素敵なバイク便
寒いひな祭りだった。別に祭なんかはしないけど。
そんなひな祭りなど関係なかろう福祉の街の昼下がりのこと。
兄さんがよれよれのじいさんを道端で助け起こしているのが見える。
傍に止められたバイク一台。荷台に括りつけられたボックス。
轢いたか!?
道の反対側で様子を見守る。兄さん大苦戦中。
手にはレジ袋断って、素のまま持ったレンチンタンタンメンとおにぎり。
そいつが大いに気になるところだったけど、捨ておくことも出来ん。車の間を横切って、兄さんとじいさんの元へ。
救急車呼ぶ?
そう尋ねるも、どうも違う。
兄さんこちらに笑顔を向けて、足が痛くて歩けないらしくって、と。
足元おぼつかないじいさんが道端の車道でへたり込んでいたらしい。
配達の途中だろうに。
じいさんを抱きかかえ歩道の端、ビルの縁石に腰かけさせる兄さん。
じいさんは、若い人に親切にしてもらって、と独り言のように礼を呟く。
とんでもなく優しい笑顔を返す兄さん。
急いでるだろうに。
とりあえず後を引き継ぐお人よし一人。
走り去る兄さん。カッコいい。
日陰の歩道にしゃがみこんでレンチンラーメンとおにぎり抱えて。さて、どうしたものか。
まあ、なんとかなるんだけどね、人生は。
けど、お腹減ったな…
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