティーブ・ジョブズ(2005年、スタンフォード大学卒業式辞より)
ここで、特に興味を引くのが常識にとらわれないという文言だ。 そこから生まれる心と直感が彼を類まれなクリエーターとして誕生させたのかもしれない。彼の感性は知性を凌駕する。特に、彼の美的センスには才能が溢れている。
彼は「デザインとは視覚や感触だけのものではありません。デザインとは機能なのです」スティーブ・ジョブズ(2003年、ニューヨーク・タイムズより)と述べている。私も一昔前の話であるのだが彼がこだわったmacのフォントに魅了され、以来、macユーザーである。
また、当時、macについて友人が「米国には英語のわからない外人が多いのです。macは言葉でなくてもパソコンが操作できるようにデザインされています。」確かに、外人の私にも操作しやすいと感じた。
彼は又「創造力というのは、単にものとものをつなぎ合わせることなのですね。創造的な人に『それどうやったのですか』と聞くと、彼らとしてはばつが悪いのですね。それは自分で生み出したわけではないのですね。ただ見ただけなのですね。ごく自然なことだったのですね。それは、その人が自らの経験をつなぎ合わせて、新しいものを合成することができたということなのですね。なぜそれができたかと言えば、それは、その人が他の人よりも経験が豊富であったから、他の人よりもその経験について深く考えていたからなのですね」『スティーブ・ジョブズ(1996年、『WIRED』誌より)と述べている。 ここで注目すべきは「they just saw something.ただ見ただけなのです。」という件である。 只見ているだけでその様なアイデアやエネルギーが生まれるとは思えないのだが、彼にはそうであり、見えている世界は違うのであろう。 
彼は「ビジネスにおいては偉業が一人の力によって成し遂げられることはまずありません。偉業はチームによって成し遂げられるのです
スティーブ・ジョブズ(2003年、『60ミニッツ』より)
」とも述べている。これは多くの人の知性がマリアージュして、成功につながっているという事なのだがこの辺は日本的だ。
一方で烏合のしゅうという言葉がある。多くの知性が集まってもまとまらない事が往々にしてある。これらが「ただみている」とどの様な化学反応を引き起こし結実してゆくのだろうか?
彼は「The people who are crazy enough to think they can change the world are the ones who do.”
「自分なら世界を変えられると思っているクレイジーな人間が世界を変えるのです スティーブ・ジョブズ(1997年、アップルのテレビコマーシャル『Think different』より)
」とも述べている 彼は多くの知性を集めて事業戦略を練るのであろうが、その中心に座っているのはクレージーな彼なのだ。
リーダの彼はそれらをクレージーと言われる程の心眼でただ見つめているという構図が浮かんでくる。何か神がかりでもある。
更には、世界を変えると言う言葉にも引かれる。イノベーションが将来世界を変えると言うことなのだろう。
だが、単に変われば良いとは考えていないはずだ。これは新たなる進歩と前進と言う事で、いわゆるコペルニクス的転換の意味だと推察する。人間も社会も進歩、前進する、しかも美しく。そんな世界観がひらめき更には勇気のベースなのだろう。
彼と世界観を共有して、進歩、前進に少しでも貢献したいものだ。その第一歩は世界は進歩すると言うことを信じることから始めると良い。彼の様にクレージーと表現される程の心眼は誰も持ち合わせていないのだが、世界を信じることはできそうだ。

今は居ないのだが、生きていたら、もっと世界を楽しくしてくれたはずです。我々の心に残り続けています、ありがとう


 








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